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寄稿紹介② 「技術革新への提言」

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京都市東山区山科(現山科区)に新本社社屋が竣工し、東京証券取引所第2部にも上場を果たし、破竹の勢いで京セラが急成長を続けていた1972年9月、稲盛は雑誌『エレクトロニク・セラミクス』からの依頼に応えて、技術革新を巡る以下の3つの問題点について、自らの考えを述べています(以下、括弧内は寄稿からの抜粋)。

1.専門知識以外に求められる最も重要なファクターとは?
「技術革新にとって、その分野における深い専門知識と豊かな経験が不可欠であることは否定出来ないが、最も重要なファクターは、『発想の転換』であると私は考える。即ち、技術革新――更に広くあらゆる分野において創造的革新――を為し得る人の基本的条件は、この『発想の転換』が出来る人であるかどうかにある。その意味で、専門家よりむしろ素人の方が遙かに至近距離にあると言えないだろうか」

2.「発想の転換」は言葉だけになっていないか?
「『発想の転換』という言葉が、いわゆる言葉としてのみ使われて、それで出来上ったような錯覚を以て巷間に流布してゆくことは、厳に避けなければならない。言葉は『言霊(ことだま)』でなくてはならない。われわれ技術者は、あくまでも言葉に全人格を賭けて思考し、行動すべきであると考える」

3.技術革新を起こすエネルギーの根源とは?
「一つの新しいものを創造するエネルギー、即ち技術者が新技術の開発に打込む情熱と執念は、それが科学の進歩、就中(なかんずく)人類の進歩に貢献するという使命感が、職人のもつ切羽詰った飢餓感にまで昂(たか)められた時、はじめて生まれて来るものである」

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1枚目:『エレクトロニク・セラミクス』(19729月号)
2枚目:東京証券取引所第二部上場時(19722月)