脱炭素化、持続可能な社会の未来を担う
再生可能エネルギーとEMS(エネルギー管理システム)
の挑戦

再生可能エネルギーと新たなエネルギー管理システムで、
次世代のために環境を守る

人類が直面している社会課題の1つである、地球の環境問題。CO2排出量の増大に伴う地球温暖化による深刻な事態が懸念されている今、世界各国が持続可能な社会の実現に向けて動いています。
京セラは、まだ世界的に脱炭素化が叫ばれる以前に、いち早く太陽電池の開発に着手、その後、太陽光発電システムなどの再生可能エネルギーの活用拡大を推進してきました。持続的な社会の実現に欠かすことのできない、太陽光や風力などの「再生可能エネルギー」と効率的なエネルギーの管理・制御を行うための「エネルギー管理システム」の技術をさらに高めることで、今後も、脱炭素社会の実現に向けて貢献していきます。
その1つとして、京セラは国内初※の「自己託送」の実証実験を行っています。「自己託送」とは、企業の自社工場などで発電した電力を一般送配電事業者の送電線を利用して、別拠点に供給する制度のこと。この実証実験は、「自己託送」に蓄電池を活用し、安定的な電力供給を実現し、高精度な需給オペレーションにより、系統の負担を軽減する取り組みとして大きな注目を集めています。
京セラでは、2030年度に排出する温室効果ガスを2013年度比の30%削減、再生可能エネルギーの使用量を2013年度比の10倍とする長期環境目標を定め、グループ全体で目標達成に向けた活動を推進しています。
本実証を通し、今後、需要拡大が予測される再生可能エネルギーの「自己託送」による事業モデルの確立を目指すとともに、現在日本で進められている再生可能エネルギーの主力電源化の実現に向けた安定的かつ適切なエネルギー需給管理の構築と脱炭素社会の実現に寄与していきます。
※日本国内で実施している自己託送の実証実験において(2020年1月28日現在 京セラ調べ)
国内初※1、蓄電池を活用した再生可能エネルギー「自己託送」実証実験

野洲市が所有する2,000㎡の敷地に京セラ製太陽光発電システム約150kWを設置し、同システムで発電した再生可能エネルギーを関西電力の送配電網を通して約2km離れた京セラ滋賀野洲工場に供給します。「自己託送」の実証実験では、定置型リチウムイオン蓄電池を活用し、安定的な電力供給による自己託送容量の平滑化と、これまでのVPP(バーチャルパワープラント)関連実証実験等で培った分散蓄電池の制御技術を応用し、発電インバランス※2と需要インバランス※3を低減させた高精度な需給オペレーションにより、系統の負担を軽減する再エネ電力供給を目指します。
また、当発電所に併設する蓄電池は、災害などの広域停電発生時には自立運転し、地域住民への充電サービス等を行うことにより、市の減災対策に活用します。
※1日本国内で実施している自己託送の実証実験において(2020年1月28日現在 京セラ調べ)
※2発電事業者が一般送配電事業者に事前に申請した発電計画と発電実績の誤差
※3需要家と電力小売事業者間の電力契約と消費実績の誤差
再生可能エネルギー普及は「自然との共生」。
事業推進の意外な壁とは
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部責任者経営推進本部
エネルギー事業戦略室
エネルギー事業開発部
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現在、どのようなお仕事をされているのでしょうか。
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簡単に言うと、社会システムを作る仕事です。これまでは、電力の需給バランスを最適化し、安定供給をおこなうための「新しい社会システムづくり」をおこなってきました。2013年に取り組みを始めた「ディマンドレスポンス」が良い例かもしれません。
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ディマンドレスポンスとは?
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送配電事業者や電気小売事業者の要求に応え、指定された時間帯に、指定された電力量の消費を削減した需要家へ、報酬や電気料金の割引を行うことで、系統の安定化および電力調達リスクの低減により電力の安定供給を図る仕組みのことです。この仕組みをうまく機能させるため、家庭や工場等の需要家サイドに設置されている蓄電池を遠隔で制御するシステムを国や電力会社と共に構築してきました。現在では「VPP(バーチャルパワープラント)」として、実証実験をスタートしていますね。
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なるほど。先ほど、新しい社会システムを作る仕事だと仰っていましたが、そこにはどんな難しさがありますか?
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自然のエネルギーを活用する以上、気象状況に左右されてしまう難しさはありますね。例えば、24時間発電を続けられる火力発電に対し、太陽光発電では、晴天だとしても発電できる時間には限りがあります。自然を理解し、自然に寄り添いながら、できるだけ上手くコントロールする方法を考えるという意味で、僕の仕事は「自然との共生」でもあると思っています。
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人類が自然を完全にコントロールすることは不可能なので、発生する事象のデータ分析をベースとしたシステムが重要なんですね。
開発者として、どのようなきっかけでエネルギーの安定供給について興味を持たれるようになったのですか? -
より強く意識するようになったのは、東日本大震災を体験してからですね。地震発生当日、僕は勤務地の用賀から、徒歩で横浜の自宅まで帰ることになったんです。ところが、歩いていくうちに周りからどんどん灯が無くなっていった。多摩川を渡るときは真っ暗でしたし、信号も点灯しないんです。そうすると交差点で事故が発生しちゃうんですが、この状況では救急車も警察も来れない。そのときに気づいたんです。電気が無くなるってことは、こんなに酷いことになるんだって。
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電気が無くなると、当たり前だと感じていた仕組みが止まってしまうことを、身をもって体験したんですね。
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ええ。遠くから電気が運ばれる日常って、危ういんだなと感じました。 僕たちがやっているのは、電気を遠くから運んでくるのではなく、地域で発電してそれを備蓄して使うシステムの構築です。エネルギーを自らのチカラで生み出して、管理し、無駄なく使うことの重要性を理解しているからこそ、その普及を少しでも広げるためのお手伝いをしていきたいと考えています。
再生可能エネルギー主力電源化を見据え、
企業の自給自足システム構築をサポートする

