京セラ製タブレットを用いた自治体DX事例
岡山県美咲町「黄福タクシー」に、マイナンバーカードの空き領域と京セラ製タブレットを活用した乗車システムを導入。
岡山県美咲町役場様
京セラ製タブレットを用いた自治体DX事例
岡山県美咲町役場様
岡山県美咲(みさき)町は、中山間部にある棚田のまちです。町内には標高400mに約850枚の水田がすり鉢状に広がる『大垪和(おおはが)西の棚田』があり、『日本の棚田百選』に選ばれています。また、同町は中山間部特有の昼夜の寒暖差と澄んだ水により良質な棚田米が育つ米どころでもあり、『大垪和の棚田米』は特産品として人気を集めています。
さらに、西日本最大級の養鶏場もあり、地元産の新鮮な卵と棚田米を味わえる『たまごかけごはんの聖地』としても知られています。
美咲町では、卵の“黄色”と“幸福”を掛け合わせた『黄福(こうふく)』をキーワードにまちづくりを行っており、その一環として展開しているのが、高齢者を対象としたタクシー利用助成制度『黄福タクシー』です。今後ますます加速する高齢化を見据え、中山間部地域における交通空白に対処するため2014年から開始し、現在では約3000人もの町民が登録する、“まちの足”となっています。
黄福タクシーの利便性をさらに高めるため、2026年1月よりマイナンバーカードICチップの空き領域を活用した乗車システムを導入しました。その背景や効果などについて、岡山県美咲町・町長の青野高陽様、くらし安全課の水島寛之様、河村由起子様、石原考鴻様、そして有本観光バスの有本整司様にお話をうかがいました。
日本が超高齢社会に突入し、20年が経とうとしています。高齢化の波は今後も止まることなく、2070年には65歳以上人口の割合は約40%に達すると予測されています。
「美咲町は、まさに日本の未来の縮図と言えます。高齢化率は40%を超え、人口減少率は5年間で約10%となっています。このような状況の中で、今の生活をどのように維持あるいは充実させていくかが問われています。そこに向かって始めたチャレンジの1つが『黄福タクシー』でした」(青野様)
黄福タクシーとは、満66歳以上を対象(2026年3月現在)に運賃の一部が補助されるタクシー利用助成制度です。地域内の移動であれば片道350円で移動できる料金の安さをはじめ、自宅から目的地まで直行できる利便性の高さから、利用者の90%以上が『満足』と回答する、評判のサービスです。
しかし、町民から支持を得る一方で、黄福タクシーの運用には課題がありました。
「タクシー事業者への精算手続きに必要な利用者データの整理に、膨大な時間がかかっていました。黄福タクシーの利用者は乗車時に紙の利用者証を提示し、そこに記載されている内容や利用時の乗降記録、運賃をタクシー事業者が月毎に表計算ソフトに手入力します。その数は毎月1000件以上にも上り、それを美咲町の職員が手作業で集計していました。すべての工程を手動で行うためミスも多く、その確認作業にも追われるという状況だったのです」(河村様)
加えて、紙の利用者証の破損や紛失も絶えませんでした。タクシー事業者がもっと楽に、そして利用者がもっと便利になる仕組みを模索していました。
そのような状況の中、青野町長のもとに1通の案内状が届きました。東京ビッグサイトにて開催された『自治体・公共 Week2024』のお知らせでした。
「町長宛てに届いた案内状でしたが、DX担当である私が代わりに参加しました。自治体の課題を解決するさまざまなデジタル技術が展示される中、目を引いたのが『まちのクルマアプリ』でした。同アプリを導入済みの徳島県神山町からもお話をうかがうことができ、まさに美咲町が抱える課題を解決できるアプリだと確信しました」(河村様)
『まちのクルマアプリ』とは、徳島県を拠点に介護・福祉サービスを幅広く展開するイツモスマイル株式会社が提供する地域交通向けの運行・管理システムのこと。高齢化と人口減少が進む徳島県神山町が展開する交通制度『まちのクルマLet’s』を地域に根づかせ、町民にとって使いやすいサービスへと変えた陰の立役者です。
同アプリは、マイナンバーカードで乗車認証を行うため、紙の利用者証は不要になります。さらにGPS料金精算機能を搭載しているほか、予約・配車・データ管理も一元化できるため、これまでタクシー事業者が行っていた入力作業の一切を行う必要がありません。
「同アプリを導入するには、すでに構築されたシステムを美咲町版にカスタマイズするだけでよいため、ゼロからシステムを作り上げる必要がなく、コストも抑えられます。何よりも、美咲町と同じ中山間地域である神山町での成功事例が後押しとなり、話がとんとん拍子に進んでいきました」(河村様)
そして2025年9月、定例町議会で関係条例を可決。2026年1月8日、まちのクルマアプリによる黄福タクシーの運用に向け、従来の利用者証からマイナンバーカードへの切り替え受付を開始しました。
