スマート農業におけるIoT機器の役割とは?
3つの活用法を紹介

農家の後継者不足が深刻化している現在、急速に注目を集めている「スマート農業」。スマート農業の推進において、IoTは欠かせない存在になっています。
ここでは、どのような形で農業にIoTを活用することができるのか、実際の活用法を紹介しながら解説しています。
IoTを活用したスマート農業の未来像や、IoTを活用したプロダクトやサービスを考えるヒントにしていただければ幸いです。

スマート農業とは?
スマート農業とは、ロボット技術やICTなどの先端技術を活用し、超省力化や高品質生産などを可能にする新たな農業(農林水産省の定義による)のことです。
スマートアグリ(Smart Agri)やアグリテック(Agri Tech)とも呼ばれています。
なぜいま、スマート農業が注目されているのか
現在、スマート農業として語られている農業のあり方は、実はかなり昔から、SF小説やジャーナリズムの中で提唱されていました。
そんな空想の世界の話だった未来の農業が、実際に実現可能なものとして紹介されるようになったのは、日本においては2009年頃のことです。

それから約10年を経た今、スマート農業は、さまざまな企業が熱視線を注ぐイノベーション領域のひとつとして、急速に注目を集めています。とくに2018年以降は、政府も予算を設けてスマート農業の推進に本腰を入れており、官民連携や産学連携によるサービスの開発なども進展しています。
では、なぜいま、これほどまでにスマート農業への注目度が高まっているのでしょうか。それには、3つの背景があります。

スマート農業が注目される背景① 日本の農業が抱える3つの課題

スマート農業が注目されている背景のひとつに、現在の日本の農業が抱える深刻な課題があります。スマート農業を導入することで、その課題を解決できるのではないか、と期待されており、そこにビジネスチャンスを見込んだ企業が増えていることが、注目を集めている理由のひとつです。

ここでは、スマート農業が解決することを期待されている、日本の農業が抱える3つの課題について解説します。

農業従事者の高齢化、後継者不足、耕作放棄地の増加

1つ目の課題は、農業の担い手が高齢化しており、後継者が不足していることです。2015年の農林業センサスによると、全農業就業人口に占める65歳以上の農業就業者の割合は64%にまで達しており、2035年にはこのほとんどが、高齢のため農業に従事できなくなると考えられています。

一方で、新たに農業に従事しようという新規就農者は圧倒的に少ない現状があり、後継者のいない耕作地が耕作放棄地となってしまうケースが増えています。
農林水産省の発表によると、1980年代中頃まで10万ha前後で推移していた耕作放棄地面積は、2015年には42万haまで拡大しており、今後も拡大が予想されています。

新規参入が難しい

2つ目の課題は、農業への新規参入が非常に難しいことです。意欲のある人や企業が新たに農業をはじめようとしても、新規参入のハードルが高く、簡単に参入できない現状があります。
新規参入のハードルが高いのには、以下のような理由があります。

1. 多額の初期投資が必要になる
新たに農業を始めるには、作付けを行う土地のほか、農業機械や土、肥料、種苗などを揃え、必要に応じてハウスや灌漑設備などを整備する必要があります。こうした土地や設備の購入、リースに加え、収益の見通しが立つまでの間、生活するための資金も必要です。
全国新規就農相談センターの調査(2016年度)によると、農業への新規参入者が要した自己資金の平均額は、就農1年目だけで(当面の生活費も含めて)391万円にのぼっており、2年目~5年目も1年目と大きくは変わらない額の自己資金を要していることが分かります。
数百~数千万円もの自己資金を投じなければ農業をはじめられないというのは非常にハードルが高く、特に20代~30代の新規参入を阻む要因になっていると考えられています。
2. ノウハウを身に着ける手段が少なく、軌道に乗るまでに時間がかかる
農業の世界において、栽培技術や災害・天候不順におけるリスク対策などのノウハウを獲得することは、とても時間がかかることでした。そこに、後継者不在による廃業などが重なった結果、長年の勘と経験で培われてきたノウハウが適切に継承されず、新規参入者は一から試行錯誤を重ねなければならないケースが増えています。
そのため、生活できる程度の収益の見通しが立つまでに時間がかかり、必要最低限の収益さえ確保できず撤退を余儀なくされる例もあるようです。

低い収益性、過酷な労働環境

3つ目の課題は、収益性が低く、労働環境が過酷であることです。新規参入のハードルが高いことが影響し、大規模集約による効率化や先端技術を用いたイノベーションが起きにくい環境ができていた、という背景があります。
また、農業従事者が購入する肥料や機材のコストについて、適正な価格競争が起こりにくい仕組みになっている一方、農業従事者自身が農作物の取引価格の決定権を握っていないケースが多いという実態も指摘されています。
結果として、非効率で過酷な労働環境や低い収益性がそのままになっているのです。

