キャプテンの腕章に宿るもの。
SAPが教えてくれた「人の心を動かす力」

サンガスタジアム by KYOCERA での川﨑颯太選手の写真

U-18とトップチーム、両方でキャプテンを経験されましたが、それぞれの立場で意識していたことの違いは何でしたか?

U-18でキャプテンをしていた時は、「京都サンガF.C.」というエンブレムを背負っている自覚や、戦う姿勢をプレーでも言葉でも見せることを意識していました。
一方、トップチームでは、言葉で引っ張るというよりは、若いキャプテンだからこそ、自分が一番エネルギッシュに動き、真摯にサッカーに向き合う姿勢をプレーで示す──それを常に意識していました。流れが悪い時でも、「勝ちたい」という気持ちを一番に出して、絶対に諦めた表情を見せないようにしていました。

年上の選手や外国籍選手もいる中で、チームをまとめる難しさがあったと思います。チームをまとめる中で意識していた行動はありましたか。

まったく話したことがないキャプテンにいきなりプレーのダメ出しをされても、受け入れにくいだろうなと思ったので、サッカー以外のことも積極的に話して、距離を縮めるよう心がけていました。

チームに貢献できているなと感じる瞬間はありましたか?

先輩・後輩関係なくピッチ内でお互いに要求し合ったり、ピッチ外では他愛もない話をしたりして、ファミリーのような温かいチームにはできたんじゃないかなと思います。

その中で、SAPで学んだ人間性や対話の方法が活きたと感じる場面はありましたか?

立命館宇治高校の授業では、ただ机に座って学ぶだけではなく、生徒同士で意見を交わす機会が多くありました。そうした経験があったからこそ、チーム内でも自然と先陣を切って意見を言えるようになったのかなと思います。また、学校では“生徒の一人”ではなく、“リーダーになれる存在”を目指すようにと言われていたので、その意識も今の自分に活きていると思います。

川﨑選手にとって「理想のキャプテン像」とはどのようなものですか?

まずは“サッカー選手”として、チームを勝たせたり、助けたりできるプレーをすることが大前提です。そのうえで、周りに目を向けて、モチベーションが落ちている選手に声をかけたり、ご飯に誘って話を聞いたり、チームのために動ける人が素晴らしいキャプテンだと思います。

その考え方は、SAPでの経験も影響していますか?

SAPでは「文武両道」を掲げていて、何か一つのことだけをやればいいとは教わりませんでした。 学園祭などのイベントでも率先してリーダー的な役割を担い、周りを巻き込むことの大切さを学びました。それに加えて、礼儀や人間性の面でも多くのことを求められました。いろいろなことができる人が理想のリーダー像だと感じているのは、SAPの影響もあるのではないかと思います。

SAPで過ごした時間が、今の自分にどのような影響を与えていると思いますか?

帰国子女など、さまざまなバックグラウンドを持つ友人たちと出会えたのは大きかったですし、ドイツ語を第二言語として学べたのもSAPのおかげです。また、野球部やアメフト部など他の部活の仲間たちが、勉強にも真剣に取り組む姿を見て刺激を受けました。お互いに切磋琢磨できる環境だったからこそ、自分自身が大きく成長できたと感じています。

ドイツの地で武器になる、SAPが育んだ「学ぶ姿勢」

立命館大学での川﨑選手の写真
立命館大学での川﨑選手

現在、マインツでの生活に慣れるために、特に意識して取り組んでいることは何ですか?

マインツに長くいる選手に多くの話を聞いて、いろいろと教えてもらっています。会話は日本語ではなく英語を使っているので、SAPでの英語教育がすごく役立っています。特に高校では外国人の先生との授業もありましたし、英語はみっちり勉強しました。
また、片言ながらドイツ語も使っています。上手くチームに馴染めているのは、学校で学んだ語学の基礎があったからだと感じています。

高校時代から海外への意識は高かったのでしょうか? SAPの環境が海外への挑戦や語学習得への気持ちを後押しした側面はありますか?

「いつかヨーロッパでサッカーをしたい」という気持ちは、小さい時からずっとありました。SAPでは周りのみんながしっかり勉強していましたし、自分はもともと負けず嫌いな性格なので、「みんなに負けてたまるか」という気持ちがモチベーションにもなっていたと思います。
サンガにも雅也くん(奥川雅也選手)をはじめ、海外に渡った先輩方がいたので、そういう先輩方の話を聞いていると、「やっぱり自分も海外を目指さなきゃな」と思いました。

新しい言語や文化を学ぶうえで、SAPで培われた「探究心」や「学ぶ習慣」はどのように役立っていますか?

