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みんなで作る発電所「家庭用蓄電池Enerezza®を使用したVPPシステム」

 電気はこれまで、各ご家庭やビルなどが使用する需要量に対して、火力発電所などが供給する形態を取ってきました。近年は太陽光発電などの再生可能エネルギーが普及しています。しかし、再生可能エネルギーの発電量は天候状況などに大きく左右されるため、需要と供給のバランスを保つことが困難という大きな課題があります。
 そのため、IoT技術をうまく活用してこれらの問題を解決するバーチャルパワープラント(VPP)技術が注目されています。

バーチャルパワープラント(VPP)とは?

 VPPとは「バーチャルパワープラント」の略称で、仮想発電所の意味です。アグリゲーター(英語でaggregater=集める人の意)と呼ばれる人や企業が蓄電池や発電機、燃料電池などのリソースを、IoT技術を使って遠隔制御を行い、電気を集めてあたかもそこに発電所があるように機能させることを指します。
 例えば、猛暑日や大寒波が来た時には皆が空調を使うため電気をたくさん消費します。このような街全体で電気が足りない時には遠隔制御で複数の蓄電池を放電させ、街全体での見かけ上の使用電力を減らしたり、周囲の街の建物へ電力を供給することができます。
 逆に、晴れている時には太陽光発電量がたくさんあり、電気が余ってしまうこともあります。そのような時は、発電した電気を蓄電池に上手に充電させて発電量を無駄なく使用することが可能になります。
 発電所側が需要に合わせて電気の発電量を調整するのではなく、街全体が消費する量を域内で無理なく調整出来ることが、VPPのポイントです。

京セラのVPPシステムの特長

 京セラの先進技術研究所にて開発したVPPシステムではご家庭の使用電力と太陽光発電電力のAI予測を行い、その予測量を元に、各家庭の電気料金を節約できるような蓄電池運転計画を立て、充放電を行います。また、系統の電気が不足している時、もしくは余りがある時に、高精度に節電、もしくは電力会社からの購入電力量を調整する蓄電池制御を行います。
 この時、固定買取価格取引(FIT)を契約されているご家庭や契約が終了しているご家庭(卒FIT)など、お客様に合わせた計画を立てることが可能です。お客様一人ひとりに合わせた遠隔制御を行えるのが当社VPPシステムの特長です。

 一般的なVPPシステムは主に二つの課題があります。一つ目として、使用電力・発電電力予測は天候予報が大外れした時などに大きく誤差が生じることが挙げられます。電力予測に誤差が生じた場合、高精度な制御を行えないことや、系統の電気が不足している際に調整できる電力量(調整可能量)が減る、といったリスクが考えられます。
 そのため、京セラのVPPシステムの特長の一つとしてこの誤差の影響をできるだけ低減するような運転計画立案のアルゴリズムが重要となるのです。(詳細は下記資料をご覧ください)

 もう一つの課題は、1軒あたりの調整可能量が少ないことです。購入電力が小さく、放電できる量が少ないときなどは、特に大きな懸念事項でした。これを解決するキーワードとして「逆潮流放電」があります。逆潮流放電とは、家庭の購入電力量以上に蓄電池を放電させることで、家庭で使わなかった分の電力を系統におすそわけする技術を指します。
 京セラの新しい蓄電池Enerezza®では、逆潮流放電技術のJET認証(電気製品の安全性が認められる認証試験)を得ており、遠隔制御を安全に行うことが可能です。
 2021年度の実証では東京ガス株式会社様と共同で、Enerezza®を使用した逆潮流放電の検証を行いました。

※Enerezza®は京セラ株式会社の登録商標です。

東京ガス様との実証

 実証のイメージは以下です。京セラのVPP制御システムサーバーから東京ガス様のRAシステムサーバーへ調整可能量を事前に送信します。RAシステムサーバーから制御指令が来た際に、ご家庭に設置されているEnerezza®の遠隔指示を行い充電・放電制御を行います。
 本実証ではEnerezza®で逆潮流放電をさせることも加味し、制御を行いました。

 需要家合計の制御結果は以下の通りです。
 緑の線が放電をしなかった場合の購入電力、赤い線が実際の購入電力を示しています。VPPシステムからの遠隔制御によって放電量の調整を行うことで、購入電力が削減され、制御後デマンドが水色の目標範囲に対して追従していることが確認できます。

 これらの内、あるご家庭に対して逆潮流放電を行った調整の様子が以下になります。(モニター宅)
 このグラフのマイナス側が逆潮流電力を指しています。青い線の目標値に対して赤い線の購入電力が追従していること、そして、逆潮流放電によって削減量を大幅に増やせていることがわかります。
 また、シミュレーションでは逆潮流放電によって調整できる可能量を一需要家当たり平均1.6倍増やせることを確認しました。(Enerezza® EGS-LM1000を使用した場合)

社内の実証環境について

 京セラでは横浜中山事業所内に太陽光パネルと蓄電池を設置し、事業所内の電力をVPP高度技術化実証の試験環境を整備しており、新たな技術の確立のための検証を日々行っています。
 VPPの技術が広く活用されることで、太陽光発電などの再生可能エネルギーの普及に貢献し、電力系統への負担を軽減することが可能になります。
 京セラでは今後もこのような技術に加え、新たな挑戦を続け、クリーンエネルギーの最大限の活用に取り組んで参ります。

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