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役員登用に夜なきうどんの屋台を引かせてみたい

231106

11月7日は「夜なきうどんの日」だそうです。京セラ創業当初、稲盛ら創業メンバーは、通りかかった屋台のうどん屋で簡単に夕食を済ませ、深夜まで仕事を続けていました。その経験から、稲盛は役員を登用する際、その人に経営者としての資質があるかどうかを、夜なきうどんの屋台を引っ張らせて見極めてみたいとしばしば言っていました。

「夜なきうどんの屋台を準備して、役員候補に5万円なら5万円資本金を渡し、1年間夜なきうどんを売らせてみるのです。利益を上げるには、いろいろな方法があると思います。いいかつお節を買ってくれば、いいダシは出るでしょうが、それでは採算が合わないかもしれません。具のかまぼこなどは、3枚よりも4枚並べた方がお客の受けはよいかもしれませんが、厚く切って4枚も並べたのでは、採算が合わないでしょう。うどんの玉は、少しずつ端を切っておいて、何玉かに1個ずつ余計につくる人や、他の玉から少しずつ足して、一杯のうどんの量を多くする人もいるでしょう。

ただコストを削ればいいというものでもありません。また、量を増やしたり、おまけをすればいいというものでもありません。適正な値段、納得の味など、いろんな要素があるでしょう。つまり、千人やれば、千人千様の結果が出ると思います。その中でほんとうに先天的な商いの才能を持った人でなければ、経営者にしてはならないと思います」(1987115日 第28回中部生産性研究大会富山県大会講演を一部編集)

こうして自らの才覚で屋台を成功させ、「売上最大経費最小」の経営ができる人物かどうかを見極めるというわけです。

企業が成長し、組織が複雑化し、活動の全体を把握することが困難になってきても、経営の基本はこの夜なきうどんの屋台と同じ、適切な値決めで売上最大をはかり、創意工夫で経費を最小にすることであると説き続けたのです。

経営をことさらに複雑化して考えるのではなく、原理原則にのっとってシンプルに考えていくこと、それがこの夜なきうどんの屋台の事例を通じて稲盛が伝えたかったことなのです。