IoTを用いた「通知」ソリューションの活用例

    センサーなどで収集したデータが異常を検知した際、「通知」が迅速かつ正しく行われるかは、製品の品質を左右します。また、手軽な通知が可能になれば、子供の防犯対策や高齢者の安否確認など、幅広いユーザーが使いやすくなります。そこで本記事では、IoTを活用した「通知」について、その活用方法を解説していきます。

    2019年10月 マイナビ掲載記事より転載

    IoTにおける通知の重要性

    IoTで重要なことは、「集められたデータをどのように活かすか」です。データを収集して、分析を行い、そこから次のアクションを見いだすことによって、データドリブンが実践できるのです。

    ただし、アクションの中には、じっくりと分析を行って原因を探るよりも、手軽さやスピードを優先する方が大きなメリットを生み出すものもあります。

    例えば、ネット通販などのサービスにある、日用品をボタン一つでリピート注文できるサービスなどは、ユーザーに「簡単に注文できる」というメリットを与えます。
    また、手軽かつシンプルな通知が可能になれば、子供の防犯対策や高齢者の安否確認など、幅広いユーザーに「利用が広がる」というメリットもあります。
    また緊急性の高い、例えば鋳造工場において機械の異常な発熱を検知した時などは、「安全確保」のためにもスピードが最優先となります。

    そして、上記のようなアクションを「迅速」かつ「手軽」に実現できる手段として注目を集めているのが「通知型IoT」なのです。

    通知はもっとも身近なIoT活用の手段

    IoTと聞くと、最先端の製造工場などで利用されている最先端の技術というイメージが強いかもしれません。ですが、特に通知型のIoTは、身近な生活の中での活用が見込まれている技術でもあるのです。

    具体的には、前述したような子どもの見守りシステムや、高齢者の安否確認を通知するシステムなどがあります。現在の社会情勢を鑑みるに、今後これらのシステムに対する需要は確実に高まってくるものと考えられています。

    近年のIoT機器は、より小型化が進み、操作や価格などについても、個人でも入手が可能なくらいにお手軽なものになってきています。IoTによって生活が進化する時代が、目の前まで迫ってきているのです。

    できるだけシンプルな操作性が肝

    使用する目的やユーザー層を考えると。通知の操作はシンプルでなければなりません。「どのように操作すればいいか」を考えるのは、意外とストレスになるものです。そして人は、ストレスがかかることは敬遠しがちになります。そうなれば、せっかく導入した通知システムも使われなくなってしまいます。

    何の説明もなく、一目で「どのような操作をすればいいか」がわかるようにするためには、見た目のデザインや操作は、できる限りシンプルであるべきです。シンプルであればあるほど、操作にストレスがかからないので利用してもらえるようになります。また、操作がシンプルであれば、幼児から高齢者まで、扱えるようになります。それがIoT利用の敷居を下げ、様々なサービスへの利活用が進むことにつながるのです。

    機器のサイズも重要なポイントです。通知型のIoT機器は、その利用目的を考えると、常に手元にある必要があります。持ち歩く方法に悩むようなサイズや重量では、そのような状況を維持するのは難しいでしょう。できれば、ポケットに入れて持ち運べるサイズであることが理想です。

    さらに、インターネットを介した通信であれば、通知の手段や送り先についても、複数を選択することが可能です。通知を見落とす可能性も減るので、より安全性が高まることでしょう。

    通知型IoTソリューションの活用例

    これまで、「通知」という手段に限って言えば、そのための手段はいくつかありました。これらがインターネットと繋がると、さらに利便性が広がり、様々な分野に応用ができるようになります。

    まず、インターネットに接続できれば、距離の壁や通知手段の壁がなくなります。インターネットが接続できる環境であれば、世界中にでもリアルタイムで通知が送れます。通知手段も、メール、プッシュ通知、SMS、音声通話など、多種多様な選択肢があります。また、複数の通信手段を、複数の人向けに発信することもできます。仕組みは非常にシンプルで、設定のカスタマイズも容易であるため、様々な用途への広がりが期待されています。

    では、具体的な通知型のIoTソリューションの活用例についていくつか紹介しましょう。近年、この通知型のソソリューションで特に注目されているものは、eコマースなどで利用されるリピート注文、子供や高齢者の安否確認、機器や装置の遠隔操作などがあります。

