THE NEW VALUE FRONTIER
  1. Home
  2. BE INNOVATION!
  3. 医療・ヘルスケア
  4. 人工股関節の耐用年数を大きく延ばすことが期待できる「Aquala®」とその未来
Interview

人工股関節の耐用年数を
大きく延ばすことが期待できる
「Aquala®」とその未来

Medical & Healthcare
Introduction

“耐用年数を延ばす”人工股関節の課題を
バイオミメティック技術で解決

Aquala®(アクアラ)

社会の高齢化が進む中、健康寿命の延伸が大きな課題となっています。
京セラは医療分野の中でもセラミックスの技術を応用した人工関節の研究開発に取り組んできました。

本来、我々の関節は特に問題がなければ一生涯持ちます。しかし、現在の人工股関節は15年ぐらいの耐久性しかありません。そのため、患者さんによっては、人工股関節を入れ替える再置換手術が必要になるものの、高齢になるほど再手術は難しい。つまり、「耐用年数をいかに延ばすか」ということが、人工股関節にとって長年最大の課題でした。

その課題に対して京セラが取り組んできたのが、長寿命型人工股関節の技術「Aquala®(アクアラ)」の研究開発です。人工股関節置換術は、病気やケガで失った関節の機能をセラミックスやプラスチック、金属からなるインプラントに置き換えるというもの。京セラは骨とファインセラミックスとの親和性の高さに着目し、1970年代から基礎的な研究をスタートしました。
人工股関節の耐久性を高め、患者さんの失われた生体機能を取り戻すための技術として、大学や他企業などと協力しながら長年研究を重ねています。

そして、たどりついたのが、生体の関節軟骨の構造や役割を模倣するバイオミメティック(生体模倣)技術を活用すること。Aquala®は、生体の関節軟骨表面が持つ親水性のゲル状構造に注目し、人工股関節の表面に親水性のポリマー(MPCポリマー)による水の膜を作る表面処理技術で、滑らかな動きと耐久性を実現することに成功しました。これにより、Aquala®を搭載した製品は従来製品と比較して摩擦が1/10に低減、歩行負荷試験(人工股関節シミュレーター試験)でも70年に相当する耐久性が認められるなど、長年課題とされていた人工股関節の耐用年数を大きく延ばすことが期待できるのです。

Technology Data
Aquala®

Aquala®(アクアラ)

細胞膜と同じ分子構造を持つ「MPCポリマー」を人工股関節摺動面(関節面)にグラフト重合させることに成功した、日本発の技術です。15年分以上に相当する歩行負荷試験では、摩耗粉の産生が従来の製品(当社製品との比較)と比べ約99%抑制され、人工股関節の耐用年数を延ばすことが期待できます。

「Aquala」は京セラ株式会社の登録商標です。

01

「人工股関節の耐用年数を延ばしたい」。
わたしたちの“挑戦”

Aquala®の研究開発にも関わった、メディカル開発センターMマテリアル開発部部責任者は2001年の入社以来、人工関節の技術開発に携わってきました。これまでの挑戦や研究開発の苦労について、同センターで現在Aquala®の開発に関わる生体医療開発課の若手開発担当者が話を聞きました。
  • 部責任者
    研究開発本部
    メディカル開発センター
    Mマテリアル開発部
  • 医療部門開発担当者
    研究開発本部
    メディカル開発センター
    Mマテリアル開発部 生体医療開発課1係
  • 医療部門開発担当者
    研究開発本部
    メディカル開発センター
    Mマテリアル開発部 生体医療開発課1係
  • 京セラは様々な医療分野の研究開発に携わっていますが、その中でも人工関節を作り始めた背景はどのようなものだったのでしょうか?

  • 人工股関節に関する基礎研究が始まった1970年代はファインセラミックスが注目されていた時代で、京セラはその技術を活用して事業の多角化を推進していたと聞いているよ。そのファインセラミックスは、生体と親和性が高いと考えられていたんだ。

  • そこで京セラの持っていたファインセラミックスの技術が、人工股関節においても活用できないかと研究が始まったってことですね。

  • そうだね。京セラとしても、人々の命や健康に貢献したいという思いがあったからね。1982年に人工股関節の販売を開始して以来、「人工股関節の耐用年数を延ばすことで、元気に活動する高齢者を増やしたい」と追求したのが、いまのAquala®なんだよ。

  • Aquala®の開発にあたり、ぶつかった壁などはありましたか?

