酸素阻害とは?
表面硬化不良の発生メカニズムと対策
酸素存在下でのUV硬化には
表面硬化不良の対策が必要です。
空気にさらされたUV硬化樹脂は、「酸素阻害」という現象により、
樹脂表面の硬化不良が発生しやすいのはご存知でしょうか?
本ページでは、酸素阻害とは何か?酸素阻害を防ぐためには何が必要なのか?について解説します。
酸素阻害とは?
酸素阻害を理解するためには、UV硬化の原理を理解する必要があります。
まず、UV硬化樹脂にUVを照射すると、UV硬化樹脂に含まれる光重合開始剤が励起状態になり、ラジカルを生成します。
生成されたラジカルは、UV硬化樹脂の主剤であるモノマーと結合します(開始反応)。さらにモノマーとの結合(成長反応)が進むと、やがてラジカルは活性を失い(停止反応)、UV硬化反応が終息していきます。
これら一連の反応を「ラジカル重合反応」といいます。
UV硬化において重要な役割を担うラジカルですが、酸素と非常に結びつきやすい性質があります。 ラジカルと酸素の結合速度はラジカルとモノマーの結合速度よりも速く、酸素に触れている樹脂表面部の成長反応が酸素によって阻害されます。 その結果、UV照射を続けても樹脂表面部のUV硬化が進まず、樹脂表面にタック感(べたつき感)が残ってしまいます。これが酸素阻害のメカニズムです。
◇酸素阻害 構造式
◇酸素阻害 イメージ図
酸素阻害
が発生しやすい用途
次の用途では、樹脂が空気にさらされた状態でUV硬化をおこなうため、酸素阻害が問題となりやすいです。
- プリンターでのインク硬化用途
- UV硬化樹脂による表面コーティング
- UV硬化型液状ガスケット(CIPG)
等
酸素阻害の対策方法
酸素阻害を防ぐためには、UV硬化樹脂が空気(酸素)と触れにくい環境でUV硬化を行う必要があります。具体的な方法は次の二つです。
まず一つ目は、UV硬化工程を窒素で満たされた閉鎖空間で行う方法です。硬化工程設備を改造すれば、UV硬化樹脂と酸素が触れない環境を構築できます。ただし、設備改造により工程設備サイズが大きくなってしまいます。
二つ目は、窒素パージモデルUV LED光源を使用する方法です。UV光源ユニットと窒素パージ機能が一体化されたモデルで、お客様の工程設備を改造することなく、酸素阻害への対策を実施できます。
京セラの窒素パージモデルUV LED光源
京セラは、光源ユニットと窒素パージ機能を一体化させた窒素パージモデルUV LED光源を取り扱っております。 UV照射部の横に窒素吹き出し部を設け、UV照射範囲への酸素流入を効果的に遮断します。 ただし、窒素ボンベや窒素生成装置等の窒素供給源が別途必要です。
京セラは、窒素パージ機能一体構造に関する特許を出願済みであり、UV LED光源メーカーとして唯一、窒素パージモデルのUV LED光源をラインナップに揃えております。
(2022年7月時点。京セラ調べ)
シミュレーション結果
UV照射範囲の酸素濃度を効果的に低下させているシミュレーション結果です。
シミュレーション条件
- 機種:京セラ製「G5AN」
- 搬送速度:10m/分
- 窒素流量:5ℓ/分
表面硬化性改善効果
窒素パージ機能が無い通常モデルのUV LED光源と、窒素パージモデルのUV LED光源を比較、明確な硬化度(*弊社独自基準)の改善効果を確認しました。
評価条件
- インク:IJ K インク
- インク厚み:2μm
- 波長:365nm
- 照射距離:15mm
- 搬送速度:15m/分
- 窒素純度:99.99%
- 評価方法:FT-IR
窒素パージモデルUV LED光源紹介動画
まとめ
本ページでは、酸素阻害のメカニズムと対策方法について解説しました。
京セラは、酸素阻害の有効な対策となる窒素パージモデルUV LED光源を開発/製造しております。
ご不明点がございましたら、何でもお気軽にお問い合わせください。
また、京セラと他社様のUV LED光源仕様を比較した調査レポートをご提供しております。
下記リンク先にてレポートをダウンロードできますので
ぜひお客様にとって最適なUV LED光源の選定にお役立てください。