    1. ①リピート注文

      毎週のように発注する消耗品をIoT化したボタンに設定。ボタンを押すだけで発注が完了する仕組みです。ユーザー側は、どこからでも注文ができる上、通知手段としてメールなどを選択すれば、eコマースに限らず、飲食店の出前やなじみのコーヒーショップなどへの注文にも応用ができます。わざわざPCやスマートフォンを立ち上げて注文先のWebサイトにログインする手間が省けるというメリットがあります。

    2. ②子供の防犯対策や高齢者の安否確認

      ボタンで操作できるIoTであれば、スマートフォンを持たない小さな子供や機械を使い慣れない高齢者でも簡単に扱うことができます。そのため、子供の防犯用アイテムや高齢者向けの見守り端末としても注目を集めています。広いエリアをカバーした携帯キャリアのネットワークを利用できれば、遠方に住む家族との緊急連絡手段としても使用できます。

    3. ③機器や装置の遠隔操作

      近年では、工場などで機械の操作は遠隔で行われているケースも多く、その場にすぐに向かうことが難しい場合もあります。このような時、ボタン一つで機械を止めることができれば、緊急時にも素早く対応ができます。ボタンから送られる通知はインターネットを介したものなので、簡単な設定をシステムに追加すれば、それだけで機械の緊急停止ボタンとして利用することが可能となります。

    日本初の製品化。京セラの 「LTE-Mボタン」

    今回紹介した通知型IoTソリューションに最適とも言える製品が、京セラの開発した「LTE-Mボタン」です。

    京セラは、2018年7月4日に、LPWA「LTE-M(※1)」とAmazon Web Services「AWS IoT 1-Click(※2)」サービスに対応した「LTE-Mボタン」を製品化しました。これは、「LTE -M」および「AWS IoT 1-Click」サービスに対応したボタンデバイスとしては日本で初めての製品となります。この「LTE-Mボタン」の機能はボタンが押されたという情報(シングル、ダブル、長押し)をAWSに送るというシンプルなもの。AWS Lambdaからメール、SMS、各種コミュニケーションツールなどへと手軽に通知を送ることができます。

    「LTE-Mボタン」の利用に関しては面倒な設定は一切不要。操作もシンプルなので初めて手にした人でもすぐに利用ができます。小型で電池も長時間保つので、鞄の中はもちろんポケットに入れて持ち運ぶことも可能です。

    なお、「LTE-Mボタン」は現在、株式会社ソラコムから「LTE-M Button powered by AWS」「LTE-M Button for Enterprise」「LTE-M Button Plus」として発売中です。
    インタビュー「株式会社ソラコム」

    <注釈>
    ※1 3GPPがリリース13で規定したLPWA用無線通信規格。 通信速度などが異なるLTE-M(Cat.M1)とNB-IoT(Cat.NB1)の2種類が規格化され、IoTの多様な用途に対応できる。
    ※2 「AWS IoT 1-Click」は、Amazon Web Servicesが提供する、アクションを実行するAWS Lambda関数をシンプルなデバイスでトリガーできるようにするサービスです。 サポート対象のデバイスを利用することで、AWS IoT 1-Clickの使用を簡単に開始できる。

    「LTE-Mボタン」が導く身近なIoTの世界

    「LTE-Mボタン」はクラウド上で機能や連携を図ることが可能なため、様々なシステムと組み合わせることが容易です。

    「LTE-Mボタンの開発では、シンプルな端末と割り切ったからこそ、高い“柔軟性”と“合理性”を実現することができました。これをひとつの経験として活かし、今後もスピード感をもったIoT システムの開発に努めていきたいと思います」(京セラ開発担当)

    現在、LTE-Mボタンには様々な分野の事業者から、問い合わせが届いているそうです。そして中には、実用化に向けたプロジェクトもいくつか進行中とのこと。近い将来、LTE-Mボタンを用いたサービスが登場しIoTを身近に感じられる日が来るかもしれません。



    ※LTEは、ETSIの商標です。
    ※その他社名および商品名は、それぞれ各社の登録商標または商標です。

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