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寄稿㉙「『冷泉家の至宝展』に寄せて」(「朝日新聞」1999年5月11日)

1980年当時、稲盛は新聞記事を通して、歌人・藤原定家を祖に持つ冷泉家が長年にわたって守り抜いた貴重な文化財を国民の共有財産として保存しようとされていることを知り、すぐに直接電話を入れ、財団法人化の支援を申し入れました(現・公益財団法人冷泉家時雨亭文庫)。
それから20年近くが経過した1999年、稲盛は文化財保護には国民の理解が不可欠であるとの思いから、展覧会「冷泉家の至宝展」を支援し、その開催に当たり、次のようなメッセージを寄せました。
「私は冷泉家が平安末期から大変な苦労を重ね守り続けてきた家宝ともいえる私財を、国民共通の財産として調査研究できるようにするということは勇気ある決断であり、日本や京都のためにもなる立派な行為だと思った。(中略)私は『どんなに文化的価値があろうと、国民に理解されなくては意味はない。素晴らしいものであればあるだけ、広く多くの人にその価値を理解してもらい、支援してもらえるような工夫が必要ではないだろうか。そうすれば財団運営もうまくいくようになるはずだ』と申し上げた。
『それでは初めてのことだが、全国で展覧会のようなものを開きたい』とおっしゃるので、京セラも支援させていただき、今回の『冷泉家の至宝展』開催の運びとなったのである。
最初は余り人気がないかもしれないと心配していたのだが、始めてみると全国各地で予想以上の入場があり、大成功を収めている。このことを大変うれしく思うと同時に、少しでもかかわることができたことに感謝している。
日本には多くの文化遺産が残されているが、その維持管理は簡単ではない。しかし、今回冷泉家のように、広く社会に公開し、多くの人にその価値を理解してもらえれば、公的機関や一般市民からも支援してもらえる素地ができるのではないだろうか。これをひとつの機会として、我々日本人が自国に残された多くの素晴らしい文化遺産に誇りを持ち、自らの貴重な財産として守っていこうという意識を持つようになることを期待している」
写真:冷泉家の至宝展オープニングセレモニーの様子
ご参考 公益財団法人 冷泉家時雨亭文庫webサイト https://www.reizeike.jp/