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~バッテリー切れ・故障多発~

物流現場の端末老朽化リスクと"スマホ一本化"ノウハウ

高耐久スマートフォン / スマートフォン

物流現場の端末老朽化リスクと“スマホ一本化”ノウハウ

物流IT化の今と、なぜ端末老朽化が課題なのか

物流業界は、EC市場の拡大や消費者ニーズの多様化を背景に、配送量の増加と迅速なサービス提供が求められています。しかし、一方で、慢性的な人手不足や高齢化が深刻化し、長時間労働や低賃金といった課題が山積しています。

このような状況下で、物流現場のIT化、特に業務用端末の老朽化が喫緊の課題として浮上しています。長年使用されてきたハンディターミナルやPC、ラベルプリンターなどの業務用端末は、バッテリーの劣化や故障の頻発、セキュリティリスクの増大、保守コストの増加といった問題を引き起こし、業務効率の低下や従業員の負担増大に直結しています。

本記事では、端末老朽化がもたらす具体的なリスクと、その解決策としての「業務用スマートフォンの活用」について、そのメリットや導入ノウハウを詳しく解説します。

物流現場で進行する端末老朽化とそのリスク

物流現場で日常的に使用される業務用端末の老朽化は、業務停止やセキュリティ低下など、多岐にわたるリスクを内包しています。

業務用端末(ハンディターミナル・PC・ラベルプリンター等)の老朽化状況

物流現場では、入出荷管理、在庫管理、棚卸し、配送管理など、多岐にわたる業務でハンディターミナル、PC、ラベルプリンターなどの業務用端末が不可欠です。しかし、これらの端末は税法上の法定耐用年数(ハンディターミナルは5年、PC4年、ラベルプリンター:事務機器は5年)を超えて使用され続けることが多く、経年劣化が避けられません。特に、高度経済成長期(19701980年代)以前に竣工した築42年以上の倉庫は全倉庫の4割近くに相当します。それに伴い内部の設備も老朽化が進んでいる状況が見られます

バッテリー劣化・故障頻発がもたらす現場の混乱

老朽化した端末は、バッテリーの劣化や物理的な破損が頻発します。バッテリーが持たないことで充電の頻度が増え、作業の中断や効率低下を招きます。また、故障が増えれば、修理や交換対応に時間とコストがかかり、その間の業務停止リスクも高まります。これは、繁忙期の出荷遅延や誤出荷につながり、顧客満足度を低下させる要因となります。

セキュリティ低下、サポート終了による重大リスク

自社サーバーで運用されるオンプレミス型システムの場合、ハードウェアやソフトウェアにはサポート期間が設けられています。サポートが終了すると、セキュリティアップデートや問い合わせができなくなり、マルウェア感染や不正アクセスの標的となるリスクが格増します。特に、ハンディターミナルのOSとして長らく利用されてきた「Windows Embedded Compact 7(旧名称:Windows CE)」のサポートは2021年に終了しており、このOSを採用していた企業は新たなリスクに直面しています。機密情報の漏洩は企業の信頼失墜に直結するため、看過できない問題です。

保守コスト・運用コスト増加の実態

老朽化した端末やシステムは、不具合の増加に伴い、保守・運用コストが増大する傾向にあります。古いシステムは、法制度の改正や業務プロセスの変化に合わせて改修が必要となるたびに、多大な時間と費用が発生します。

また、老朽化したシステムに対応できるITエンジニアは限られており、その確保も困難かつ高コストになります。さらにDXを推進する人材も不足しております。これにより、IT予算の大半が既存システムの維持に費やされ、新たな投資が進まない「ITの塩漬け」状態に陥ることも少なくありません。

保守コスト・運用コスト増加の実態

旧式端末が物流効率化を阻む理由

物流業務の効率化には、荷待ち時間や荷役作業の短縮、デジタル化・自動化の推進が必要です。しかし、旧式端末では処理速度や操作性が低く、導入効果を十分に発揮できません。結果として、現場の作業負担や待機時間が増加し、ガイドラインが目指す生産性向上や労働環境改善を阻害します。最新端末への更新は、効率化と従業員満足度向上のための重要な投資となります。

