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『稲盛和夫の実学』文庫新装版⑤

260202

『稲盛和夫の実学』文庫新装版(日経BP)から、稲盛の言葉をご紹介いたします。

会計はキャッシュベースで経営をするためのものでなければならないというのが、私の会計学の第一の基本原則である。

高度な会計学を知らなくとも誰でも自然に身につけている収支計算がある。製品をつくり、お客さまに販売して代金をいただく。そのために使ったさまざまな費用をその中から支払う。利益とは、これら支払いのすべてが終わったあとに残ったお金を指すということは、誰でも知っていることであろう。事実、会計が生まれた中世イタリア商人の地中海貿易では、一つの航海が終わると収入からすべての費用を清算して、残った利益を分配していたそうである。つまり、現金収支の計算がそのまま損益の計算となっていたわけである。

しかし、現代の企業では、その連続する活動を暦で区分して年度ごとに決算を行わなければならない。そこで近代会計では、収入や支出を発生させる事実が起きたときに収益や費用があったとして、一年間の利益を計算する。これが「発生主義」と言われる会計方法である。

この方法をとると、お金の受け取りや支払いがなされるときと、それらが収益や費用となるときとが異なるようになる。その結果、決算書にあらわされる損益の数字の動きと、実際のお金の動きとが、直結しなくなり、経営者にとって会計というものがわかりにくいものになってきたのである。

また、実際に社会が発展し、社会制度や商取引が複雑になると、それに従い会計も複雑にならざるをえない。どのような事実をもって収益や費用が発生したとするのかが、難しい問題となるのである。

そこで、会計の原点に戻るなら、本来もっとも重要な「キャッシュ」に着目して、それをベースにして正しい経営判断を行うべきだということになる。

(『稲盛和夫の実学』文庫新装版、p.45-46