「どんな決断も尊重する」。SAPが授けた自律の精神

インタビューを受ける中野瑠馬選手の写真

まず、U-18時代に年代別代表にも選ばれ主力として活躍しながら、トップ昇格が叶わなかった当時の率直な心境を教えてください。

トップチームに上がることを目標にしていたので、やはり悔しさはありました。ただ、コロナ禍でトップの練習にあまり参加できていなかったので、妥当といえば妥当かなという思いもあり、悔しさと納得が半々という感じでした。

そこからどのように気持ちを切り替えたのですか。

もともと大学でサッカーをしてみたいという気持ちもありましたし、仮にその時トップに上がってもすぐに活躍できるとは思っていませんでした。だからこそ、昇格できなかったことに対して大きく落ち込むことはなかったです。自然と「次の環境で頑張ろう」と前を向けていました。

SAPの活動では「自律」や「文武両道」が求められますが、進路に悩んだ時や大学へ向かう準備の中で、SAPでの経験が支えになったと感じることはありましたか?

勉強もサッカーも自由な環境で取り組ませてもらいましたし、自分の決断を尊重してもらえる環境があったのはありがたかったです。SAPの同級生の中には、他大学に進学した人もいましたが、そうした決断もきちんと尊重されていました。
また、高校卒業後に立命館大学へ進学し、サッカー部に入れたのも、SAPの制度があったからこそだと思います。

当時、同期の選手がプロへ進む中、ご自身は大学で「どんな選手になりたい」「何を得たい」と考え、4年間のスタートを切ったのでしょうか?

プロに進んだ選手たちは少し遠い存在になりましたし、ライバルという意識もありませんでした。当時は、まず大学の試合に出ることだけを考えていました。プロになるということもあまり意識していませんでしたね。

大学で感じた「悔しさ」が原動力。
プロの景色を変えた4年間の進化

グラウンドに立つ中野瑠馬選手の写真

立命館大学での4年間は、どんな思いでサッカーに取り組んでいましたか。

高校生の時に世代別代表に入っていたので、大学でもすぐに試合に出られるかなと思っていたのですが、1年生の頃はなかなか試合に出られず……。同級生が出場しているのを見て、すごく悔しかったです。もともと負けず嫌いなので、その悔しさがあったからこそ、今の自分があると思っています。

立命館大学での4年間を経て、高校時代の自分と比べて「ここは絶対に負けない」「景色が変わった」と自信を持てる部分はどこですか?

高校の時は、自分がなかなか頑張れない時でもコーチが気を使って声をかけてくれる環境でした。でも大学では、監督1人という体制だったこともあり、監督が選手と密にコミュニケーションを取る環境ではありませんでした。
だからこそ、そこで腐っても誰も助けてくれないので、自分で立て直すしかなかったんです。ある意味、あの環境があったからこそ、成長できたのかなと感じています。

自分で自分を奮い立たせるのも簡単ではないと思いますが、どのようにモチベーションを保っていたのでしょうか。

「毎日を大切にしよう」と思って、常に目標を立てていました。毎日の練習で何点取るか、年間目標などを決めて取り組んでいました。

一度サンガを離れ、大学という新しい環境に身を置いたからこそ改めて気づいた「SAPという環境の魅力や特長」はありましたか?

サッカーを追求できる環境が整っていたことは、改めてSAPの大きな魅力だと感じました。大学では一人暮らしをしていたのですが、寮にいた頃のような食事管理や生活リズムを自分でやろうと思ったら、やっぱり大変で。離れてみて、あの環境のありがたさに気づきました。

外から見たサンガの魅力はありましたか?