スマート農業が注目される背景② テクノロジーの進歩

スマート農業が注目されるもうひとつの背景として、スマート農業を支える基幹的な技術を容易に利用できる環境が整ってきたことが挙げられます。
中でも、スマート農業に欠かせない技術基盤のひとつであるIoTは、低消費電力で遠距離通信を可能にするLPWA(Low Power Wide Area)や超高速通信技術の確立により通信インフラ環境が十分に整ったことで、高性能なIoT機器が次々と登場しています。
また、総務省が2018年に発表した情報通信白書によると、2019年の世界のIoTデバイス数は、2014年比で2倍以上に増加すると予測されており、機能向上と価格低下はますます進展することが見込まれています。

京セラでも、一回の充電で数週間稼働する超小型IoTユニットを開発しており、すでにIoTプラットフォーム提供各社での導入も始まっています。独自のセラミック技術を応用して開発した一円玉サイズの超小型通信モジュールを搭載することで、超小型・超軽量を実現しています。
IoTデバイスの高機能化・低価格化に加え、農業管理のためのデータ収集や分析・可視化をサポートするクラウドサービスも増えてきています。
市場調査会社のシード・プランニングが2016年に発表した市場調査レポート「農業IT化・スマート農業の現状と将来展望」によると、2020年の農業クラウドサービスの市場規模は、2015年比7.5倍の350億円になると分析されており、こちらもスマート農業の進展を後押ししています。
このように、スマート農業の実現に必要となるテクノロジーが普及レベルに入った結果、スマート農業の実現を目指すサービス開発のハードルは下がっており、ビジネスチャンスを見込む企業から注目を集めているのです。

スマート農業が注目される背景③ 政府もスマート農業を支援

こうした背景をふまえ、政府もスマート農業の支援に本腰を入れ始めました。
2019年度、農林水産省の主導のもと「スマート農業加速化実証プロジェクト」が進められます。2025年までに、ほぼすべての農業の担い手がデータを活用した農業を実践することを政策目標に、現在の技術レベルで実現可能なスマート農業の形を、実際に生産現場に持ち込んで実証し、活動記録を蓄積しようという取り組みです。
2018年度にも、「スマート農業技術の開発・実証プロジェクト」として、数十億円規模の予算が確保されており、「スマート農業」を銘打った政策としては2年連続で予算が配分されることになりました。

スマート農業におけるIoT活用案

IoTやロボット技術の活用による「スマート化」は、次のようなステップを踏んで進展すると考えられています。

  • レベル1:データ収集・蓄積
  • レベル2:データの分析・予測
  • レベル3:データにもとづく制御

農業のスマート化において、京セラのIoTユニットがどのように活用できるか、具体的に見ていきましょう。

レベル1:データ収集・蓄積

仕組み
温度や湿度、日照時間などの環境情報を収集するセンサーやカメラ、通信モジュールなどを搭載したIoT機器を圃場(ほじょう)に設置し、あらゆるデータをクラウドのデータベースに常時・自動的に集積する
できるようになること
・計測・収集に手間がかかっていたり、そもそも計測が難しかったりしたデータを、手間をかけずに、24時間365日集められるようになる
・集積したデータと、作物の生育状況や病害の発生状況を照らして分析できるようになるので、PDCAが正確に、はやくまわせるようになる
・品質や収穫効率を上げやすくなる

京セラのIoTユニット活用案:圃場モニタリングシステム

課題
農業の現場では、気温や湿度をはじめとする環境的条件が、家畜や作物にどのような影響を与えるか分析し、データにもとづいて適切な対応をとっていくことは欠かせない取り組みです。しかし、そういった環境情報を計測する作業は、単純作業であるにもかかわらず、大きなマンパワーを要します。また、人が計測作業をしなければならない以上、24時間365日、休みなくデータを収集することができないという課題がありました。
解決案
畑やビニールハウス内に支柱を設置し、京セラのIoTユニットを固定します。京セラのIoTユニットには、温度、湿度、気圧、照度、加速度、角速度(ジャイロ)、地磁気の各センサーと電池、GPS、LPWA LTE Cat.M1対応の通信モジュールが標準搭載されており、単体で利用可能なので、設置するだけで、温度、湿度、気圧、照度の4つの環境データが自動的に集積されるようになります。
対応しているIoTデータの分析プラットフォーム「miotinc」と連携すれば、ダッシュボードから収集したデータを確認できるようになります。生育状況や病害の発生状況とmiotincから出力したデータを重ねて分析することで、病害が発生しやすくなる気象条件や、収穫効率や品質がもっとも高くなる気温・湿度を把握することもできるでしょう。
温度や湿度など、データの収集を省力化し、より生産性に寄与するデータの分析に注力することができるようになります。

また、他のシステムと連携させたり、IoTユニットをモデムとして利用し各種機器の情報をお客様のサーバーにつなげたりすることで、以下のような機能を持たせることもできます。
・設定した数値から異常を検知するとメールやアプリで通知
・モーションセンサーや赤外線機能による盗難や鳥害獣被害防止

