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シリーズ「稲盛和夫の著書」 第2回『人生と経営』

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第2回は、『人生と経営 -人間として正しいことを追求する-』(1998年9月 致知出版社)です。この本は、まさに稲盛の転機にあたり、刊行されたものといえるでしょう。

稲盛はこの書籍の刊行前年の1997年に、京セラと第二電電(現KDDI)の会長職を退き、名誉会長に就任しています。いわば経営の第一線から退いたわけですが、その矢先の6月、検査で胃ガンが見つかり、稲盛は胃の3分の2を摘出することになります。しかし、その治療療養も十分でない中、本人の強い希望により、9月に臨済宗妙心寺派円福寺で得度を受け、11月には大接心と呼ばれる厳しい修行を経験することになります。

まさに、本人がいう「死への準備期間」としての後半生のスタートを切ったのがこの頃であり、この胃ガン罹病、得度など人生の分岐点について、唯一本人が詳細に語っている文献が、この書籍『人生と経営』なのです。
この本にはその他、松風工業時代に対立した労組委員長との心温まる手紙のやり取りや、僧侶としての日々のお勤めで唱えていた「白隠禅師坐禅和讃」の解説など、他の書籍では読むことができない内容が満載です。

読書の秋、稲盛の「分水嶺」とも呼ぶべき本書に触れていただければ幸いです。