株式会社ソラコム様

新しいサービスのために、インパクトある製品を。
必要な通信機能を実装しながら、
期待を上回るサイズや性能を実現。

業種:通信
ニーズ:小型, 通信方式, AWS対応
製品:LTE-Mボタン

    【背景・課題・ニーズ】
  • ● ソラコムでは、新しいLTE-M規格での通信サービス提供にあたり、対応デバイスを必要としていた。
  • ●自社では設計・製造できないため、高い技術力や製造クオリティを持つメーカーを探していた。
    【施策・成果】
  • ● ソラコムが当初から求めていたコンパクトさや性能を、大幅にクリアするデバイスを京セラが開発。
  • ●利用シーンも想定した使いやすい仕様で、今後の用途拡大に期待が膨らむ。

IoT向けのワイヤレス通信コネクティビティとプラットフォームを提供するソラコムが、新たに取り組みを開始したのが「LTE Cat.M1(LTE-M)*1」を利用したサービスです。これに対応するデバイスとして、2018年10月に発売された「SORACOM LTE-M Button powered by AWS (以下、SORACOM LTE-M Button)*2」のベースとなっている製品が、京セラの「LTE-Mボタン」です。商品化に至るまでの課題や開発の経緯、そして完成した製品に対する期待や展望などまで、ソラコムの担当者様にお聞きしました。
*1 IoT向け無線ネットワークLPWA(Low Power Wide Area)の通信規格
*2 「Amazon Web Service」の略。「AWS IoT 1-Click」サービスに対応したボタンデバイスとして日本初の製品。

SORACOM LTE-M Button powered by AWS

新サービスの利用拡大につながるデバイスが欲しい

ソラコムでは、LPWAの通信規格「LTE Cat.M1(LTE-M)」を利用するサービスを企画する中、新たなテクノロジーを利用してもらうためには、何かしらその参考となるようなデバイスやサービスを形にしてお客様へ提示する必要があると考えていました。そうしなければ、お客様もどう利用してよいものか悩んでしまうのではないかと思ったからです。

そこで目を付けたのがAWS(Amazon Web Service)から販売されていたボタンデバイスです。この製品がWi-Fiでネットワーク接続するところをLTE-M接続にすることで、ルーターなどが不要なより利便性の高いものにできると考えたわけです。アメリカではLTE-Mによるボタンデバイスを他社が先行して販売しており、そのマーケットが存在していたことから、日本でも一定の需要があると予測していました。

ソラコムが京セラに関心を持つ
きっかけとなった「IoT ユニット」

とはいえ、このようなデバイスをどうやって調達するか。LTE-M 対応の機器としてはまだ通信モジュールが出始めたばかりであり、
これを組み込んで自ら製品を開発しなければなりません。そのような中で、京セラはLTE-M のモジュールとして「IoT ユニット」という製品をいち早く発表していました。これを知ったソラコムがアプローチしたことから、今回のプロジェクトがスタートすることになります。

モジュールやコンシューマー製品のノウハウに期待して京セラへ

ソラコム 事業開発マネージャー
高橋 範 氏

もしソラコムが自社でデバイスを最初から開発したら、その負担はとても大きなものになったはずです。そこを京セラに委ねたのは、IoT ユニットがあったことはもちろん、モジュール開発における長い歴史が京セラにはあったからでした。ソラコムで今回のプロジェクトの中心的な役割を担った高橋氏は「車載を中心に、すごく信頼性の高い製品を造られているところが、ハードウェアの供給パートナーとして期待できた」と話します。

また、基板や通信モジュールといったハード面におけるノウハウよりも、コンシューマー製品に近いものをソラコムでは出した経験がないことを危惧。その点で、スマートフォンなどのコンシューマーデバイスにおける京セラの豊富な実績も魅力でした。

日本のユーザーは製造クオリティに対する要求水準が高く、接合部やステッカーの微妙なズレ、梱包の傷みといったことまでよく見ています。比較的多くの方たちの目に触れるデバイスとなることが予想されたので、高い製造クオリティも求めて京セラにアプローチしたわけです。造りが荒いチープな製品では、ソラコムブランドのイメージダウンにもつながりかねません。機能だけでなくパッケージとしての完成度にもこだわっています。

徹底して追い込む、京セラの開発姿勢に感心

また、今回ボタンデバイスを商品化する上で、もう一つ京セラに大きな期待を寄せたのが“より小さくつくる”ことでした。実際に仕上がったSORACOM LTE-M Button を見ながら、「LTE-M のモジュールでここまで小さいものは、いまグローバルに見てもあまりない」と高橋氏は言います。このコンパクトさは高橋氏の当初の予想を超えるものとなり、「第一弾だから、ほどほどで」と考えることなく、最初から追い込んで小型化した京セラの姿勢に驚いています。

