「ただいま」と再びピッチへ。サンガ愛が導いた決断
10年ぶりに京都サンガF.C.へ復帰された、今の率直な気持ちをお聞かせください。
正直、ここまで早くに帰ってくるとは思っていませんでした。もう少し、ヨーロッパでサッカーをやれたらいいなと思っていたので。ただ、オファーがあった時は、やっぱり嬉しかったです。ヨーロッパから日本にオフで帰ってきて、サンガの試合を見に行くと「サンガいつ帰ってくんねん」みたいなことは色んな人から言われて。でも、「オファーないのに帰れへんから」と返していました(笑)。だからこそ、オファーをいただいた時は「やっと来たか」と。
帰国への迷いもあったと思いますが、そんな中、京都サンガF.C.への復帰を決断した最大の理由は何だったのでしょうか?
自分を育ててくれたクラブでもあるので、海外にいた時も何か力になれればなっていうのはずっと思っていました。なので、サンガのことをSNSで発信したり、オフで帰国した時は試合で挨拶したり。他のクラブでプレーするよりは、サンガでプレーすることへの気持ちは強かったですね。
トップチームに昇格してから海外に挑戦するまでの約半年間は、ご自身にとってどんな意味を持つ時間でしたか?
親や育ててもらったコーチへの恩返しとして、いいプレーをしたいという気持ちがありました。ただ、その頃にはすでに海外からオファーがあったので、“移籍前にゴールを取りたい”っていう目標があって。2015年6月の大分トリニータ戦でゴールを取れて、それを達成できたのは良かったのかなとは思います。
一度外から京都サンガF.C.を見て、そして中に戻ってきた今、チームにどんな変化を感じますか?
意識の部分が変わったなと思います。曺さん(現監督)が来て、基礎作りからしたと思うんですけど、そういった練習への意識や、ボールに対する意識は、僕がいた頃より数段高いです。練習の強度も、当時とは比べものにならないほど上がっています。これだけの練習をしていたら、やっぱりいつか結果が出るだろう、それが今のタイミングだったんだなと思います。
世界で戦うための礎。SAPで培われた「ピッチ外の力」
海外での挑戦は、言葉や文化、プレースタイルの違いなど、多くの困難があったと思います。最も苦労したことは何ですか?
サッカーはどこの国でもルールが同じなので、抵抗はありませんでした。やはり一番苦労したのは言語ですね。
慣れるまでには、どれくらいかかりましたか?
半年くらいかかりました。ただ、立命館宇治高校の選択言語の授業でドイツ語を学んでいたので、言葉への抵抗感はなかったです。外国人の先生も多く、校長先生も英語で話す環境だったので、インターナショナルな雰囲気には慣れていました。
海外生活の中で、立命館宇治高校での学びが役に立ったのですね。 特にコミュニケーションの取り方は役立ちました。海外では、たとえ言葉が完璧じゃなくても、自分から話せば話すほど相手も返してくれる。最初の壁の破り方は、高校の授業で訓練されていたと思います。
SAPでは文武両道が求められます。勉強との両立は大変だったと思いますが、SAPで過ごした時間が、今の自分の強みや人柄にどのような影響を与えていると思いますか?
正直、勉強が一番大変でしたね。しっかり勉強しないと進学できないっていう環境だったんですが、それくらいのプレッシャーがある方が人間としても成長しますし、勉強の仕方やコミュニケーションの取り方など、日常生活や将来に必要な力は、あの時自然と身につけていたんだなと、今になって感じます。文武両道っていう難しいことにチャレンジしていたのには、意味があったんだなと。
改めて、SAPの一番の魅力は何だと思いますか?
やっぱり「環境の良さ」ですね。勉強面では厳しさもありますが、その分レベルが高く、グローバルな環境で学ぶことができます。サッカーに関しても、学校から練習場が近いので、サッカーに打ち込める環境が整っています。栄養バランスの取れた食事ができる食堂もあるので、体作りの面でも大きく支えられていました。
SAPの先輩が紡ぐ未来。感謝を胸に次の夢へ
現在の京都サンガF.C.には、多くのSAP経験者が在籍しています。SAP出身選手がチームの中核を担うことの意義を、どうお考えですか?
SAPで育った選手が活躍することで、プロジェクト自体の発展につながり、結果的に次の世代の子どもたちのためになるはずです。与えられた環境を当たり前と思わず、そういうことを自覚しながらプレーしなければいけないと思います。
ご自身の経験を踏まえ、今まさにプロを目指しているSAPの後輩たちに、最も伝えたいことは何ですか?
今自分が何をすべきか明確にすることが大事ですし、先を見据えると勉強もしっかりしておいた方がいいと思います。素晴らしい環境で学べる、その環境をくれた親にも感謝をしなければいけないです。その気持ちがあることで、最後の一歩を頑張れます。
奥川選手のように、海外で活躍した選手がいることも大きいと思います。その視点からのアドバイスはありますか?
サッカー選手という点では、日本でも海外でも同じなので、“他の選手と違う”と思われるのは、個人的には好きではないんです。ですが、一つ言うとすれば、海外に行くチャンスがあれば、挑戦してほしい。大人になるとセーブしたり、リスクを取らなくなってしまったりすることもありますが、失敗するなら早いほうがいいし、それが自分を大きくしてくれると思うからです。
改めて、この京都サンガF.C.で成し遂げたい目標を教えてください。
やっぱり、タイトルを持ち帰ることです。そのチャンスがある舞台に自分が立てていることは、それが使命でもあると思うので、まずはそこに100%注ぎたいです。
最後に、サポーターへのメッセージをお願いします。
いつもサポーターさんには選手が力を出しやすい環境を作ってもらえて、感謝しています。
僕がサンガに戻ってきてから、満員のスタジアムのピッチでプレーしたいってずっと言ってきました。なので僕は、サポーターさんが「また見に行きたい」と思ってもらえるようなプレーを目指していきたいです。これからもたくさん応援をお願いしたいなと思います。