宮崎県新富町における電子投開票システム「デジ選®」導入事例
電子投開票システム「デジ選®」採用で開票時間が大幅削減。同時に有権者の利便性向上を実現。
新富町役場様
宮崎県新富町における電子投開票システム「デジ選®」導入事例
新富町役場様
宮崎県新富町は、県中央部の沿岸にある人口約1万6000人のまちです。平坦な地形と温暖な気候により農業が盛んで、水稲や蕎麦、茶のほか、国内にわずか1%しか流通しない希少な国産生ライチ『新富ライチ』の産地として有名です。
また、町内には、神武天皇が立てた杖から梅の木が増えたとの言い伝えがある梅園『湯ノ宮の座論梅(ゆのみやのざろんばい)』をはじめ、総数207基の古墳が点在する『新田原(にゅうたばる)古墳群』、人物や動物などさまざまな形象埴輪が出土した『百足塚(むかでづか)古墳』など、数多くの伝承や史跡が残されています。
同町は、去る2026年3月1日に新富町議会議員補欠選挙を実施し、そこで京セラの電子投開票システム「デジ選®」を採用しました。これは2024年12月の大阪府四條畷市長・市議補選に次ぐ事例であり、四條畷市で実施時と比較して開票時間が5倍速くなったなど、機能を大幅にアップデートしての提供となりました。
同町が電子投開票システムを採用したきっかけや導入後の効果などについて、新富町役場 総務課の吉野雄太様、甲斐信吾様にお話をうかがいました。
全国的に有権者の政治・選挙への関心の低さが問題となる中、とりわけ20・30代における投票率の低迷が目立っています。2026年2月の衆議院議員選挙では、25~39歳の投票率は前回(2024年衆院選)よりも5ポイントほど上昇したものの、19~24歳は依然として30%台にとどまっています。
「新富町の若年層の投票率は約20%と全国平均を下回っています。町内の若者が政治や選挙に関心がないということは、新富町の施策に若者の意見が反映されにくくなるということです」(吉野様)
そこで同町では、2024年度から町内の小中学校にて政治・選挙の意義や重要性を理解してもらうための出前授業を開始しました。ほかにも『新富町はたちの集い(成人式)』などに出向いての啓発活動にも取り組んできました。こうした活動を続ける中で出会ったのが、京セラの電子投開票システム「デジ選®」でした。
「デジ選®」とは、タブレット端末を使用して投票を行い、デジタル技術を活用して投票・開票作業を効率化・迅速化するシステムです。従来の紙による投票と比べて、誤記による疑問票や無効票がなくなるほか、専用の開票パソコンを使って即座に集計が完了するため、開票作業の低減と時間削減が可能です。現在、地方公共団体の議会の議員または長の選挙で使用できます。
「2025年1月ごろ、啓発活動にアドバイスしてくださっていた宮崎県選挙管理委員会からデジ選を紹介していただきました。デジ選はタブレット端末で投票すると聞き、デジタルネイティブである若年層にとって選挙を身近なものとして感じてもらえるきっかけになるのではと思いました」(吉野様)
加えて投票の際、手の震えなどで文字を書くことが困難な方が、投票自体を敬遠するケースも耳にしていました。
デジ選を導入すればタブレット端末の画面をタップするだけで投票が完了します。自分で書くことが困難な高齢者だけでなく、利き手を怪我した、杖で体を支えているため片手がふさがっている、小さな子どもを抱えているといった人々でも、簡単な操作でスムーズかつ確実に投票できます。
「デジ選を利用することで、若年層への投票喚起、そして有権者全世代の利便性の向上を期待できます。これらが決め手となり、2025年7月にデジ選の導入が正式決定しました」(吉野様)
「デジ選®」は、タブレット端末の画面をタップするだけで投票できるため、身体的な負担を軽減し、すべての有権者が投票しやすい環境を構築できます。また、選択するだけなので、文字が判読できずに無効票になるケースをゼロにすることが可能です(不在者投票の投票用紙は存在)。無効票は過去多いときで300票にも及びました。
それが、新富町が「デジ選®」を導入した決め手でしたが、どうしても拭えない懸念があったと言います。それはデジタル・ディバイドです。
デジタル・ディバイドとは、タブレット端末などの情報通信技術を利用できる者と利用できない者との間に生じる格差のことです。若年層にとっては馴染みのあるタブレット操作も、果たして高齢者は抵抗なく受け入れられるだろうかという意見が周囲から投げかけられました。
「そこで、広報活動に力を入れることにしました。デジ選の便利さを知っていただくことで、デジタル・ディバイドは解決すると考えたからです」(吉野様)
