自分にとって最適な仮眠を提供してくれる仮眠起床AIシステム『sNAPout®』
目次
Power NAP(パワーナップ)って何?
午後に集中力が続かない、ケアレスミスが多い、昼食後に眠くなって授業や仕事に集中できない、こういった経験はないでしょうか?
実は、日本人は世界一睡眠時間が短く、睡眠不足の傾向があるといわれており、こうした睡眠不足に起因する勤務中の眠気により、業務中の作業効率が4割も減少してしまうとの報告もあります。近年では、午後の仕事の効率をあげるには、パワーナップ(日中の30分以内の仮眠)が効果的と言われており、実際に休憩時間に仮眠されている方もいると思います。
では、その仮眠の時間は、あなたにとって本当に最適なものでしょうか?
自分にとっての“最適な仮眠”とは?
京セラは、最適な仮眠の重要なポイントとして、以下の2点に着目しました。
一点目は、『仮眠から起きるタイミングの最適化』。二点目は、『入眠までの時間短縮』です。
1. 仮眠から起きるタイミングの最適化
個人差はありますが、人間の睡眠の1サイクルは、上の図にある通り約90分と言われており、入眠後、睡眠段階2を経て徐波睡眠といわれる深い睡眠に入ります。睡眠は、睡眠段階1から3に進むごとに深くなり、睡眠段階3がより深い睡眠です。実は先行研究によると、この睡眠段階3の時に仮眠から目覚めると睡眠慣性(眠りから目覚めたあとも睡眠が続いているような状態)により、作業効率低下を招いてしまいます。逆に、睡眠段階3の前に目覚めることができれば、最も脳がリフレッシュした状態で起きることができることが明らかになっています。つまり、自分にとって“最適な”仮眠は、自分の睡眠段階を正しく、リアルタイムに判断して、睡眠慣性が生じないように目覚めることが重要です。
2. 入眠までの時間短縮
仮眠において、入眠するまでの時間も重要なポイントです。既に仮眠習慣がある人でも、普段と違う入眠環境や時間制約などの関係でなかなか寝付けず、せっかく仮眠しようとしたのに、寝られないまま休憩時間が終わってしまったなどの経験があるのではないでしょうか? そのため仮眠開始から入眠するまでの、いわゆる『入眠潜時』の短縮は、仕事や授業の合間にお手軽にパワーナップをする上でとても重要になってきます。
仮眠起床AIシステム『sNAPout®』
そこで、今京セラでは、『仮眠から起きるタイミングの最適化』や『入眠までの時間短縮』を実現するため、“サッと寝られて、スキッと起きられる”仮眠起床AIシステム『sNAPout®』の開発に取り組んでいます。このシステムは、コア技術として以下で構成されています。
※「sNAPout」は京セラ株式会社の登録商標です。
【sNAPoutのコア技術】
①レーザードップラー式血流量センサ
②仮眠起床AIモデル
③入眠音
①のレーザードップラー式血流量センサは、京セラのセラミックパッケージング技術を利用して開発した小型のウェアラブルデバイス用光学式バイタルセンサです。このセンサをイヤホン型デバイスに組み込み、人間の耳から得られる血流量と共同研究先の IIIS(筑波大学国際統合睡眠医科学研究機構)の検査技師が医療機器の脳波計から判定した睡眠段階を結び付けて学習したAIモデルが②の仮眠起床AIモデルです。
このAIモデルは、血流量から睡眠段階を高精度且つ、リアルタイムに予測することが可能です。また、同様にIIISと共同開発中の入眠潜時を短縮する効果が期待できる③の入眠音も加え、個々に合わせた“最適な仮眠”の提供を実現します。以下に、本技術を利用したシステム構成図を示します。
現段階での開発状況
現在は、IIISと共同で仮眠時のデータ取得による仮眠起床AIの精度向上及び、仮眠起床AIの効果検証実験を実施しています。
また、同時に、血流量センサを組み込んだPoC用の無線イヤホンデバイスと仮眠起床AIと入眠音を組み込んだ専用スマートフォンアプリを開発し、実際に顧客候補に利用してもらうマーケティング調査を実施しています。
販売モデルと将来の利用イメージ
仮眠起床AIシステム『sNAPout®』は、前述の通り3つのコア技術で構成され、ビジネス形態としては、以下のような販売モデルを考えています。
京セラではこのような眠りに関する様々な研究開発成果を基に、将来的に、仮眠だけではなく夜間睡眠時の入眠困難により睡眠の質に不満を抱えている方向けシステムとして改良を予定しています。そして、睡眠障害が原因となる様々な事故やミスによる災害などを減らすだけでなく、人間の作業効率の改善や能力拡張を進めていきたいと考えています。まさに、仮眠から夜間睡眠まで、トータルでの睡眠の質の向上を目指しています。