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『稲盛和夫の実学』文庫新装版⑩

260709

『稲盛和夫の実学』文庫新装版(日経BP)から、稲盛の言葉をご紹介いたします。

......人の心は大変大きな力も持っているが、ふとしたはずみで過ちを犯してしまうというような弱い面も持っている。人の心をベースにして経営していくなら、この人の心が持つ弱さから社員を守るという思いも必要である。これがダブルチェックシステムを始めた動機である。だから、これは人間不信や性悪説のようなものを背景としたものでは決してなく、底に流れているものは、むしろ人間に対する愛情であり、人に間違いを起こさせてはならないという信念である。

真面目な人でも魔が差してしまい、ちょっと借りてあとで返せばいいと思っているうちに、だんだんとそれが返せなくなってしまい、大きな罪をつくってしまう。これは、管理に油断があったためにつくらせてしまった罪でもある。よしんば出来心が起こったにしても、それができないような仕組みになっていれば、一人の人間を罪に追い込まなくてすむ。そのような保護システムは厳しければ厳しいほど、実は人間に対し親切なシステムなのである。(中略)

「ダブルチェックの原則」を間違いの発見やその防止のためのテクニックであると考える人もいるかもしれない。しかし、このような厳格なシステムが必要な本当の目的は、人を大切にする職場をつくるためなのである。複数の人間や部署がチェックし合い確認し合って仕事を進めていく。このような厳しいシステムが存在することによって、社員が罪をつくることを未然に防ぎながら、緊張感のあるきびきびとした職場の雰囲気が醸し出されるのである。

このようにして経営を管理するシステムを正しく十分に機能させるようになって初めて、さらに次元の高い愛や利他の心にもとづいた経営ができるようになるのである。(『稲盛和夫の実学』文庫新装版、p.104-106)