なぜ今“スマホ一本化”なのか

物流現場が抱える端末老朽化の課題に対し、なぜ今「スマホ一本化」が注目されているのでしょうか。

専用機からスマートフォンへの移行トレンド

従来の物流現場では、バーコード読み取りに特化したハンディターミナルや、特定の業務に特化した専用端末が主流でした。しかし、スマートフォンの進化は目覚ましく、カメラ性能の向上によりバーコード読み取り能力が飛躍的に向上し、多様なビジネスアプリの登場により汎用性が高まりました。現在では、専用機と比較して低コストで導入でき、操作性も高いため、物流現場でのスマートフォン活用が注目されています。

スマホ統合による現場業務最適化のポイント

スマートフォンを業務用端末として統合する最大のメリットは、一台で複数の業務をこなせる点にあります。これにより、従業員が複数の端末を持ち歩く負担を軽減し、業務効率を大幅に向上させることが可能です。また、スマートフォンの普及により、多くの従業員が操作に慣れているため、導入時の教育コスト削減も期待できます。

バーコード読み取り・勤怠管理・トランシーバーなど1台完結の魅力

スマートフォンを導入することで、以下の業務を一台で完結できるようになります。

  • バーコードリーダー/在庫管理システム連携:スマートフォンのカメラ機能を使ってバーコードを読み取り、在庫管理業務や商品検索、価格照合に活用できます。
バーコードリーダー/在庫管理システム連携
  • トランシーバー機能:専用アプリを導入することで、全国どこにいる相手とも一斉連絡やグループ通話が可能です。無線免許や資格が不要なため、低コストで運用でき、GPSで位置を把握しながらの運行調整も容易になります。
トランシーバー機能
  • 配送管理:ドライバーのスマートフォンで位置情報などを送信し、管理者はパソコン上でトラックの運行状況をリアルタイムで把握できます。これにより、顧客からの問い合わせや急な配車変更にも柔軟に対応でき、ドライバーは運転に集中できます。
配送管理
  • アルコールチェック:スマートフォンにアルコール検知器を接続するだけで、営業所に戻らずどこでも手軽にチェックが可能です。検知時に顔写真も撮影されるため、なりすましによる不正を防止でき、検知結果は管理画面に自動送信されリアルタイムで確認できます。勤怠管理アプリと連携すれば、アルコールチェックを出退勤打刻として活用することも可能です。
アルコールチェック

導入時の懸念と現場の抵抗感

新たなシステム導入には、現場からの抵抗感がつきものです。特に、長年慣れ親しんだハンディターミナルからの移行は、操作性の違いや学習コストへの不安から反発が生じやすい傾向にあります。このため、導入時には丁寧な説明と、実際に使いやすさを実感してもらうための工夫が不可欠です。

現場/部署別による老朽化課題とスマホ化の効果

スマートフォンの導入は、物流現場の様々な部門で業務効率化と課題解決が見込めます。

「倉庫」:入出庫・在庫管理の効率化

倉庫業務では、商品の入出荷検品、棚卸し、在庫移動などに多くの時間と手間がかかります。従来の紙ベースの管理や老朽化したハンディターミナルでは、ヒューマンエラーが発生しやすく、リアルタイムでの在庫状況把握が困難でした。

スマートフォンの導入により、カメラを使ったバーコードスキャンで入出荷検品や棚卸しをペーパーレス化し、作業の効率化が期待できます。読み取ったデータはリアルタイムでWMS(倉庫管理システム)に送信されるため、常に正確な在庫情報を把握できます。これにより、誤出荷率の低減や欠品防止にもつながり、人手不足の課題解消にも寄与します。

