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稲盛和夫、かく語りき

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『稲盛和夫、かく語りき』(日経BP)から、稲盛の言葉をご紹介いたします。

<稲盛の言葉>
稲盛
実はですね、私も若い頃はしんどい目に遭っていましたから弱音を吐いたことがあります。
人知れず1人になったとき、「こんなにしんどいなら社長を辞めよう」と思うことはしょっちゅうでした。ですが、そう思った瞬間から「それじゃいかん」と、その弱音をばねにして自分を強く奮い立たせました。(中略)

──稲盛さんが弱音を吐いたことがあるとは意外でした。

稲盛
私は盛和塾の塾生に「もう駄目だと思ったときが、仕事の始まり」とよく励ましていますが、私自身は「もう駄目だ」と思ったことは実は一度もないんです。
「社長を辞めたいな」と思ったのは、「もう駄目だ」と思ったからじゃなく、ストレスを解消するためについ口から出る言葉です。慰めであり、励ましです。「もう駄目だ」というところまでいかないんですね。そこまでいく前に、あらゆる手立てを使って一生懸命に努力をしましたから。

普通の人には「もう駄目だと思ったときが、仕事の始まり」と励ますけれど、本当はそこまでいっちゃ駄目なんです。その前に手を打っておかないといけません。
消極的な考え方、例えば不安に襲われたり、不平不満が心の中に渦を巻いておったりして、「もう駄目かもしれないな」とネガティブな思いを心に描いてしまえば、その通りに物事がうまくいかなくなります。これは私だけではなく、いろんな哲学者や思想家、みんなが言っている真理です。

弱音を吐くのも、ネガティブな思いの1つです。弱音を吐くなといっても弱音が出てくるのはしょうがないし、1人のときに会社を辞めたいなと思うのはしょうがない。でもそれを言ったそばから、「いや、それではあかん」と奮い立たせないといけません。
(P217-219に掲載、初出は『日経トップリーダー』2013年8月号)