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稲盛ライブラリーこの逸品「敬天愛人の額」

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先月より始まった、稲盛の執務室展示品の紹介。今回は「敬天愛人」の額です。

京セラ本社19階にある稲盛の執務室には、少し赤茶けた「敬天愛人」の額が飾ってありました。これは、京セラ創業時に宮木電機 宮木男也社長から贈られたものです。そのときのことを稲盛は次のように語っていました。

「会社ができて1か月ぐらいたった頃、京セラに出資してくださった宮木電機という会社の社長さんが、出張から戻ってこられて、『稲盛さん、出張先であなたの郷里の西郷南洲の書が見つかったので、買ってきました』と持ってこられました。城山トンネルの入り口の上にも掛かっている『敬天愛人』の書でした。たいへん嬉しかったので、私はそれを額装し、当時一つしかなかった応接間に掛けました。

会社経営における判断基準を何も持たなかった私は、『敬天愛人』の書をよく見ていました。西郷は、敬天、つまり『天を敬い、天に恥ずかしくないような、正しい天道を踏み行うことが大事だ』言っていますし、同時に愛人、つまり『人を愛せよ』とも言っています。

西郷南洲の教えの基本が『敬天愛人』だということは、子供の頃から知っていましたが、会社を経営する中であらためてその意味するところに感じ入り、経営者の責任の重さを痛感しました。同時に、『自分は会計も何も知らないが、天に恥じることのないような正しい判断をしていこう。また社員を慈しみ、大事にしていくこともたいへん大事なことだ』とも感じ、『敬天愛人』という言葉を社是にすることにしました」
(2014年115日 欣交会総会講演「西郷南洲の教えに学ぶ」より)

冬は石炭のだるまストーブをたいていたため、少し赤茶色になったこの書。その後は稲盛の執務室に掲げられ、稲盛は半世紀以上この「敬天愛人」を見上げてきました。

見上げるたびにお世話になった宮木社長への感謝、郷土の偉人に対する親しみ、そして「天道を全うし、社員を守っていこう」という創業時の決意を思い出していたのかもしれません。

余談ですが、この書にはよく見ると猫の足跡がついています。数歩あるき、最後は慌てたような形跡のあるいびつな足跡に、もしかすると額装前に稲盛家の猫が上を歩いてしまい、「あっ、こら!」と追い払われることがあったのかなかったのか・・・そんな別のストーリーも想像しながら、執務室に掲げられた額をご覧頂ければ幸いです。