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エネルギーをサステナブルに。最新技術からわかる日本のエネルギー問題

 昨今話題に上る「サステナブル」とは、直訳すると「持続可能な」を意味する言葉で、「持続可能な開発目標」とされる「SDGs」の頭文字としてもよく知られています。社会・経済・環境について統合的な取り組みを掲げているSDGsでは、サステナブルはあらゆる業界で求められており、エネルギー問題も例外ではありません。特に日本ではエネルギー問題が深刻な社会課題のひとつです。
 今回は、日本のエネルギー事情からサステナブルなエネルギーが必要な理由、それを実現するための京セラのシステムをご紹介します。

日本のエネルギー事情はサステナブルじゃない?

 日本のエネルギー事情は、サステナブルとは言えません。
 その理由は、火力発電が78.9%*¹も占めているためです。火力発電に使われる主なエネルギー資源は石炭、天然ガス、石油といった化石燃料です。資源が乏しい日本のエネルギー自給率はわずか10%*²程度に過ぎず、これらの化石燃料は中東諸国やオーストラリアなどからの輸入に依存しています。
 化石燃料の枯渇は世界的に深刻な問題です。2019*³年度末の時点では石油が50年後、天然ガスは49年後、石炭は132年後には底をつくと予測されています。

 また、火力発電は化石燃料を燃やして発電する仕組みからCO2(二酸化炭素)の排出量が多いことも課題です。CO2をはじめとする温室効果ガスは、地球温暖化を加速させる大きな原因。地球温暖化による気温上昇は、生態系の破壊や食料不足、海面上昇による沿岸部の洪水など、さまざまな環境問題をもたらします。
 こうしたエネルギー問題が理由で、従来の発電方式からサステナブルなエネルギーへの転換が求められているのです。

サステナブルなエネルギーのメリット・デメリットとは

 では、サステナブルなエネルギーとは、一体何でしょうか?それは、自然界にある資源を循環させて使う「再生可能エネルギー」です。太陽光、水力、風力、地熱、バイオマスなどが代表的な資源の例にあたります。
 これらの資源を活用する再生可能エネルギーのメリットは、地球上で自然に発生するエネルギーであるため、火力発電のように資源を枯渇させる心配がないことです。資源を海外からの輸入に頼る日本のエネルギー自給率を向上させることができ、地球温暖化の原因となる温室効果ガスの排出も抑えることが可能です。

 しかし、再生可能エネルギーは従来の発電方式と比べ、発電設備の建設に広大な敷地とコストを必要とするわりに発電効率が低いデメリットがあります。日本で最も普及が進む太陽光発電も、発電量が天候に左右されるため、安定した電力の需給バランスが保てない課題を抱えています。
 住宅やビルの屋根に太陽光発電装置を設置するにしても、10kWの発電をする場合、太陽電池モジュールや架台などの設置機材を含めて約700~1800kgもの重量が建物にかかります。また、耐荷重や耐震性の問題で、太陽光発電装置を設置できない建物も少なくありません。
 そこで京セラでは、こうしたデメリットを補う技術を開発しています。

薄くて軽い!新たな太陽電池の可能性

 太陽光発電装置の設置に関する課題を解決する京セラの技術が、フレキシブル結晶シリコン太陽電池モジュール。
 表面カバー材に特殊樹脂を採用し、ガラスレスでフレームレスな設計をすることで、発電効率と耐久性を損なうことなく、薄型化と軽量化を実現しました。既存の太陽電池モジュールと比較しても、建物への設置時の厚さは約1/10、重量は約1/4になります。

 そのため、耐荷重や耐震性の問題で設置が難しいと考えられていた倉庫やビル壁面、アーケード、ひさしなど、さまざまな場所への取りつけが実現可能に。また、建物の形状に沿って自由に曲げることもできるため、円形建築物や複雑な外観の特殊形状建築物など、あらゆる場所に太陽電池モジュールの設置が可能になります。
 モジュール裏面を直接貼りつける設計であることから、架台やビスの施工を必要とせず、太陽光発電装置の設置にかかるコストと工数の大幅な削減も期待できます。
 このような特徴を持つ京セラの太陽電池モジュールは、省スペースと低コストを実現する新たな太陽電池と言えるでしょう。

VPPで電気の使用を効率的に

 「VPP(バーチャルパワープラント)」とは何かをご存じですか?「仮想発電所」という意味で、「アグリゲーター」と呼ばれる人や企業が、IT技術を使って周辺地域の太陽光発電や蓄電池、電気自動車など、さまざまな発電設備を集中管理し、天候に応じて街全体の適切な発電量を調整できる発電所のような仕組みを指します。これにより、再生可能エネルギーの課題であった安定した電力需給バランスの解決につながります。

 京セラの家庭用蓄電池「Enerezza®(エネレッツア)」を使ったVPPは、高精度なAIが各家庭の使用電力と太陽光発電電力量を予測します。予測結果をもとに各家庭の電気料金を節約できるような蓄電池運転計画を立てて、充放電を行うため、天気予報が外れたときにも使用電力量と太陽光発電電力量の予測量に大幅な誤差が生じる心配がありません。アグリゲーターが適切な電力量を調整できずに電力不足に陥るという、一般的なVPPで懸念されるリスクを軽減できます。
 反対に購入した電気が余ってしまったときは、逆潮流放電技術を用いて余剰電気を放出させることで、電力不足の家庭や企業に供給します。
 地域全体で電気料金を節約しながら過不足のない電力の需給バランスがとれるため、サステナブルなエネルギーとして今後はVPPの普及が進むと考えられています。

まとめ

 国内において、環境に優しいサステナブルなエネルギーの本格的な普及には、まだ課題が残されています。しかし、今回ご紹介した太陽電池モジュールやVPPのように、現在サステナブルなエネルギーの普及を促進する技術の研究・開発に官民一体となっての取り組みも進んでいます。最新の動向をキャッチアップしながら、企業や個人ができるところからサステナブルなエネルギーを取り入れていきましょう。

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