  • 僕は入社当時、人工股関節の台座となるポリエチレンの研究をやっていた。ただ、当時の京セラにはセラミックスに詳しい先輩は多いんだけど、プラスチックを専門とする人は社内にほとんどいなくて困ったんだよね。

  • そういった状況でどうやって研究を進めたんですか?

  • 化学関連に強い他社さんに出向いて、プラスチックについて基本から教えてもらったんだ。おかげでプラスチックについての知識を得ることができたんだよ。

  • 社内だけでは足りなかった知見を社外から得ることで、開発を進めていったんですね。

02

若手に期待する“未来創造”。
患者・医師目線に立ち、世界と戦え!

これまでの人工股関節の耐用年数を大きく延ばすことが期待できる「Aquala®(アクアラ)」。しかし、超高齢社会を迎える今、これからの人工股関節をとりまく課題や未来の医療課題を解決するために新たな技術開発が次々と求められます。未来の医療課題に向けて日々技術を開発している若手社員に、先輩社員はどんなことを期待しているのでしょうか。
  • Aquala®は、ひとつの成功。でも、人工関節を入れた患者さんが、もともとの身体機能をすべて取り戻せたのかというと、そうではないところも多い。手術後、患者さんの生活が制約されることがない医療を提供できるような開発をしてほしい。

    ふたりはいま、症状の軽い段階で根治できる技術や治療に関わるサービスの研究をはじめてもらっているよね。ぜひその研究開発の中心となって頑張ってください。

  • 先輩の期待にもこたえられるように、医療が持つ課題に対して新しい仕組みや医療機器の開発に挑戦していきたいです。

  • エンジニアはどうしても技術に注目しがちだけど、患者さんが何を求めているのか、医療を提供するお医者さんが何を求めているのかもふまえて開発してほしいね。

  • 患者さんやお医者さんのニーズを勝手に想像してしまっているところがあるかもしれないです。医療現場でのニーズや情報をもっとヒアリングしないといけないですね。

  • 私は、患者さんの負担がもう少し軽くなる治療ができるようなものをつくりたいです。例えば、軽い症状だったら手術をしなくても良くなるような技術の開発など。いまは再生医療もすごく高額ですが、もう少し身近なものになったら患者さんにも喜んでもらえるかもと思っています。

  • あと、2人にはぜひ「世界で一番になれるためにはどうすればいいのか」を常に考えてほしい。

    医療機器や薬など医療の分野には世界的に大きな企業も多いので、もしかしたら企業として今すぐ対等に戦うことは難しいかもしれない。だけど、そこで働くエンジニアとの勝負であれば、負けないエンジニアになってほしいな。一人一人が負けない京セラなら、将来は必ず企業としても戦える。だから、若手のみなさんも世界で挑戦するためにはどうしたらいいのかを考えながら、自分の目標を持ってどんどん提案してください。

  • いまは日本の患者さんにしか届けることができていないので、今後は海外の患者さんにも届けていきたいですね。

  • 海外への展開は医療制度や体格の違いなど、さまざまなハードルはあるけど、技術としては十分な製品ができているので、是非その思いを実現してほしいと思います。

Message

永く医療に関わってきた経験を新たな製品開発に活かし、
予防医療、健康寿命の延伸に貢献していく

京セラは40年以上取り組んできた人工股関節の分野において、Aquala®というひとつの成功をおさめました。それは、早くから医療分野での事業に取り組み、人々の健康に寄与する製品を開発してきた京セラだからできたこと。これから加速する日本の高齢化を目の前にしても、取り組むことは変わりません。
病気を未然に防ぐ「予防医療」が今後ますます重要視されていく現代で、京セラは医療機器を中心に人々の健康を支えていきます。