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寄稿㉞「日本を空洞化させない使命感」(『Voice』2002年1月号)

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「世界の工場」として中国が台頭し、生産拠点を移転する日本企業が絶えず、「このままでは国内から製造業が消えていくのではないか」と日本の空洞化を危惧する声が日増しに高まっていた2002年初頭、稲盛は『Voice』の特集「21世紀に勝ち残る経営」に「日本を空洞化させない使命感」と題して寄稿し、次のように日本の進むべき道について提言しました。

「日本は、資源に乏しいことから、原材料を海外から輸入し、製品に加工して輸出し、外貨を稼ぐという加工貿易で発展してきた。そのような国家モデルしか知らない日本から製造業が消えてしまえば、日本経済がよみがえることは不可能に近い(中略)

日本に製造業を残すことは、努力目標ではなく日本が生き残るための必須事項である。もし、それができなければ、やがて日本の貿易収支は赤字に転落する。そうすれば円は安くなり、海外のモノを安く輸入することはできなくなり、加工貿易での立国が難しくなるばかりか、物価上昇は国民生活にも混乱を招くことであろう。米国は、たとえ貿易収支が赤字であろうと、ドルという基軸通貨をもっていたために破綻を免れたが、円の場合はそうはならないのである。

このことから、私は政府がインセンティブを与えてでも、日本における製造業の保持を図るべきであると考える。製造業に従事する経営者も、国内での生産を可能とするためにモノづくりの原点に立ち返り、いかに競争力を取り戻すかに全精力を傾注すべきである。(中略)

私は、もはや大量生産を前提に、設備投資力や生産規模によって競争力が左右されるようなビジネスは、日本に適さないと考えている。巨大な設備投資を続け、コスト競争力を競い合うというのではなく、たとえばカスタムメイドICや、またICだけでなく回路まで含めた付加価値の高い製品に比重を移し、技術競争力で勝負するべきではないだろうか。ニッチ市場であろうとも、付加価値を高めた知識集約型の製品にシフトするという方向へ戦略転換をするべきである」