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『経営――稲盛和夫、原点を語る』⑩

250116

『経営――稲盛和夫、原点を語る』(ダイヤモンド社)から、稲盛の言葉をご紹介いたします。

自分と同じような気持ちで経営をしてくれる人、とりわけ副官、片腕となるパートナーの力(中略)この他力を得ることができる経営者でなければなりません。

自分のパートナーとなるような人を得た経営者といえば、思い出すのは本田技研工業の本田宗一郎さんです。鍛冶屋に生まれ、ものづくりに長けている本田さんを、経理に明るい藤沢武夫さんがサポートしました。本田さんと藤沢さんのすばらしいパートナーシップがあったからこそ、ホンダは世界的な企業になったと言われています。

松下幸之助さんにも、髙橋荒太郎さんというパートナーがいました。幸之助さんはものづくりや商いのあり方、またその心を考える人でした。一方で、経理、会計を守る髙橋さんがいた。そのような先例があることから、経営の片棒を担いでくれる良いパートナーを得られるか得られないか、それによって経営の成否が決まると言われるのです。

経営という重い荷物の入った大きなリュックサックを一人で背負い、腰をかがめながら坂道を登っていくよりは、天秤棒の一方を相棒に担いでもらい、真ん中に経営という重い荷物を吊しながら、二人で「よいしょ、よいしょ」と担いでいくほうがはるかに楽に運べるはずです。片棒を担いでくれる相棒の協力という他力を得ることができるかどうかが、経営を行う上で非常に大事なのです。

私の場合には、本田宗一郎さんにとっての藤沢武夫さん、松下幸之助さんにとっての髙橋荒太郎さんのようなパートナーがいませんでした。自分で製造も営業も見なければならない。『稲盛和夫の実学』や『アメーバ経営』の本にあるように、もともと技術者の私が、経理まで見なければなりませんでした。一人でオールマイティにやらなければならなかったわけです。それは決して褒められたことではありません。

(中略)自分であらゆることをオールマイティにやってきた中で、苦しみ抜きました。その結果思ったことが「自力」の限界でした。人間は決して一人では生きていけません。人の支えがあって、初めて生きることができるのです。同じように、自分一人で経営をしていくのはなかなか難しい。やはり相棒というものが必要なのです。
(『経営――稲盛和夫、原点を語る』「一つの「自力」と二つの「他力」」盛和塾ニューヨーク塾長例会講話、2006226日、p.463-466