株式会社OND様

確かな測位を、長時間にわたり可能に。
山中の安全と、運営の効率化を実現。

業種:インターネットサービス
ニーズ:測位, 小型・軽量, ビーコン対応
製品:ビーコン対応GPSトラッカー

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    【背景・課題・ニーズ】
  • ● 山の中を走る「トレイルランニング」では、選手の安全確保のために、位置確認が必須。
  • ● GPSによる測位を考えたが、測位の精度や長時間バッテリーに応える端末がなかった。
    【施策・成果】
  • ● 京セラのGPSトラッカーを見つけ、独自の計測・運用システムを構築。
  • ● 測位精度やバッテリーの課題解決はもちろん、選手や運営スタッフの負担まで大幅軽減。

近年、人気が高まっているアウトドアスポーツ「トレイルランニング」。登山道をマラソンのように走る競技です。その魅力に取りつかれた一人が、今回お話をお聞きした株式会社ONDの近藤淳也様。個人で走ることからスタートし、今では大会の開催にも携わられています。そして、「どこを走ったら良いか分からない」というトレイルランナーたちの声に応え、ユーザー投稿型のコース共有サービス「IBUKI」も立ち上げられました。

このサービスの中で、大会の際に現場で使われているのが「IBUKI GPS」であり、京セラのIoTデバイス「 ビーコン対応GPSトラッカー」がベースユニットになっています。IBUKI GPSがレースの中で、選手の安全確保やスタッフの活動支援にどのような役割を果たしているのか。そして、どうしてGPSトラッカーを採用されたのか。ご本人の経験も交えてお聞きしました。

IBUKI サイト
IBUKI サイト

密かな人気スポーツ「トレイルランニング」には危険も

滋賀一周ラウンドトレイルの様子 写真中央は大会立上げメンバーの一人でもある山岳アスリートの丹羽薫さん
滋賀一周トレイルの様子
写真中央は大会立上げメンバーの一人でもある山岳アスリートの丹羽薫さん

国土の3分の2が山で、四季の変化が豊かな日本には、魅力的な登山道(=トレイル)がたくさんあります。ここを走る「トレイルランニング」の人気は高く、国内ではレースが年間300〜400大会ほど開催され(新型コロナウイルス感染拡大前)、出場者は国内で約20万人、潜在的な競技人口なら70万人ほどいると言われています。競技性よりも、変化に富んだ山道のコースを、景色を楽しんだり、補食をとったりしながら走ることが魅力のようです。

とはいえ、山の中を基本的には一人で走るというその特殊性から、当然、軽い気持ちで臨むことはできません。ランニングのような軽装ではなく、防寒具やライト、食料などを持って走るのが鉄則です。そして何より、アクシデントに遭うリスクは高く、最悪「遭難」という事態も想定しなければなりません。しかし、山中ではランナーが道に迷ったり、トラブルが発生してもそれを察知しにくいという問題があります。実際、レース中に選手が遭難し、捜索が行われたものの未だ発見できていないという事故が日本でも起きています。

安全のためにGPSを利用して選手の位置を把握

遭難という最悪の事態を回避するために近藤氏が着目したのは、GPS端末を選手が持って走る方法でした。端末から定期的に位置情報を発信し、主催者側で常に把握しようというものです。このため、近藤氏はいくつかのGPS端末の利用を検討。自身が関わった2019年の「滋賀一周ラウンドトレイル」では、ある端末を実際に試用されました。しかし、GPSの有用性は確認できたものの、端末の実用性で課題が残る結果となります。具体的には「バッテリーの持続時間」と「測位の精度」。安全性の向上のためには、より頻繁に位置情報を発信すべきですが、その頻度が多いほどバッテリーは消費されます。実際、10分に1回の送信設定で臨んだこの滋賀の大会では、夜まで持ちませんでした。

株式会社OND 近藤淳也 代表取締役社長
株式会社OND 近藤淳也 代表取締役社長

また、測位精度の面では、端末からの発信が届かないことがありました。10分に1回の送信を1回ロストするだけで20分の空白ができる。もしこの間に道に迷い、20分も気づかずにいると、かなりコースを外れてしまいます。実際、そのような例が起きてしまったそうです。これを恐れて送信の頻度を増やすと、バッテリー切れの心配が増すというジレンマ。コスト面でも、もう少しリーズナブルな価格の端末が欲しいという思いから、他に何かよい通信端末がないかネットで探していたところ、見つけたのが京セラの「 GPSマルチユニット」でした。

測位精度や長時間バッテリーがポイント

まずは3台購入され、初めに確認したのがGPSの精度でした。具体的には「滋賀一周ラウンドトレイル」で選手が尾根を辿る中、実際にどれくらいのエリアをカバーできるのか。半分以下では、さすがにどれだけ更新間隔が短くても利用できません。大会前、コースを試走に行く選手に所持してもらい、何度か試してみると、高い割合で測定できることが分かりました。

そして、重要だったのがバッテリーの持続時間。通常は朝コースに出て、太陽が出ている時間帯を走るため、まずは8時間くらいが目安です。日照時間の長い季節であれば12時間くらいもつと安心です。GPSマルチユニットはバッテリーが一日切れることなく、実際にレースで導入できる目途が立ちました。

最初に試用されたGPSマルチユニット
最初に試用されたGPSマルチユニット
滋賀一周ラウンドトレイルに挑戦された 丹羽薫さん(左)田口穣さん(右)
滋賀一周トレイルに挑戦された
丹羽薫さん(左)田口穣さん(右)

導入を検討するにあたって、京セラのアドバイスやサポートに大変助けられたという近藤氏。技術的な質問に対する的確な回答で、とてもスムーズに導入が進んだとのこと。特に、端末の性能や動作原理、他社との比較等について、技術的根拠とともに非常に論理的な解説があったことに高い信頼を寄せてくださっています。「いつも納得の上で、選択や意思決定ができた」そうです。