このサイズを実現できた大きな理由が、京セラの1円玉サイズの小型通信モジュール 「KYW01」の開発資産。そして、この周辺回路も必要最低限の設計としたそうです。京セラの製品開発担当者も「日本市場での要求にあわせて小型化にはこだわり、企画当初から手のひらサイズの製品を提案しました」と言います。

さらに、アメリカで発売されているボタンデバイスは、防水構造である代わりに電池を交換することができません。ソラコムは、日本では製品本体を「使い捨て」とすることに抵抗感があるのではないか。そして、利用者のリテラシーやシーンも考え、どこでも入手できる乾電池式が使いやすいのではないかと考えました。このニーズにも、LTE-M ボタンは応えられるものになっています。

しかし、その開発には課題も多くありました。例えば携帯電話などのバッテリーとは異なり、乾電池は最後まで電力を引き出すことが難しい。このため、回路に工夫を凝らし、電池切れギリギリまで安定した発信ができるようにしています。また、消費電力を抑えて電池の寿命を伸ばせるように、ハード/ソフトの両面で工夫しています。高橋氏は「サイズや機能だけでなく、価格やコスト感でも私たちのニーズに合う、全体にとてもいいバランスの商品になっている」と言われます。

想像以上のクオリティや、開発のスピード感にも驚き

ソラコムが期待した京セラのコンシューマーデバイスにおけるノウハウが、活かされている部分は他にもあります。それがストラップホールです。「すごく京セラらしいと思いました。海外メーカーともお付き合いがありますが、こういった発想はなかなか無い」と高橋氏。また、この試作品段階から外装も含めてクオリティが高く、ソラコムの期待を超えた製品になっていたそうです。

そして、縁をラウンド形状にして握り心地を高めた本体デザインや、心地いいクリック感のあるボタン設計などについても、「手に馴染みますし、押しやすい。プロダクトとしてのエクスペリエンスデザインの重要性を再認識しました」と高橋氏は語り、ソラコムにとって学ぶことが多かったと振り返ります。

さらに言えば、日本の大手メーカーなら商品開発のクオリティはある程度期待できることですが、それにくわえて、スピード感のある京セラの製品開発力にも驚いたそうです。「これまで国内外のメーカーとお付き合いさせていただいていますが、京セラの対応の早さが期待を超えるだけでなく、内容も適切」予想以上だったようです。

広がる用途、仕事や暮らしをいっそう便利にする可能性に期待

LTE-M ボタンはデバイスとして完成しているため、お客様はビジネスロジックやサーバー側の処理をするだけで使い始めることができ、IoT 利用の敷居を大幅に下げるものになりました。ボタンを押すだけという操作のシンプルさからも、さまざまな用途やシーンでの活用が期待されます。

今後の用途としては「消耗品の追加発注」や「タクシーなどの呼び出し」、「回収・修理依頼」あるいは「安否確認」、さらには何らかの機器や装置を「遠隔操作」するボタンなどが予想され、実際、さまざまな分野における事業者からの問い合わせが来ています(2018 年12 月現在)。普段の生活の中で、何気なく利用されている姿が見られる日は、近いかもしれません。

京セラ担当者より

通信技術部 プロダクト4 部 IoT 技術課

このLTE-Mボタンはクラウド上で機能や連携を図ることもあり、いろいろな方法で活用されていくだろうと、大きな期待を持っています。今回のソラコム様とのプロジェクトは、きっと私たちだけでは広げていけないフィールドでの経験ができたと思います。学びの多い事例となりました。

そして開発では、シンプルな端末と割り切ったからこそ、高い“柔軟性”と“合理性”を実現することができました。これをひとつの経験として活かし、今後もスピード感をもったIoT システムの開発に努めていきたいと思います。

お客様の概要

社名 株式会社ソラコム
本社所在地 東京都世田谷区玉川四丁目5 番6 号 尾嶋ビル3F
事業内容 株式会社ソラコムが提供するIoT 通信プラットフォーム「SORACOM」は、あらゆるモノをつなぐワイヤレス通信コネクティビティ「SORACOM Air」と、「つながる」システムを構築する際に必要となる認証管理、クラウド連携、セキュリティ強化、データ蓄積、ダッシュ−ボード作成などのサービスを提供します。IoT テクノロジーを使いやすく提供することで、お客様のIoT 活用とビジネスイノベーションをサポートします。
WEB サイト https://soracom.jp/
※LTE は、ETSI の商標です。
※Amazon Web Services、アマゾン ウェブ サービス、AWS、AWS IoT 1-Click、AWS Lambda は、米国その他の諸国における、Amazon.com, Inc.またはその関連会社の商標です。
※その他の社名および商品名は、それぞれ各社の登録商標または商標です。
導入事例TOPへ戻る