高校から大学までの7年間で、「学ぶ習慣」がしっかり身についたと思います。学ぶ習慣ができているので、意識して学んでいるというよりは、自然体で勉強している感じです。
また、もともと自分は好奇心旺盛な性格なので、新たな言語を学ぶのは割と好きなんです。なので、SAPで身につけた学びの姿勢と、自分の性格の両方が今の環境で役立っていると感じています。

海外での挑戦を通して、自分自身の成長を感じる部分はありますか?

日本では、自分がどういうプレーヤーなのかをある程度知ってもらえていますが、ここでは監督もチームメイトも自分のことをあまり知りません。ゼロからどうやって信頼を築くか、どう自分の力を証明するか、チームにどんな貢献ができるかを日々考えています。そうした時間が自分をたくましくしてくれているなと感じます。
もちろん、環境も常識も違うので、上手くいかないこともたくさんあります。でも、だからこそやりがいがありますし、そんな状況も「ウェルカム」というか、むしろ楽しめていると思います。

ロッカールームから街の熱気まで。
サンガとマインツ、チーム文化の違いとは

京都サンガF.C.でキャプテンマークをつけてプレーする川﨑選手

京都サンガF.C.と1.FSVマインツ05では、ロッカールームの雰囲気に違いは感じますか?

日本では、練習場に行くと「練習だ」という感じで、真面目な雰囲気がありますが、ドイツのロッカールームはもっとガヤガヤしていて、にぎやかです。練習場にもダーツや卓球などいろいろな娯楽があって、みんなリラックスして過ごしています。全体的に、堅苦しさがないですね。

選手同士の関係性に違いはありますか?

一番大きな違いは、“先輩・後輩”のような上下関係があまりないことです。日本の方が、そうした関係性がまだ残っている印象があります。そのぶん、日本の選手はベテランに積極的に学びに行ったり、コーチに話を聞いて練習に取り組んだりと、すごく真面目だな、サッカーに真摯に向き合っているなと感じますね。

現在、1.FSVマインツ05には同じ日本人の佐野海舟選手も在籍していますが、佐野選手はどんな存在ですか?

やっぱり同じ日本人がチームにいることは心強いです。でも、海舟くんが試合に出て活躍している姿を見ると「すごいな」と思うと同時に、自分は負けず嫌いなので悔しい気持ちがあります。

ファンやサポーター、そしてクラブが根付く街の雰囲気について、京都とマインツで違いを感じる点があれば教えてください。

マインツは街自体が小さいからかもしれませんが、試合の日になると街中がユニフォームを着た人で溢れます。クラブのエンブレムのステッカーを貼った車もたくさん走っていて、みんな本当にマインツが好きなんだなと感じます。

大学ではチームの経営や運営についても学ばれたそうですが、その視点から違いは感じられましたか。

マインツは、地域の小さなクラブとたくさん提携していて、スクールの手伝いに行くこともあります。そうしていろんな子どもたちやクラブと関わるからこそ、街全体で応援してもらえるのかなと感じます。地域を巻き込んだクラブ運営は、ドイツでは昔から根付いていて、本当にしっかりしているなと思います。

サポーターと触れ合う中で、印象に残っていることはありますか?

アジア人が珍しいからかもしれませんが、サポーターに話しかけられることは結構あって、この間は練習から帰る時に、「ソータ! 次はお前の番だ!」と急に声をかけられました。期待してくれているのはもちろん、クラブの“家族”のように受け入れてもらっているんだなと感じて、すごく嬉しかったですね。

現在の目標について教えてください。

今はまだ試合に多く出られていませんし、チームもリーグで苦しんでいる状況です。だからこそ、まずは自分が試合に出てチームを勝たせたい。そして、サポーターと一緒に喜びを分かち合いたいというのが今の目標です。今後も、もっと長くマインツでプレーして、自分の価値をどんどん高めていきたいですし、その先に、ヨーロッパのビッグクラブでプレーするという夢もあります。

SAPの先輩として、今後輩に伝えたいことはありますか。

夢に向かって、まっすぐ突き進んでほしいです。自分もサンガで長くプレーしていると、愛着が湧いて「このままずっとここでプレーしてもいいかな」と思うこともありました。でも、あらためて幼い頃からの夢を思い出し、ドイツに渡る決断をしました。
夢を見失いそうになることもありますが、やっぱりそれが全ての原動力だと思います。だからこそ、自分の最終的な夢や目標は絶対に忘れないでほしいです。