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稲盛和夫 魂の言葉108

『稲盛和夫 魂の言葉108』(宝島社/稲盛和夫=述、稲盛ライブラリー=構成)から、稲盛の言葉とその言葉に関連するエピソード・情報をご紹介いたします。
<稲盛の言葉>
「人間にとって、成功さえも試練なのです。」
「事業を失敗させ、会社を倒産させた人は人生の敗者なのかというと、私はそうではないと思います。」
(P184に掲載)
<宝島社の解説文>
成功と失敗を比べると、私たちはやはりどうしても成功というものに目を向けがちですが、両者は正反対なものとされながらも、一枚のコインの表と裏のようなものと言えます。
それは人間にとって、成功も失敗も同じように人生の試練だということです。
成功と失敗を比べてみて、試練という意味では、失敗のほうがわかりやすいかもしれません。事業の失敗とは、果たして人生の敗者なのかどうかというと、そうではないと稲盛氏は言います。むしろそれは、自らの人間性を向上させるための試練なのです。本当に人生において成功するのか失敗するのか、人生の勝者か敗者かは、この試練に打ち克つことができるかできないかで決まります。失敗に押し潰され、自暴自棄になって犯罪に手を染めたり、挙げ句の果てには自殺すらしてしまう人もいるかもしれません。ですが他方で、失敗、もしくはそれに類する悲劇を真っ正面から受け止めて、努力を重ね人間性、ひいては人格を向上させた人物も歴史上、たくさん存在します。
たとえば、「奇跡の人」ヘレン・ケラーは「目が見えない」「耳が聞こえない」「口がきけない」という三重苦を背負って育ちました。そのような苦しみのなかでは、両親を恨み、運命を呪い、人生に絶望してもおかしくありません。
しかし、彼女は違った。ヘレン・ケラーは両親を恨むことも、運命を呪うこともなく、サリバン先生という素晴らしい人生の師を得て、この試練に打ち克ち、さらに自分よりももっと不幸な人たちを、自らの大きな愛でもって助けようとしました。彼女の人生に訪れた三重苦という試練は、彼女に「利他」の心を教えたのです。このように苦しい境遇に立たされながらもそれに決して挫くじけることなく、素晴らしい人間性を育むことが真の勝利者なのです。
他方で、事業に成功したような、いわゆる「人生の勝利者」と言われるような人たちはどうでしょうか。成功した結果、有頂天となって、得た地位に驕り高ぶる人物も多いでしょう。名声に酔い、財に?れて、その後の努力を怠る、鼻持ちならない人物に堕ちていってしまう。その結果、人々の協力や支援が得られなくなり、成功したはずの事業は傾き、社会的な信用を失う場合もしばしばです。その一方で、成功を糧に、さらに気高い目標を掲げて、謙虚に努力を重ねていく人もいます。この意味では、成功も、失敗と同じくひとつの試練なのです。私たちはこの短い一生において、そのつど、自分の一挙手一投足を試されていると心得るべきなのでしょう。
(『稲盛和夫 魂の言葉108』より)