「まちのクルマアプリを導入することで利便性が向上するとはいえ、黄福タクシーは高齢者が対象のサービスです。紙の利用者証からマイナンバーカードに切り替えるとなったら、抵抗感を持つ方がいるのではないかと懸念していましたが、取り越し苦労のようでした」(青野様)
受付当日、庁舎には約200人もの町民が切り替え手続きに訪れ、現在1800人以上の町民がすでにマイナンバーカードへの移行を完了しています。
アナログ手法による運用から、マイナンバーカードを用いたデジタル化に移行した黄福タクシー。この新しい仕組みを成功へと導くには、タクシー事業者の理解が欠かせなかったと言います。
「美咲町のタクシードライバーも多くが高齢者です。デジタルに不慣れな方でも気持ちよく使えるシステムであることが重要でした。そこで、当初はスマホでマイナンバーカードを読み取る予定でしたが、画面が大きいほうが使いやすいということでタブレットに変更しました」(水島様)
ここで採用されたのが、京セラ製タブレット『DIGNO® Tab2 5G』(KDDI)です。前面NFC読み取り機能を搭載しているため、外付けリーダーが不要です。読み取り位置を示すガイドが画面上に表示されるので、タブレットに慣れていない高齢ドライバーでも画面のどこにマイナンバーカードをかざせばいいかひと目でわかります。
「当社のドライバーの中にはスマホを使ったことがない者もおり、最初はタブレットの操作に不慣れでした。しかし、わかりやすい説明書を作成していただき、操作しやすいように設定を変えていただいたおかげで、今では問題なく使いこなせています」(「黄福タクシー」を利用できるタクシー会社・有本観光バス様)
2026年1月19日からマイナンバーカードによる乗車システムの本格運用がスタートした、黄福タクシー。
ほかにも、2025年5月の新庁舎移転時からスタートした『書かない窓口』、保育園の『午睡センサー導入』など、美咲町ではさまざまな分野でのDXが着々と進んでいます。
「美咲町では、運転免許を返納された方に、毎年度6000円分のタクシーチケットをお渡ししているのですが、これまでの紙のチケットから電子チケットに切り替えようと、引き続きイツモスマイルさんのご協力のもと、進めている最中です。最終的にはWeb上でタクシーチケットの申請や管理をできるようにしたいと考えています。そうすることで、タクシーチケットを受け取りにタクシーチケットを使って来庁する必要がなくなるからです。この仕組みもアップデートしていき、町民の皆さんの利便性向上につながればと思っています」(石原様)
そして、それらの取り組みで得た成果を全国へ発信したいと河村様は言います。
「自治体が抱える課題はどこも同じです。美咲町で採用して良かったことは、他の自治体へ共有していき、みんなが幸福になれるよう貢献していきたいです」(河村様)
これまでのアナログな業務体制を刷新し、デジタル技術を積極的に活用することで、町民の利便性向上はもちろん、職員の業務効率化も実現し、将来的には持続可能なまちづくりをも可能にします。
そのような明るい未来、明るい日本を目指して、美咲町の挑戦はこれからも続いていきます。
美咲町が独自に展開する『黄福タクシー』という素晴らしい制度や、担当課の皆様の強い熱意。そして、新しいシステムの導入に対して柔軟に対応してくださったタクシー事業者の皆様。こうした現場の力強い姿勢に触れ、当社の『まちのクルマアプリ』を通じて、少しでも地域の力になりたいという思いで進めてまいりました。無事にシステムが稼働できたことに対し大きな安堵とともに、関係者の皆様へ深い感謝の念を抱いております。
『まちのクルマアプリ』の運用に欠かせないのが、京セラ製タブレット『DIGNO® Tab2 5G』(KDDI)です。同タブレットには、私たちが待ち望んでいたNFC読み取り機能が搭載されています。マイナンバーカードの読み取りをスムーズに行えるだけでなく、防水・防塵性能や高い堅牢性も備えているため、車内での利用はもちろん、ご高齢の方においても安心して使用できる製品です。また、国内メーカー製であることも、自治体様へ導入をご提案する上での確かな信頼感につながっています。
システムの導入過程でアプリとの連携に不具合が生じた際も、京セラ様には迅速かつ丁寧に対応していただきました。当社の提供するサービスは、デバイスと切り離して考えることはできません。ハードウェアメーカーとの強固な協力関係を築くことで、安定した動作環境を維持でき、それがお客様の『安心』につながると考えています。
今回の美咲町での導入事例を1つのモデルケースとして、今後は同様の課題を抱える他地域への展開を積極的に進めていく予定です。マイナンバーカードの利活用には、まだまだ多くの可能性があります。地域社会の利便性向上に向け、これからも継続してサービスの提供に努めてまいります。
所在地:岡山県久米郡美咲町原田2144-1
瀬戸内町総務企画課DX推進室様/TOPPANエッジ株式会社様(現TOPPAN株式会社様)