新たな魅力に気づいたというよりも、観客が増え、クラブが大きくなっていることを実感していました。
サンガは、高校から所属していたクラブなので、もともと自分にとって好きなクラブでもあり、ずっと特別な存在でした。大学時代も試合結果は常に気にしていましたし、J1昇格のシーズンは外から見ていても本当に面白かったですね。

大学入学当初は、プロを意識していなかったとのことですが、どのあたりから「プロになれる可能性」を感じましたか。

オファーをいただくまで、正直全く意識していませんでした。そもそも、立命館大学のサッカー部からプロになる選手もそんなに出ていなかったですし、そもそもどうすればプロになれるのかもわからなくて。2回生の時に、トップチームのキャンプに参加させてもらったことがきっかけで声をかけていただいたのですが、キャンプに参加した時も特別な意識はなく、「とにかく頑張ろう」という感じで。

プロの内定が決まった時の率直な気持ちと、再び紫のユニフォームに袖を通した瞬間の感慨を聞かせてください。

まさか自分がプロになれるとは思っていなかったので、びっくりしたのと同時に、やっぱり嬉しかったです。
高校時代は、西京極のスタジアムによく試合を観に行っていたんですが、トップ昇格した時には、亀岡のスタジアムに変わっていました。新しいスタジアムに立った時は、昔と比べてクラブの規模や雰囲気が大きく変わっていて、ここでプレーできることが嬉しいなと素直に思いました。

偉大な先輩との共闘、そして未来へ。
パイオニアとして描くサンガの未来図

インタビューを受ける中野瑠馬選手の写真

実際にトップチームに合流してみて、今手応えを感じている「自分の武器」と、これからもっと伸ばしていきたい「課題」はどこだと感じていますか?

前への推進力や運動量、攻守におけるハードワークが持ち味です。課題は、最後の質の向上やフィジカル面です。大学からプロの世界に入った時に、フィジカル面で大きな差を感じました。去年1年間は、フィジカルコーチの指導のもと筋力トレーニングに取り組み、最初よりはましになったのかなと。ですが、自分は少し小柄なので、もっと上を目指さないといけないと思っています。
これからは、人間性も含めて「中野がいたら大丈夫だな」という安心感を与えられたり、チームの軸となれる選手を目指したいです。

チームにはSAPの先輩である奥川雅也選手や、海外へ挑戦した川﨑颯太選手といった存在がいます。彼らの活躍は、大学を経て戻ってきた中野選手の目にどう映っていますか?
彼らの背中から受ける刺激や、良い影響についても聞かせてください。

大学時代、雅也くんは遠い存在だったので、今こうして一緒にプレーできていることがすごく嬉しいです。経験豊富な選手と同じピッチに立てることはなかなかないので、吸収できるところは吸収したいですし、負けないように頑張らないといけないなとも思います。
颯太くんは、自分と同じように立命館大学を卒業し、ポジションも同じです。ですが、颯太くんはサンガのキャプテンを務め、今はドイツで挑戦している姿を見ると、自分が同じ年齢だった頃と比べて「自分はまだまだだな」と感じます。遠い存在になってしまわないように、自分自身もっと努力しなければいけないと思います。

今、プロのサッカー選手になってみて、改めてSAPでの経験が今の自分の強みや人間性にどう影響していると感じますか。

自分で考えて行動する力は、高校時代に培われたものだと思います。こうした力は、プロになってから特に必要だと感じています。もちろん、周りの環境も影響しますが、最終的に自分自身で状況を変える力が大事です。そういった点もSAPで学んだことです。

中野選手のように「大学を経て夢を叶える」という道は、後輩たちにとって大きな希望になると思います。プロを目指すSAPの後輩たちへ、今だからこそかけられる言葉を教えてください。

今振り返ると、大学時代はたくさん時間があります。大学のサッカーは、プロに比べると見えている世界が狭いです。大学で活躍できていても、それがそのままプロで通用するとは限りません。だからこそ、常にプロを意識して生活することで、時間の使い方も変わると思います。

最後に、将来の夢について教えてください。

これまで応援してくれた家族や友人が喜んでくれるような活躍をすることです。それが今の一番の夢ですし、自分のモチベーションでもあります。