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社員が語るエピソード「稲盛名誉会長との思い出」④

241219

※このエピソードは2年前、京セラ社内報特別号掲載として社員から寄せられた思い出のエピソードです。表現、言葉づかい等は出来る限りオリジナルのままにしています。

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昔、私はコードレス電話のサービス業務に携わっておりました。

当時は新製品が出来たらまずは名誉会長に使っていただくというのが通例でしたが、あろうことかその新製品が故障したという一報が入り、名誉会長のご自宅に一番近い営業所から対応することになりました。私と営業の方が行くことになったのですが、途中の量販店で製品を一台返品していただき、それを持って向かいました。

ご自宅には奥様がいらして、「平日だから名誉会長はいらっしゃらないよなぁ。怒られないで済んだ...」とちょっとホッとしながら状況をお聞きし、製品を点検しました。残念ながら電話機は故障しており、現場で直すのも難しく、持参した製品と交換して設置しました。

その後奥様が「たくさん機能が付いているので説明をしてほしい」とおっしゃるのでご説明していたところ、「ゴホ、ゴホ...」と咳をしながら綿入れを羽織って無精ひげを伸ばした名誉会長が来られました。そして「おお、今日は風邪をひいてな、休んでいたんだよ」とおっしゃい、「対応が終わったらこちらに」と応接に招じ入れて下さいました。

「これはデカい雷が落ちる」と緊張して営業の方と正座をし、もし雲行きが怪しくなったらすぐに平身低頭お詫びをしようと待ち構えてたら、「サービスか...。うちの一番弱いところなんだよな。お前らがパイオニアになってがんばってくれよ」と優しい言葉をかけていただき、「まぁ休んでいけ」と美味しいお茶とお菓子までごちそうになりました。

それからは、サービスでつらい時にはその時の事を思い出し、「ただの苦情処理ではなくパイオニアとして道なき道を進むのだ」という誇りと気概を持つことで、乗り越えることが出来ました。20数年が過ぎ、私は来年定年を迎えますが、京セラを勤め上げることが出来たのも、あの時、励ましていただいたからなのかな、と振り返って思います。

出来ればあの時の事を覚えてらっしゃるのか直接お聞きしたかったですし、お礼を申し上げたかったのですが、今となってはできないのが残念です。有難う御座いました。これからもあの時の事を大切な思い出として、いつまでも忘れずにがんばって参ります。

京セラ株式会社 滋賀野洲工場社員

写真:エピソードに出てきたコードレス電話機「KCT-M33