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寄稿⑬ 「心のふれあいとクレサンベール」(『ジュエリー・ニュー・エイジ:未来からのメッセージ――京セラ・クレサンベールの世界』1984年2月)

240325

京セラが事業の多角化の一環として再結晶宝石の世界に進出したのは1975年のことでした。
ファインセラミックスの製造で培ってきた高度な結晶技術を駆使して、天然石と全く同一成分の物質を再結晶化させた宝石「クレサンベール・エメラルド」の開発を皮切りに、京セラはアレキサンドライト、ルビー、パパラチアと次々に新しい宝石を生み出していきました。そして、1980年にはオパール、1984年には発掘が稀なため希少価値が高まっていたスタールビーを開発しました。

同年、こうしたクレサンベールの全体像を世に伝える書籍『ジュエリー・ニュー・エイジ:未来からのメッセージ――京セラ・クレサンベールの世界』(柏書店松原株式会社)が刊行されるにあたり、稲盛は「心のふれあいとクレサンベール」と題するメッセージを寄せ、事業の意義について次にように述べました。

「私たちがクレサンベール開発の当初に抱いていた思いは実に単純なものでした。『美しい宝石を、さらに広く、数多くの人びとにお届けしたい』。その一念で今日にまで至ったわけですが、その道のりは私たちが日々心がけておりますこと、心正しき思想をもち、真心をこめた誠心誠意の手段をもち、貫き通すひたむきな実践こそが輝ける文化を創り出すという信念の、まさに証しの道のりであったように思います。

時の流れもまた、私たちの意を快く迎えてくれる方向に進みだした感がいたします。人びとは肥大する物質文明の中にありながらも、いやそれだからこそ、日々の暮らしの中で優しい情感を育み、人と人の心のふれあいを支えに生きることを、これまで以上に大切に考えようとしているのではないでしょうか。

宝石の製造・販売を通して私たちが願うことは、皆様の心のふれあいに少しでもお役に立ちたいということであります。宝石を贈ること、贈られること、身につけて楽しむこと、その美に魅了されることを通して、人びとの心に豊かな時が訪れれば、私たちにとってもこれほど幸せなことはありません」