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稲盛ライブラリーこの逸品「エメラルドの指輪」

稲盛の左手に、エメラルドの指輪が光っていることをご存じでしょうか。
京セラは1970年代、多角化の一環としてセラミック技術・結晶技術を活かして再結晶宝石のビジネスに参入しました。この指輪はその時の記念すべき第1号の再結晶エメラルドを使ったものです。
「私はもともと無趣味で無粋な男だが、海外で宝石店があるとのぞきたくなる。とりわけ、エメラルドの深いグリーンには惹きつけられた。宝石もセラミックスも同じ鉱物結晶の領域であり、私の専門分野だ。話を聞くと、エメラルドは上質の原石が枯渇しつつあり、市場には品質の悪いものも出回っているという。それでも天然で希少価値があるというだけで高値をつけている。それなら高品質のエメラルドを私たちの技術でつくってみせよう。それもまったく同じ組成の再結晶宝石だ」(日本経済新聞出版社『稲盛和夫のガキの自叙伝』より)
こうして始まった再結晶の取り組みでしたが、それは容易ではありませんでした。天然と同じ成分、同じ結晶構造でエメラルドの結晶を育てる条件や、不純物を含まない結晶をつくる方法が見いだせず、試行錯誤の連続でした。それでも思い描いた透明の美しいエメラルドを追い求め、何度も何度も失敗を繰り返し、ついに理想とするエメラルドが完成したのです。
「人間の能力は無限だ。能力を未来における進行形でとらえ、進歩していると信じよう」と若い技術者を励まし、4年の歳月を費やしてようやく完成したエメラルド。その苦労と感激を忘れないよう、第1号のエメラルドを指輪にし、肌身離さず持ち続けているのです。



写真
1枚目:稲盛がつけているものと同型のクレサンベールの指輪
2・3枚目:稲盛ライブラリー2階にある再結晶宝石の展示
4枚目:再結晶エメラルドの指輪をつける稲盛