イベントなどで模擬タブレット投票体験会のブースを設置したほか、地区の公民館で実施されている高齢者向けの体操教室へ足を運び、高齢者一人ひとりと膝を突き合わせて実機を操作しながら丁寧に説明をするなど、地道な広報活動を展開しました。説明する際に使用する言葉にも配慮し、横文字・カタカナは極力使わず、タブレットは『触って操作する機械』と表現したそうです。
「公民館へ行き、『電子投票です』と言うと、最初は不安そうなご様子でしたが、実際に操作していただいたら、『とても簡単ね』『紙よりもこれがいいわ』という好感触に変わっていきました」(吉野様)
その一方で、選挙事務に携わる職員の研修も実施しました。電子投票の基礎知識などを学ぶ座学だけでなく、ロールプレイングにて実際に動きながら投票当日に起こりうるかもしれない課題を洗い出し、対策方法も検討しました。結果、タブレット端末の設置角度やタッチペンの位置、配置する人員数など、よりスムーズな運営につながる方法を見出していきました。
「町民に向けての広報活動をはじめ、事務従事者向けの研修で手厚く伴走していただいたのが、京セラの皆さんでした。また、選挙告示日から京セラさんに常駐していただき、事務従事者がいつでも相談にいける体制を整えてくださったほか、投票日の前日に職員から『タブレット端末の起動と終了を実機説明している動画がほしい』という相談があったときも、すぐさまテロップ入りのわかりやすい動画を作成していただきました。京セラさんの協力を得ながら準備を進められたのは、たいへん心強かったです」(甲斐様)
そして迎えた2026年3月1日。実施された町議会議員補欠選挙は、2名の候補者から1名のみ選出するという条件だったとはいえ、投票完了までに要した時間はわずか数秒、長くとも20秒程度でした。従来の紙による投票で要していた2~3分との差に、多くの有権者が驚きを示していました。
また、投票所を訪れた当初は電子投票やタブレット操作に抵抗感を持っていた有権者も、投票後には『非常に便利だった』とその印象を大きく変える姿も見受けられたそうです。
開票作業は、通常の町議選より大幅に少ない12人の職員で行い、14投票所から回収した電子投票3603票の開票に22分。そして紙の不在者投票60票の開票と集計結果の合算、開票結果の出力、報告、開票録作成なども含めて作業全体は42分で完了。19時から開票をスタートし、20時になる前には終了しました。開票作業が即日、短時間で完了するということは、事務従事者の拘束時間の大幅な短縮を意味します。
「これまで、投票事務にあたる職員は、投票が終わると開票作業を手伝うので、朝から長時間拘束されます。それがデジ選にしたことで開票作業を手伝う必要がなくなりました。また、デジ選は紙の投票用紙を交付しないため、余った投票用紙の枚数を確認する必要もなく、二重交付をしたかもしれないという心理的負担からも解放されます。デジ選は職員にとっても利点のあるシステムだと改めて実感しました」(吉野様)
さらに、今回の電子投票の認知度や満足度などについて出口調査を行ったところ、電子投票に対して好意的な回答が多い結果となりました。回答者の約半数が70代以上だったことを鑑みても、デジタル・ディバイドを懸念していた高齢世代に対して電子投票は充分受け入れられたことがわかりました。
「広報活動に力を入れたとはいえ、正直、電子投票をご高齢の方々に受け入れていただけるか不安でした。出口調査2日分の結果を見たとき、すでに好意的な結果が出ており、ほっとしました。このご経験をお孫さんと話題にしていただくことで、若年層の興味関心につながるのではないかと期待しています」(甲斐様)
大きな混乱もなく無事終えた、新富町初の電子投票による選挙。
吉野様、甲斐様ともに「ほっとしました」と安堵の表情を浮かべる一方、その視線は早くも次期町議会議員選挙が行われる2027年4月(予定)の第21回統一地方選挙へと向けられていました。
「統一地方選挙では、宮崎県議会議員選挙の後に新富町議会議員選挙があります。現在、宮崎県では電子投票を実施するための条例改正を行っていないので、今のままでは県議選を紙投票で、町議選を電子投票で行うことになります。そこで新富町としては、町民の皆さんの混乱をなくすため、また電子投票の利便性を多くの有権者に享受していただくために、ぜひ電子投票に一本化できたらと考えています。統一地方選挙までに実現できるよう、宮崎県へ陳情にうかがう準備を進めています」(吉野様)
前回の公職選挙実施から、約1年が経過し、京セラとしてシステムのアップデートだけでなく、伴走プログラムをはじめとする様々な取り組みにチャレンジしてまいりました。すべての声が届く、未来の選挙へ。というテーマを掲げて、電子投票の推進を行っております。新富町様で得られた結果を踏まえ、さらにより良いシステム・サービスへ改善・改良を行ってまいります。
所在地:宮崎県児湯郡新富町大字上富田7491
瀬戸内町総務企画課DX推進室様/TOPPANエッジ株式会社様(現TOPPAN株式会社様)