最も危険な場面をそっと影から見守る、ミリ波センシングのアプリケーション
安心できる場所が、実は家庭内で一番危険!?
何もつけないけど、そっと見守る、ミリ波センシング
入浴というリラックスを目的とした環境において、医療機器等のセンサを体に装着することはちょっと考えにくいですね。京セラでは自動車関連分野で培ったミリ波レーダー技術を活用した非接触バイタルセンシング技術を開発しています。京セラのバイタルセンシング技術の基本原理は60GHzレーダーを使用して体表面の振動を検出し、得られた振動から心拍に関連する情報を抽出します。この技術により入浴者はセンサの装着や座り方に制限されることなく、通常の入浴においてバイタルセンシングすることが可能となります。また、60GHzレーダー(電波)を使っている特性上、カメラなどは不要で、プライバシーが要求される浴室においても安心してお使いいただけます。
既に環境(水位や機器の使用状況)をモニターして判別・通知するアプリケーションもありますが、それらのアプリケーションでは事故が起こったことを検知できたとしても、状況としては既に遅く、最終的に入浴者が助かるか助からないかは、入浴者本人の状態と周囲の環境(すぐに救助に入ることができる人間が周りにいるかどうか)が大きく影響します。一方、京セラのアプリケーションでは、心拍情報や入浴時間などを総合的に活用し、過去の情報と比較しながら判別します。それによって状態が大きく悪化する前に、自力で退浴できるうちに退浴通知をすることが可能です。
本当は怖い、お風呂の話
しかし上記は仮説で、実際に事故前後のデータを取得した前例がありません。上記のようなケースの場合、解剖を行ったにしても溺れて亡くなったことが分かりますが、なぜ溺れたかが分からないという結果だけが残ります。一方、事故前後のデータ取得を目的とした試験(無理やり長時間入浴し、溺れていただくような試験)は、倫理的観点から実施することはできません。このような倫理的ハードルと事故前後のデータがないことが原因究明をできない限界として存在しています。
このような限界が存在するため、事故の原因を追跡研究などにより究明し、根本的な対策を行うことが現実的ではありません。そのため、京セラではバイタル情報を取得し、安全にお風呂から上がれる状態で通知し、自らお風呂から上がっていただくことで事故を予防できないかと考えています。つまり、「いつも通り入浴し、いつも通り退浴できる」という価値を提供し、社会課題への対策を提供できないかと研究開発を行っています。