レベル2:データの分析・予測

仕組み
IoT機器で集積したビッグデータを、AIなどを用いて自動的に分析・予測し、分析結果や予測結果を、スマートフォンアプリをはじめとするクラウド型プラットフォームで表示したり、アラートを発したりする
できるようになること
・収穫量の予測や病害発生リスクなどをプラットフォーム側で算出し、前もって対策や準備を講じるよう促すことができる
・事前に何らかのトリガーを設定しておき、条件に合致するデータを計測したり、リスクが高まっていると判断したりすると、アラートを出すよう設定できる
・プラットフォームを利用している膨大な数のユーザーからデータが集まるため、レベル1の例より早く、確度の高い分析や予測ができる
・より品質や収穫効率を上げやすくなる

京セラのIoTユニットの活用案:農業支援SaaS

課題
就農して間もない新規参入者の場合、そもそも過去のデータ蓄積が無いため、分析しPDCAをまわすための判断材料となるデータがありません。データをある程度集積するまでの間は、右も左もわからないまま勘を頼りに試行錯誤するほかなく、そういった現状が新規就農から収益化までのリードタイムをのばしてしまっています。
また、ある程度データ蓄積ができたとしても、どう分析し、どんな対応策をとればよいか分からないというケースもあり、特に経験が浅い場合は、データだけあっても意味がないという課題があります。
解決案
農業初心者でも高品質な作物を効率的に生産できるよう、適切な温度や湿度、肥料の量とタイミング、病害の発生状況と対応策を提案するSaaS(Service as a Service:サーバー上で稼働するソフトウェアをユーザーが利用する仕組み)を開発することができます。
SaaSの場合、同じプラットフォームで複数のユーザーにサービスを提供することができるので、利用者全員から集積されたビッグデータを活用して、よりダイナミックな予測や分析ができるようになります。
一方で、各ユーザーの圃場に設置したIoTユニットから、ユーザーごとに個別のデータも集めることになるので、「こういう状況であれば、こういう対応をするともっとも収穫率が上がる」「こういう温度・湿度条件が続いているのであれば、このくらいの量の水を与えるともっとも糖度が高くなる」など、個別の状況にあわせて、ビッグデータにもとづくベストソリューションを提案することができます。
その結果、たとえ経験ゼロの新規就農者であっても、ベテラン生産者と同じ品質の作物を、同じ効率で生産できるようになる可能性があります。

レベル3:データをもとにシステムや設備を自動制御

仕組み
IoT機器で集積したビッグデータを、AIなどを用いて自動的に分析・予測し、それらの結果にもとづき、自動的に機械や設備を制御する
できるようになること
・収穫量の予測や病害発生リスクなどをプラットフォーム側で算出し、前もって対策や準備を講じるよう促すことができる
・事前に何らかのトリガーを設定しておき、条件に合致するデータを計測したり、リスクが高まっていると判断したりすると、アラートを出すよう設定できる
・機械や設備の遠隔作業により、現場に行く必要がなくなる(PCやタブレット端末を通して作業の進捗を監督するだけでよくなる)

京セラのIoTユニット活用案:灌水・施肥・農薬散布の自動化システム

課題
現在の日本の農業は、従事者の高齢化と後継者不足が大きな課題となっています(詳細は「スマート農業が注目される背景① 日本の農業が抱える3つの課題」の項を参照)。
高齢化によるパフォーマンス低下と、後継者不在による人手不足などが重なった結果、知識も経験も販路も揃っていて、ビジネスとして拡大できるチャンスがあるのに、マンパワーが足りず生産を続けられない、拡大できない、という事業者が増えつつあります。
継続的に発生する作業である水や肥料の供給は、作付けや収穫などの作業と比べ作業頻度が高いため、特に複数の圃場を管理している事業者の場合、非常に負担が大きいという課題があります。
解決案
ビッグデータを分析し水や肥料の供給を最適にコントロールするシステムを構築して育成管理を行います。
給水用チューブ、液肥タンク、自動開閉弁をコントロールするクラウドAIプラットフォームを構築します。IoTユニットからの計測情報とユーザーの入力情報、監視カメラからの画像データなどを収集・蓄積して得られたビッグデータを分析して、最も高品質に、効率よく作物が育成するよう、IoTユニットを通じて水や肥料の供給をコントロールします。
水や肥料の供給開始、停止を自動で行うことで、人の手で行う作業は点検と補充のみとなり、作物の生産に必要な人的コストを大幅に削減することができます。
また、カメラや農薬散布用ドローンと組み合わせることで、生育状況のモニタリングや農薬散布を自動化する仕組みを加えることなども可能です。

京セラのIoTユニットが開くスマート農業の未来

日本の農業は今、解決せねばならない数多くの課題に直面しています。しかし、テクノロジーを適切に活用していくことができれば、やがて解決できる日が来るはずです。
そして、その課題解決に欠かせない役割を果たしているのが、IoT機器であり、農業以外の領域でも活用方法が模索されているテクノロジーでもあります。
中でも、京セラは、独自のセラミック技術を応用することで、通信モジュールの超小型化・軽量化に成功。コンパクトなボディで長時間稼働が可能なIoTユニットを開発しました。
京セラのIoTユニットで、スマート農業の未来を切り開いていきましょう。

IoT活用コラム

IoT通信機器・IoT通信モジュール
TOPへ戻る