Facebookアーカイブ
稲盛ライブラリーこの逸品 -平井乙麿氏より贈られた歌-

稲盛ライブラリーこの逸品、今回は年代物の色紙をご紹介します。創業当時の京セラの精神風土を物語る逸品です。
色紙には、「そのいでぃあ やがて 世界を靡(なび)かせむ 何より 品技(しなわざ)すぐれてあれば」右には「京都セラミック株式会社の第一次飛躍を祝して詠める/昭和四十一年五月二十二日/平井乙麿」とあり、歌がつづられ、花の絵が添えてあります。
この色紙をしたため、稲盛に贈った平井乙麿さんは、京都市立堀川高校の校長を務められた教育者で、歌人でもありました。当時の京セラ幹部の恩師だったことから、稲盛という人物に興味を持たれ、実際に滋賀工場へ面会に来られたのでした。そのときに稲盛は創業後7年で自分が培ってきた経営に対する考え方、つまり経営の判断基準、ミッション、ビジョン、さらにはフィロソフィについて話し、そのような考え方をベースに今後も経営にあたるということを伝えたといいます。そのしばらくのちに、平井先生から贈られたのが、この色紙だったのです。稲盛の社長就任の前日に書かれたこの色紙に、稲盛は運命めいたものを感じたと言っています。
「いでぃあ」とは元々はギリシャ語の「イデア」ですが、ここでは「理念」「フィロソフィ」「哲学」「考え方」「思想」という意味に解するものとして書かれています。つまり、「何よりも品質や技術がすぐれていれば、必ずこの理念、フィロソフィ、哲学、考え方、思想は世界をなびかせるであろう」という趣旨のことを和歌に詠んで贈ってくださったのでした。
現在の京セラグループは、平井先生の言葉通り成長発展を遂げ、売上二兆円を超えたのみならず、従業員数は全世界で約8万名を数えるまでに成長しました。京セラの「経営のこころ」、まさに「いでぃあ」はグローバルに広がるグループ企業の従業員たちにも伝えられ、共感を得ています。その源流は、判断基準を確立し、ミッション、ビジョンを謳い、フィロソフィの共有に努めることで会社の精神風土をつくりあげようと一生懸命だった創業の頃にあるのだといえます。