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寄稿㉖「呼び戻せ起業家精神」(日本経済新聞 1996年1月4日)
官民挙げたベンチャー創業支援ブームに沸いていた1996年初頭、稲盛は日本経済新聞の「私の提言 呼び戻せ起業家精神」のコーナーに寄稿し、真のベンチャー企業を輩出するために求められる支援のあり方について、次のように述べました。
「バブル崩壊後のうっとうしい産業社会を活性化するには、ベンチャー企業を数多く輩出させるしかない。ただ最近の官民挙げてのベンチャー支援ブームがすぐに効果を発揮するかどうかについては、疑問を感じざるを得ない。
今、求められているのは燃えるような情熱と独立心、創造性を持つ起業家がのどをからからにして水が欲しいという時に手を差しのべるシステムだ。いくらでも水を与えますという甘えの構造からはろくな企業が出てこない。(中略)そこで、全く新しい形のベンチャーファンドの創設を提言したい。例えば私は化学、セラミックス、電気通信を専門にし、京セラ、DDI(第二電電)を立ち上げた。私のような人間がファンドマネジャーとなり、不特定多数から小口の資金を集める。そして専門分野に限定して企業を審査し、大丈夫だと思ったら投資する。
投資家も初めからリスクを承知で資金を預ける。法制度の見直しを含めて検討すべき点が多いと思うが、こうしたファンドが全国に生まれることから本当のベンチャー支援が始まる。
結局は自分で創業した方が早いというくらいの人が、審査をしなければだめだということだ。企業の成長段階によって資金のリスクは異なる。それぞれの段階にどう対応するか、きめ細かな議論が抜け落ちている気がする」
写真:1996年当時の稲盛