マテリアル

バナジウムフリーチタン合金

写真:イメージ

京セラ株式会社は1986年以来チタン材料の医療分野への応用に関する研究を続けています。
その中から、セメントレスタイプのインプラントに適した耐熱性・高強度チタン合金としてバナジウムを含ま ないTi-6AI-2Nb-1Ta-0.8Mo合金を見出しました。

また、セメントタイプのインプラントに適した最強の強度を示すTi-15Mo-5Zr-3AI合金も開発してきました。

これらはいずれもバナジウムを含まない、生体に優しい材料として認知され、2002年にはJIS規格(JIS T7401-3およびT7401-6)に制定されました。

チタン合金の耐食性

折れ線グラフ:インプラント材料の分極特性(社内データ)

AHFIXに相応しいポーラスの形成に必要な高温加熱処理を施しても、機械的特性がほとんど変わらないTi-6AI-2Nb-1Ta-0.8Mo合金の耐食性を評価する目的で、陽分極試験を実施しました。

比較材はTi-15Mo-5Zr-3AI合金およびTi-6AI-4V合金です。試験の結果、これら3種類の合金はほぼ同等の耐食性を有していることが確認できました。

チタン合金の強度

AHFIX技術の効果を最大限発揮させるためには表面をポーラスにすることが必要です。 ポーラス層を形成するときにプラズマ溶射法を採用し、その後に1000℃に近い高温で拡散熱処理を施しますが、この加熱処理後でもTi-6AI-2Nb-1Ta-0.8Mo合金は人工股関節用ステムの材料として十分な強度を維持しています。

もう一つのバナジウムフリー合金Ti-15Mo-5Zr-3AIは、金属組織の調整によりチタン合金の中でも最強の材料となりますが、ポーラス層形成の ための熱履歴を与えると強度は低下しますので、セメンテッドタイプのインプラントに採用されました。

折れ線グラフ:チタン合金と純チタンの強度特性比較(社内データ)、棒グラフ:チタン合金の疲労強度比較(社内データ)

Crosslinked Polyethylene

写真:イメージ

クロスリンク・ポリエチレンは、60Coによるγ線照射処理により架橋レベルを向上させたUHMWPEです。

ポリエチレンにγ線を照射すると、ポリエチレンの分子鎖間に架橋が生じ、人工関節の摺動面部材として使用した場合には、耐摩耗性が向上することが知られています。

エクセルリンクはASTM、ISOの医療用国際規格を満足する物理特性を有し、実験において、その耐摩耗性は大幅に向上しています。

図:隣接した分子鎖、クロスリンク

原材料のUHMWPEのブロック材をγ線照射すると、その高いエネルギーを吸収して、UHMWPE分子鎖の一部分が反応性の高い状態となり、隣接する分子鎖間が結合し、網目構造(クロスリンク)ができます。

この反応は材料内部までほぼ均等に起こります。

耐摩耗性

棒グラフ:HIPシミュレータを用いた摩耗比較試験結果(社内データ)

Excellinkは、従来品に比べて優れた耐摩耗性を有していることが、摩耗比較試験により確認されています。

包装形態

写真:イメージ

Excellinkの最終工程では、製品劣化を防ぐため、特殊ラミネートフィルムで脱酸素密封包装してγ線滅菌されます。

そして、密封状態のまま製品として提供されます。