「挑戦し、改善を続けよ」。
指揮官が植え付けた哲学と、京都サンガF.C.の現在地

選手を指導する曺貴裁監督の写真

2021年の就任当時と比べ、今の京都サンガF.C.は監督の目にどう映っていますか?

毎年、選手やスタッフは入れ替わるので同じメンバーで続けているわけではありませんが、自分たちのサッカーがどういうものなのか、それに対してお客さんがどんなリアクションをしてくださるのか、勝つために何が必要なのかという部分は、確実に積み上がってきました。
最初の頃は現場中心で取り組んでいる感覚がありましたが、5年という時間の中で、クラブとして、またサポーターを含めたファンの皆さんとの一体感も深まりました。「サンガ」という名前だけでなく、どんなサッカーをするクラブなのかという認知も広がってきたと思います。

就任時から現在までを振り返ると「当たり前の基準」はどのように変化しましたか?

何をもって「当たり前」とするかは難しいと思いますが、直線的にゴールに向かうために必要なことや、失点を防ぐために必要な基準は年々高まっているという印象があります。サンガがそういうサッカーをすることによって、サンガを通じたサッカーのイメージは、5年前より市民の皆さんに根付いてきていると感じます。

基準が上がるとプレッシャーもあると思いますが、どのように向き合われているのでしょうか。

プレッシャーはありますが、どんな仕事でもプレッシャーがないと成長はないと思っています。プレッシャーを楽しむほどの余裕はありませんが、きちんと向き合うようにはしています。自分にできることしかできませんから、等身大の力を精一杯出すことを意識しています。

昨シーズンまでの戦いを経て、今季、チームとして「ここだけはブレずに貫きたい」と考えている部分はどこでしょうか?

前線からボールを取りに行き、相手陣地でプレーすることです。そのための練習を積み重ねてきました。年数が経ったからといって変えてしまえば、これまでの積み上げの意味がなくなります。
ただ、残留争いをしていたところから、去年、優勝争いをできる位置にまで来て、新たなハードルができたと思っています。現状維持は堕落につながると思っているので、微調整を加えながらも、目の前の一試合一試合に、全力で向き合う姿勢は変えずにやっていくつもりです。

結果が求められるプロの世界で、意識していることは何ですか。

チャレンジすること、現状に満足しないことは常に意識しています。監督という仕事は勤務時間で区切れるものではないですし、「ここまでやれたからOK」ということもないです。なので、私自身サッカーの勉強は時間があればするようにしていますし、試合も見るようにしています。
監督自身が最後までどう向き合うかがピッチに表れ、選手にも伝わると思っています。チャレンジすることや、目の前の状況を改善するということは、選手に対してもずっと求めていることです。

ピッチで問われるのは「人間力」。
世界へ羽ばたくSAP出身選手たち

インタビューを受ける曺貴裁監督の写真

SAP出身の川﨑颯太選手はドイツへ渡り、サンガでは奥川雅也選手や中野瑠馬選手らが主力としてチームを支えています。彼らSAP出身選手に共通する「強み」や「特徴」はありますか?

立命館の先生方の教育の賜物だと思いますけど、みんな受け答えがしっかりしていて、好青年が多いです。私は選手をいじって面白いことを引き出そうとするタイプなのですが、SAP出身の選手は真面目に受け答えする子が多いですね(笑)。あとは、自分の言葉で話せる選手が多いです。無口で何も言わないというタイプは少ないです。

そうした、自分で考えて発言する力や人間性は、具体的にどのようなプレーの差となって表れるのでしょうか?

同じ技術やフィジカル、戦術があっても、自分で考えて発言する力があるかどうかで大きな差が出ます。それくらい、サッカーは社会性のスポーツです。自分の力だけで解決できない問題を、人と協力しながら解決していくことは、サッカーでも学業でも同じだと思います。それを積極的に取り組めるか、受け身でいるかで大きく変わります。
SAP出身の選手はその訓練ができている印象がありますね。他の人の考えや行動を理解しようとしながら、前に進む力を持っていると思います。

監督が選手を評価する際、技術やフィジカル以外で「この選手は伸びる」と感じる人間性のポイントはどこにありますか?

単なる向上心ではなく、“あくなき”向上心を持っているかです。少しでも自分の役に立ちそうなことがあれば興味を持って聞き、やってみる選手、探究心のある選手は伸びていくと思います。選手たちには向上心をもっと持ってほしいと思う時もありますが、SAP出身の選手は、同年代の中では向上心が高い方だと感じます。

現在は、川﨑颯太選手がドイツに渡り、国際的な舞台で挑戦をされています。海外で活躍するには、どのような力が求められると思いますか。

私も海外にいた期間が長くありますが、海外で活躍するには、「言葉の間違いを恐れず、前に出ること」が大事です。颯太は英語ができるので、語学の面ではアドバンテージがすでにあると思います。
文法が多少間違っていたとしても、自分の言いたいことを伝え、相手の懐に入っていけるような子が、海外でも道を切り拓いていくんだろうなと思います。

京都サンガF.C.のDNAを未来へ。
夢を追う次世代の選手に求めるもの

選手を指導する曺貴裁監督の写真

これからプロを目指すSAPの生徒やアカデミーの選手たちには、どのような気持ちを持って日々を過ごしてほしいですか?

海外でプレーするとか、日本代表になるとか、いろいろな夢を持っていると思いますが、夢は日々の積み重ねの先にあります。今の自分にできること一つひとつを全力で取り組むことが大事です。
「人間は何歳からでも学べる」という言葉が私は好きなんですが、特に若いうちは失敗が許される年代です。また、失敗が後になって役に立つこともあります。日本人はシャイだとよく言われますが、シャイなところを乗り越え、世界にたくましく羽ばたくような人材がたくさん出てきてほしいと思います。

監督自身は、この「SAP」という独自の取り組みを、今後のクラブ発展においてどう評価されていますか?

学業は、系統立てて「どう勉強すれば自分の頭に入っていくのか」を考える訓練でもあります。そういう意味で、学校の勉強がサッカーにつながることは数多くあります。
SAPの制度は、子どもたちにとって自分の能力を伸ばす良い機会だと思っています。楽しみながら取り組むことはもちろんですが、少し嫌だと感じることにも挑戦し、それを自分の力に変えていってほしいです。

SAPの制度に期待することはありますか?

昨年、SAPの式典に参加させていただきましたが、この制度はたくましくエネルギーのある人材を世の中に送り出そうという思いからつくられたのだと認識しています。将来的には、世界に誇れるSAPの制度になってほしいですし、その可能性は十分にあると思っています。ここから未来ある、夢とエネルギーにあふれた選手が数多く生まれることを、心から期待しています。

京都サンガF.C.の未来を担う次世代の選手たちにメッセージをお願いします。

寮生活や学校での勉強からは、サッカーに必要なものだけではなく、人生に必要なものがたくさん学べると思います。全員がプロになれるわけではありませんが、そこでの経験は必ず将来に生きます。うまくいかないことがあっても、後ろ向きにならず、前向きに未来を描いていってほしいです。プロになった選手には、周囲から尊敬される存在でいてほしいと思います。

最後に、ファン・サポーターへ向けてメッセージをお願いします。

サンガは京都に根付いたクラブです。なので、SAPという制度を通じて育った選手がサンガのトップチームで活躍していることは嬉しく思います。チームとしては、さまざまなタイプの選手を集めて束ね、一番上の順位に行くというのが今の目標です。ぜひ一緒に戦い、選手たちを応援していただければ嬉しいです。