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稲盛ライブラリーこの逸品「アモルファスシリコンドラム」

稲盛ライブラリー2階に展示されているアモルファスシリコンドラムをご紹介いたします。
高速大量印刷用プリンタの印字部分に使われる部品に感光ドラムがあります。この部品、かつては5千枚から2万枚ほどの印刷で交換する消耗品でしたが、京セラが開発したアモルファスシリコンドラムの登場によって画期的な長寿命・高耐久性(30万枚まで印刷可能)が実現し、実質的にドラム交換が不要になった歴史があります。
従来の交換品ドラムの欠点を克服すべく、京セラでは1979年から主に鹿児島の研究所で開発を進めてきましたが、完成への道のりは困難を極めました。当時、多くの企業が挑戦し挫折していく中、京セラも開発に4年を掛けましたが製品化のめどは立っていませんでした。ごくまれに良品ができましたが、その時の製法を再現することができなかったのです。
稲盛は研究者たちに、「再現できないのは、君たちがいかにいい加減な実験をしているのかということだ。うまくいったときに、すさまじい集中力で実験をしていたなら、そのときの条件が全て分かるはずだ。それでもう一回行えば、必ず再現できる」と、成功したときの設定条件、研究者の心理状態まで徹底的に再現するよう促し続けました。さらに稲盛は、鹿児島の研究所をまるごと引き上げ、新しいメンバーでやり直すという決断をしました。現場にあるあきらめの雰囲気を払拭し、問題の核心を突ける技術者をリーダーに据え直し、ごく一部の技術者と全ての装置を移して取り組んでから半年後、ようやく良品の製法を再現することができたのです。
その後、この部品を搭載した京セラのプリンタは、長寿命で地球環境にもやさしいと評判になり、欧州を中心にグローバルに事業を伸ばしていきました。
稲盛が繰り返し説いた、「成功のためには混沌とした現象の中からその条件の核心を突く、すさまじい集中力が必要だ」という信念が、このアモルファスシリコンドラムを生み出したのです。

写真:プリンタに搭載された、アモルファスシリコンドラム