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今後の展望について、ご自身の目標はありますか?
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今は、再生可能エネルギー主力電源化に取り組んでいます。再生可能エネルギーを上手く活用できる仕組みを作るには、自然に寄り添うことが不可欠。自分たちの孫や子孫にまで受け渡しできるような環境づくりをしていきたいですね。
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再生可能エネルギー主力電源化のため、京セラが取り組んでいることはありますか?
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再生可能エネルギーの地産地消の拡大を目的に自己託送の実証実験を進めています。日本では今後、地方創生のためにSDGsやSociety5.0が推進され、コンパクトシティ実現への取り組みが実行されていきます。その中で、自分たちの消費するエネルギーは、自分たちで管理することも求められます。そうなれば、自治体、企業、そして個人も『いつでも どこでも じぶん電気』という考え方で持続可能な社会の実現へ関わりを持つことになり、それぞれの責任で再生可能エネルギーを調達するような仕組みを作ることが必要になる。それを支援していくことが、これからの我々には求められてくるのではないかと思います。
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持続可能な社会の実現に向けて、誰もが当事者になっていくということですね。
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はい。我々の自己託送オペレーションによって、送配電事業者・電気小売事業者に負担をかけずに再生可能エネルギーの自己調達が実現するならば、その技術を自治体や他の企業にも使っていただき、持続可能な社会実現のお手伝いが出来るのではないかと考えています。
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なるほど。持続可能な社会へと続く道を、京セラのトータルソリューションによって切り拓こうとしているんですね。
それでは、京セラが目指す持続可能な社会の実現に向けて、未来の若手に期待していることについてお聞かせください。 -
「こんなことが必要だ」と思ったら、たくさんの人にアイデアを話して、巻き込んでいってほしいですね。アイデアに対して「一緒に考えたい」「一緒にやりましょうよ」「それをやるんだったら、あの人も呼んだ方が良い」とつながっていったときに初めて“しごと”として「形」になるのだと思っています。
これまでの日本はScrap and Buildで発展してきたと言われますが、これからは、Build Back Betterで前よりも良いものへと総合力で立ち向かってもらいたい。
だからこそ、たくさんの人とつながって、今の世の中に必要だと思うアイデアを形にできる人になっていってほしいですね。そうやって仕事を作り出せていける人たちが、社会をより良く変えていくことができるんだと信じています。
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