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『経営――稲盛和夫、原点を語る』⑤

『経営――稲盛和夫、原点を語る』(ダイヤモンド社)から、稲盛の言葉をご紹介いたします。
経営トップに限らず、リーダーというのはどんなに小さな部署であれ、自分の組織全体に影響力を及ぼします。リーダーの判断、決断のやり方、ひいては結果に、その組織全体の浮沈がかかっているのです。
そのことを、私は次のように考えてきました。私は、京セラという会社の方向を決める決断をしています。決断と言うと何かとても大きいことをしているように見えますが、実際にはほとんどがささいな、身近なレベルでの決めごとです。例えば皆さんの日常生活を考えていただきたいのですが、部下からさまざまな案件を相談されて、「それはダメだ」とか、「それは良し」といった決断をされていることと思います。家庭に帰ってからは父親として、子供さんのこと、奥さんのこと、近所のこと、親戚のことなどを、特に問題がないときは黙っているものの、何か問題があるときは「それは困る」と考え、決断をされていることでしょう。そのような無数のささいなディシジョンから、ここぞという大きなディシジョンまでを含めた、過去の自分の経営者としてのディシジョンが集積されたもの、あるいはインテグレート(統合)されたものが、現在の会社の業績、成果だろうと思うのです。また人生の場合は、今まで行ってきた全部のディシジョンを積分したものが、現在の人生の成果だと思うのです。
(『経営――稲盛和夫、原点を語る』「リーダーシップと判断基準」旧郵政省講演、1991年5月31日、p.147-148)