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寄稿⑭ 「現代日本画展・海外展を終えて」(『三彩』1987年1月号)

美術雑誌『三彩』1987年1月号に稲盛は「現代日本画展・海外展を終えて」と題して寄稿しています。
「現代日本画展」は、当時日本が世界から「エコノミック・アニマル」と揶揄される中で、経済摩擦を防ぐ意味から、海外の人々に日本人の心を広く知ってもらいたいと、京セラ創立満25周年記念事業のひとつとして、ワコールと合同で企画したものです。現代日本画家48名の作品を集め、1985年4月のパリでの開催を皮切りに、2年にわたって欧米7都市で展覧会を順次実施し、ロンドンではチャールズ皇太子殿下、ダイアナ妃殿下がご覧になったほか、各都市で歓迎を受け、来場者は合計11万5,000人に及びました。
このように成功裡に終了した「現代日本画展」の欧米巡回を振り返り、稲盛は寄稿の中で次のように述べています。
「この企画が実現いたしましたきっかけは、ワコール、京セラの両社が、通常の商業ベースとは全く別の次元で、既にその頃(編集注:1983年頃)から声高にいわれはじめていた、諸外国との経済摩擦の問題が、ただ小手先だけの調整ですむものではなく、もっと根の深い、日本とは、日本人とは、といったレベルからの理解が進まなければ、真の解決には至らないのではないか、との危機感を覚えたからでもありました。そのためには、日本人の生活の背景にある、心情、考え方、さらには日本の気候、風土といったものまでを説明しなければならない、と考えたのです。
その具体的な手段の一つとして、特に日本に固有の精神と伝統を持つ「日本画」の現代作品を集大成して、海外で公開展示を行ってはどうか、と考えたわけです。「日本画」は、古くは中国、近代ヨーロッパ絵画の影響を受けながらも、日本のそれぞれの時代の伝統的な美意識を土壌として今日に至っており、「日本」を表現する生粋の文化ということができるでしょう。この展覧会の開催により、現代日本の美術文化の正統な理解を促し、合わせて諸外国との精神文化の交流に少しでも寄与できるならば、との願いから始められたものであります」
※当時展示された日本画の一部は京セラギャラリーでご覧いただけます。https://www.kyocera.co.jp/company/csr/facility/gallery/collection/japanese/

写真
1枚目:『三彩』書影
2枚目:現代日本画展にて(右:ワコール 塚本幸一氏)