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不況を次の発展の飛躍台に -1つの予防策と5つの対策-<後編>

「不況における5つの対策」
稲盛は過去に幾度も襲ってきた経済危機に際し、社内外にて不況に対する心構えを示し、苦難をチャンスに変えることの大切さを繰り返し話してきました。講話の内容は、「不況に対する考え方」」「不況に備えての予防策」「不況における5つの対策」にまとめられ、稲盛和夫オフィシャルウェブサイトに掲載されています。
昨今の世界の経済状況に鑑み、掲載されているコンテンツを、2回に分けてご紹介いたします。後編の今回は「不況における5つの対策」です。(5月18日掲載の前編「不況に対する考え方」「不況に備えての予防策」もご覧ください)
・不況における対策1
「全員で営業する」
どの職場でも、日頃いろいろなアイデアを持っているはずです。不況時こそ、そのアイデアをお客様に持っていってそのニーズを喚起することを、全社員で行うのです。
営業や製造、開発はもちろん、間接部門にいたるまで、全員が一丸となって、アイデアをお客様へ提案し、受注へと結びつけ、納入まで行う。そのようなことを通じて、お客様から喜ばれるだけでなく、自分自身も部内だけでなく全体がみられるようになります。
営業の手伝いで単に走り回るというのではなく、自分たちの日頃のアイデアを商品にして売るということを考えるべきです。
・不況における対策2
「新製品開発に全力を尽くす」
不況のときには、忙しさにまぎれて着手できなかった製品や、お客様のニーズを十分に聞けていなかった製品を、積極的に開発しなくてはなりません。それも技術・開発部門だけでなく、営業、製造、マーケティングも協力して全社一丸となって新製品の開発を進めていくべきです。
不況時には、お客様にも時間の余裕があり、また何か新しいものを求めているはずです。そのときに積極的にお客様をまわり、新製品のアイデアやヒント、あるいは今までの製品に対する要望やクレームなどをよく聞いて、それを持ち帰り、新製品開発や新市場創造に役立てるのです。
・不況における対策3
「原価を徹底的に引き下げる」
不況になると競争が激化し、受注単価も受注数量もみるみる下がっていきます。その中で採算を改善するためには、受注単価の下落以上に原価を下げなくてはなりません。しかし、それは簡単にはできないことだと考えがちです。そのときには、「できないと思ったところが始まり」と思って必死に考え、改革するのです。
「現在の方法で本当によいのか。もっと経費を削減できる方法はないか」と改めて従来のやり方を問い直し、思い切って変革することが大切です。旧態依然とした製造方法の見直しや、不要な組織の統合など、徹底的な合理化、原価低減を断行するのです。
こうして不況時に抵抗力をつけていれば、景気回復時にはたちまち利益が出始め、すばらしい高収益企業となれます。不況のときに原価を下げ、安い値段でも利益が出るような体質に改善しておけば、景気回復時に一気に大幅の利益が出始めるのです。
・不況における対策4
「高い生産性を維持する」
不況で注文が減り、つくるものも減ってきたときに、少ない仕事を従来通りの人員で生産すれば、製造現場の生産性は下がり、職場の空気がたるんでしまいます。
そのような場合には、つくるものが減った分だけ製造現場で余ってくる人員を生産ラインから切り離し、工場の整備や勉強会など、景気が戻ったときに備えた仕事をしてもらう。
そして製造現場では、常に一番忙しいときと同じように、必要最小限の人員で緊張感を持った仕事をしてもらう。そのようにして、それまで大変な苦労をして向上させてきた生産性を維持していくことが非常に大切なのです。
・不況における対策5
「良好な人間関係を築く」
不況という苦しい局面を迎えたときに、職場や企業の真の力が問われます。本当に苦楽を共にできる人間関係ができているのか、そうしたものを大切にする職場風土、苦労を分かち合える社風ができているのか、などが正面から問われるのです。
不況は職場の人間関係を見直し、再構築する絶好の機会ととらえて、さらにすばらしい職場風土をつくるために努力することが大切です。
このようなことは容易にできることではありません。力を合わせなければならないときに限って、従業員の不平不満が爆発するものです。しかし、そのときには嘆くのではなく、それが自分のこれまでの経営だったのかと謙虚に反省し、改めてすばらしい人間関係を構築していくことが大変大事なことだと、私は思います。