位置情報の把握には、スマートフォンのアプリを利用する手段もあります。しかし、選手が所有する端末は機種がバラバラで稼働に不具合が出ることも多く、大会で選手全員の利用を促すには難しい面があります。また、スマートフォンは地図を見たり、遭難した人と連絡を取り合う大事な手段であるため、位置情報の発信でバッテリーを消耗させるのは、逆にリスクとなりかねません。測位のための手段は、スマートフォンと切り離す方が良いと近藤氏はお考えです。

さらに「コンパクト」であることも大きな利点に挙げられます。リュックの肩紐に括り付けて携帯することができ、そこに付けておけば電波を遮る心配もありません。近藤氏も「テストで装着して走りましたが、本当に軽くて邪魔にならない」「選手の方々も、装着したことを忘れて走っているようでした」と語られます。

遭難防止で確かな成果、ビーコン対応や防水・防塵も◎

IBUKI GPS
IBUKI GPS

その後、京セラから新型のGPS端末「ビーコン対応GPSトラッカー」が発売されたことを知り、この端末をベースに「IBUKI GPS」を作って、位置情報が共有できるシステムを開発したのが「IBUKI LIVE」です。これを使って開催したレースでは、選手の安全確保で大きな成果を上げ、実際に遭難事故を防げたケースもありました。あるランナーがコースを外れたことをいち早く察知し、携帯電話でコンタクトを取りながら正規ルートへ向けて誘導したものの上手くいかず、IBUKI GPSの位置情報を見ながらスタッフが捜索に行き、保護することができたということです。

このGPSトラッカーを採用した理由として、もう一つ大きな要素はビーコン対応であること。以前の大会では、位置情報を測定するGPS端末の他に、選手のタイムを計測する目的でBluetooth®式の計測チップを選手に持って走ってもらっていました。もちろん選手は端末を2つも持って走りたくはありませんし、運営側も計測システムを2種類も稼働させなければなりません。「GPS端末がビーコンの情報も計測してくれたらな」と近藤氏が考えていたところに、まさにそれが発売されたわけです。計測の精度も高く、近藤氏のデータでビーコン欠測率は1%未満と優秀な結果を残しています。防水・防塵仕様なのも、山で使うには最適だということです。

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もうIBUKI GPSの無い大会は考えられない

サイト上でも、選手の3分置きの位置を閲覧できる。
サイト上でも、選手やサポートスタッフの3分おきの位置を閲覧できる。

このように、選手の安全確保や負担の軽減を実現したIBUKI GPSですが、大会運営側、とくにサポートスタッフにとっても大きなメリットがあるシステムでした。レースでは、サポートスタッフがコースを先回りし、途中で選手のタイムを計測したり、食べ物を提供します。そのため、走者がいまどこを走っているのかを、できるだけ正確に把握したい。しかし、以前は選手の正確な位置が分からず、予測で移動し、選手が通過してしまわないように相当先回りして待機していました。ところが、これだと先回りし過ぎて、かなりの時間を待たされるということもあります。しかも、いつ来るかわからないので、スタッフは走者が通過するまでポイントにずっと張り付いていなければなりません。

IBUKI GPSはサポートスタッフにも好評
IBUKI GPSはサポートスタッフにも好評

IBUKI GPSの導入後は、走者が来るタイミングが正確に分かるようになったため、スタッフは余裕を持って買い出しをしたり、効率的に休憩をとったりできるようになりました。「運営サポートスタッフにとっても革命的なシステムになった」と近藤氏も話されます。スタッフが携帯することで、スタッフ同士が現在地を確認し合うのにも役立っているそうです。

今や、レース運営者やランナーからは「IBUKIが無い運営は考えられない」「全部の大会でこれを使って欲しい」という感想が聞かれ、運営に関わるボランティアスタッフの方からも「控えめに言っても最高でした」といった声が届いているとか。そしてIBUKI GPSは、レースの開催方法にも影響を与え始めており、IBUKI GPSがあることを前提としたイベントが企画され始めています。IBUKI GPSによって、さらに魅力的で新しいスタイルのレースが、次々と生まれてくることが期待されます。

京セラ担当者より

通信機器事業本部 IoT 営業部 SE 課 山下浩正
通信機器事業本部
IoT 営業部 SE 課 山下浩正

OND様からはイベント開催のたびに詳細なレポートをお送り頂いており、問題があれば次回の開催に向けて改善を図っていこうという強い意欲をお持ちのため、微力ながらお手伝いさせて頂きました。運営側の観点からデバイスの課題を知ることができ、個人的にも非常に勉強になっています。お送り頂いたIBUKIのリンクからは、リモートながら臨場感のあるレース状況を拝見できるため、毎回楽しみにしております。

お客様の概要

社名 株式会社OND
本社所在地 京都府
事業内容 インターネットサービスの企画・開発・運営・販売
WEB サイト https://ond-inc.com/
OND logo

近藤淳也様:プロフィール

1975年生まれ。三重県出身。京都大学理学部卒業。カメラマンなどを経て、2001年に有限会社はてな(現株式会社はてな)を設立。「はてなブログ」等を提供。2016年東証マザーズ上場。2017年、株式会社ONDを設立。「IBUKI」や「物件ファン」、「UNKNOWN KYOTO」の運営を手掛ける。NPO法人滋賀一周トレイル代表理事。

※Bluetooth®ワードマークおよびロゴは、Bluetooth SIG,Inc.が所有する登録商標であり、京セラ株式会社は、これら商標を使用する許可を受けています。
※その他の社名および商品名は、それぞれ各社の登録商標または商標です。

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