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社員が語るエピソード「稲盛名誉会長との思い出」⑤

※このエピソードは2年前、京セラ社内報特別号掲載用として社員から寄せられた思い出のエピソードです。表現、言葉づかい等は出来る限りオリジナルのままにしています。
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私は入社してから、稲盛名誉会長の経営講話カセット・CDの制作販売を担当していました。特に盛和塾生である社長さまにより深く学んでいただくために、また社員にも学んでもらいたいという声をうけて、名誉会長の肉声にアニメーションや文字で解説を加えた教材コンテンツを制作したいと企画しました。
2002年頃に「稲盛和夫 実践経営講話」という名称で教材を企画し、上司と共に名誉会長のところにうかがったときのことです。 一通り商品を説明し、商品販売の許可を伺ったところ、稲盛名誉会長は「よくできています。特に私の話を一生懸命に学んで会社を良くしようとしている経営者に向けてのものなので、単に売ればいいというわけではありません。全身全霊で取り組んでください」と言われました。
そのあと、(上司の指示で)「京セラグループ全体でもEラーニング方式で、パソコン上で稲盛名誉会長の講話を学ぶツールとして使うことについてはいかがでしょうか」と尋ねしました。すると名誉会長は、「あなたは教育というものをわかっていません。それはなぜだかわかりますか」と問われました。
しばらくの沈黙の後、名誉会長は「経営者の方が自分の会社を良くしようと思って自発的に学んでいこうとすることと、私たちのような京セラの現場の社員に学んでもらうこととは違うのです。放っておいても勉強する人は勉強します。しかし本当に教えないといけないのは、毎日、工場で油まみれで働いている従業員であり、その一人ひとりに対してどう学んでもらうかなのです。それはパソコン上で見せたらいいということではなく、そういう人こそ職場から抜いて1ヶ所に集め、同じものを見て、同じものを食べて、膝を突き合わせて話をすることであり、それが教育なのです」と。
今でこそオンライン学習は当たり前になっていますが、安易に動画を配信して教育しようという考えに対して、社員の状態や愛情あふれた思いに触れ、教育のあり方についてご指導いただいた点は、今でも貴重な私の財産になっています。 (この後に、京セラグループの経営幹部に経営12ヶ条の合宿研修が始まりました)
京セラコミュニケーションシステム株式会社 社員
写真:多くの社員を前に、フィロソフィのひもときを行う稲盛(2007年11月)