Case Studies

Case Study(1980年代)

次世代レーザープリンター「ECOSYS」の
誕生

技術の壁を突破したのは、「仲間への思い」と「執念」だった
──環境と経済性を両立させた、次世代プリンターへの挑戦と進化

挫折を乗り越え、環境への思いを形にする

1980年代、複写機事業の苦境から一転、レーザープリンター市場に参入した京セラ。競合他社に比べ圧倒的に少ない人員体制の中、常識を覆す「長寿命化」に挑みました。前人未到の技術的な壁を乗り越えさせたのは、ともに苦労した仲間への思いと、地球環境の未来を見据え「人間として何が正しいのか」という普遍的な正しさを追求する「京セラフィロソフィ」の考え方でした。

仲間のために。逆境から生まれた強靭なモチベーション

  • #利他の心

1986年、京セラは苦渋の決断を下しました。事業が苦境に陥り、主力工場で生産するものがなくなるほどの状況に追い込まれたため、複写機事業から撤退、今後新たな需要が望めるレーザープリンター事業の立ち上げに集中することにしたのです。開発陣は競合他社に比べて約10分の1の人数でしたが、彼らを突き動かしたのは「工場で苦労している仲間たちを、複写機事業で食べさせてあげられなかった」という悔しさと挫折感でした。自分たちの事業への責任感と、絶対に負けない製品をつくり上げるという仲間への純粋な思いやりが、連日深夜まで議論を交わし、一日も早い製品化を目指す最大の原動力となったのです。

粘りと根性で、立ちはだかる技術の壁を突破する

  • #ひたむきな努力

他社との差別化を図るため、京セラが着目したのは耐久性が30倍以上もあるアモルファスシリコン(a-Si)感光ドラムの搭載でした。しかし、ドラムが長寿命になれば、周辺の部品や機構も同様に長寿命化させなければなりません。とりわけ困難だったのが、硬いa-Si感光ドラム表面の微小な付着物を除去するクリーニング方法の開発でした。限られた人数の開発陣は、新しいトナーや研磨ローラの開発など、発想の転換と膨大な試行錯誤を重ねました。道具がなければ素手で荒野を開墾するかのような闘魂と、諦めずに続ける地道な探求の末に難題を克服したのです。

エコロジーとエコノミーの
両立
普遍的な正しさを追求する

  • #人間として何が正しいのか

1992年、世界初となるa-Si感光ドラム搭載レーザープリンターが誕生しました。「ECOSYS(エコシス)」と名付けられたこの製品は、廃棄物を大幅に減らす「Ecology(環境性)」と、ランニングコストを抑える「Economy(経済性)」を両立させた画期的なものでした。当時は導入コストが重視されていましたが、京セラは運用コストも含めたトータルコストの削減と環境負荷の低減をあえて追求しました。「人間として普遍的に正しいことは何か」という倫理観に基づき、社会にとって本当に価値あるものを世に送り出した結果、ECOSYSは世界各国で数々の環境規格の認定を受け、高い評価を得たのです。

アモルファスシリコン感光ドラムを搭載したプリンターECOSYS LS-1500

アモルファスシリコン感光ドラムを搭載したプリンターECOSYS LS-1500

ドイツ『PC PROFESSIONAL』誌が掲載した主要プリンターによる200万枚プリントアウト後の廃棄物量の比較 ( 右上写真の左端のひときわ低いものが京セラ )

ドイツ『PC PROFESSIONAL』誌が掲載した主要プリンターによる200万枚プリントアウト後の廃棄物量の比較 ( 右上写真の左端のひときわ低いものが京セラ )

ECOSYSの思想と技術を
受け継ぎ、次なる環境課題の
解決へ

  • #新たな挑戦

ECOSYSの開発から約30年。京セラが培ってきた「地球にやさしいプリンター」の思想と蓄積された技術は脈々と受け継がれ、さらなる飛躍を遂げています。それが、紙以外の素材にプリントする産業印刷分野への展開であり、全く新しい捺染インクジェットプリンター「FOREARTH(フォレアス)」の開発です。アパレル業界では、プリント工程における大量の水消費や、過剰生産による大量廃棄が深刻な環境課題となっていました。京セラは独自のインク技術により、水の使用量をほぼゼロに抑えることに成功。ECOSYSの開発を通じて証明された環境への思いと確かな技術力は、業界の枠を超え、今も新たな表現と価値を創造し続けています。

生地にプリントする捺染インクジェットプリンターFOREARTH(フォレアス)

生地にプリントする捺染インクジェットプリンターFOREARTH(フォレアス)

独自開発の水系顔料インクと前後処理液を使用し、綿・シルク・ポリエステル・ナイロン・混紡など、生地に合わせてインクを交換することなくさまざまな生地へのプリントを実現。

独自開発の水系顔料インクと前後処理液を使用し、綿・シルク・ポリエステル・ナイロン・混紡など、生地に合わせてインクを交換することなくさまざまな生地へのプリントを実現