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「あの日あの時稲盛和夫」龍村仁氏(たつむらじん/ 映像作家)
かつて稲盛が主宰していた「盛和塾」の機関誌の1コーナー、「あの日あの時稲盛和夫氏」より、今回は映像作家 龍村仁さんの回を一部抜粋にてご紹介します。
龍村仁さんが制作・監督をされた映画「地球交響曲(ガイアシンフォニー)」は、「地球はそれ自体がひとつの生命体である」という思いが美しい映像と音楽、珠玉のことばによって織り成されたオムニバス形式のドキュメンタリー映画です。第一番の完成後、自主上映会をしながら、「2作目を作りたい」と龍村さんは熱意を燃やされていました。
この時のエピソードは、本年6月の下村満子さんの記事でもご紹介しましたが、龍村さんとの出会いについて稲盛は、次のように述べています。
「彼から第二番制作の支援についての話がありました。しかし、『観る人もいないような映画を自分で作って、よい映画を作ったと自ら悦に入って芸術家ぶったところで意味はない』『せっかく作るのであれば、観てもらえるような工夫をしようではないか。作ってもお蔵入りするようでは話にならない』と伝えました。
それから彼のスタッフを集めて、マーケティングについて何度も議論を重ねました。こういう映画は一般の映画館では配給されないものですから、みんなに観てもらうための工夫をしなければなりません。そこで我々は徹底的にシミュレーションを行いました」
こうして完成した地球交響曲第二番は次作へとつながる大成功を収めることができました。
龍村さんは当時について、機関誌「盛和塾」12号の中で、次のように述べておられます。
「私たちの仕事の場合でも、現実には使ったお金をどうやって戻すか(回収するか)というビジネス的なことがきっちりとあります。稲盛さんがその時非常にはっきりとおっしゃったことは、『良いものが売れないはずがない』ということです。人の心に訴えるものは、モノであれ映像であれ、必ず流行るということに結びつくのだから、『あなたの責任は、それをどうやってちゃんともとに戻すかを考えることです』ということを、再三おっしゃいました。(略)
そう言っていただけたのが、私にとっては非常に嬉しいことでした。それは私自身良いものは必ず観てもらえる、商売になると思っているからです。(略)
稲盛さんと私の共通した気持ちというのは、人間にとっていちばん大切なものは何かということを人々に訴えかけると同時に、多くの人とそれを分かち合いたいという気持ちを持っていることだと思います」
稲盛と話すにつれ、心の中は自分の考えと同じなんだ、それぞれがまったく違う自分の生き方のなかで同じものに気付くのが真理だと話された龍村さん。共通した思いが根底にあったからこそ、成し遂げることができたのかもしれません。