「配送センター・運送会社」:運行・配車・勤怠と連動

配送センターや運送会社では、ドライバーの運行管理、配車計画、勤怠管理が重要な業務です。しかし、電話やFAX、紙の台帳によるアナログな管理では、情報共有にタイムラグが生じ、非効率な運行や配車ミス、勤怠管理の煩雑さといった問題が発生していました。

スマートフォンを導入することで、ドライバーの位置情報や運行状況をリアルタイムで把握できる動態管理システムと連携し、配送ルートの急な変更などにも柔軟に対応できます。急な配車変更にも柔軟に対応でき、ドライバーへの連絡もスマートフォンを通じてスムーズに行えます。また、アルコールチェックと連動した勤怠管理システムを導入すれば、出退勤打刻もスマートフォンで完結し、事務処理の負担を軽減できます。

情報システム・総務部門の視点でみた管理運用の変化

情報システム・総務部門にとって、業務用端末のスマホ一本化は、管理運用の効率化とコスト削減に大きく貢献します。

  • 端末管理の一元化:MDM(モバイルデバイス管理)サービスを導入することで、複数台のスマートフォンを一元管理できます。アプリケーションの配布や全端末の一斉アップデート、機能制限などを管理者のPCから遠隔で実行できるため、端末を一つ一つ回収する手間が省けます。
端末管理の一元化
  • セキュリティの強化:MDMサービスは、端末の紛失・盗難時に位置情報を特定し、リモートロックやリモートワイプ(初期化)を実行することで、情報漏洩を防ぎます。不正利用防止や情報保護の観点から、セキュリティ対策を強化できます。
  • コスト削減:従来の専用端末と比較して、スマートフォンの導入は機器費用を抑えられる傾向にあります。また、MDMサービスの中には、月額料金制で必要な機能をオールインワンで提供するものもあり、初期投資を抑えつつ運用コストを平準化できます。
  • 導入後のサポート:京セラでは、長年のモバイル開発ノウハウを活かし、端末提供から導入後のサポートまでトータルで支援する体制を整えています。デモ機の貸し出しや導入相談を通じて、企業ごとに最適なソリューションを提案しています。
導入後のサポート

スマホ一本化の導入ノウハウと失敗しない進め方

スマホ一本化を成功させるためには、移行時の業務フロー整理や現場教育、そして導入後の保守・サポート体制の構築が不可欠です。

移行時の業務フロー整理と現場教育

既存の業務プロセスを新しいスマートフォンベースの運用にスムーズに移行させるためには、入念な準備が必要です。

  • 業務フローの洗い出しと再設計:現在の業務フローを詳細に洗い出し、スマートフォンの機能に合わせてどのように効率化できるか、具体的なイメージを現場担当者とともに検討します。例えば、紙の伝票で行っていた配送記録をアプリ入力に切り替える場合、どのような情報を、どのタイミングで入力するかといった具体的な手順を定義します。
  • 機能の絞り込みと段階的導入:一度にすべての機能を導入しようとすると、現場が混乱する可能性があります。まずは必要最低限の機能から導入し、段階的に拡張していくことで、現場の負担を軽減し、スムーズな移行を促します。

デモ機・先行導入のメリット

  • デモ機の活用:導入前にデモ機を現場に貸し出し、実際に従業員に使ってもらうことで、操作性や使い勝手を確認してもらいます。これにより、現場の意見を吸い上げ、システムやアプリの改善に役立てることができます。
  • パイロット拠点での先行導入:一部の拠点やチームで先行導入を行い、そこで得られた課題や成功事例を他の拠点へ展開することで、スムーズな全体導入につなげます。先行導入の担当者には、導入後のリーダーとして、他の従業員のサポート役を担ってもらうことも有効です。

操作トレーニング・マニュアル整備

  • 丁寧な操作トレーニング:スマートフォンに慣れていない従業員もいるため、導入時には丁寧な操作トレーニングを実施します。基本的な操作から、各業務アプリの使い方まで、実演を交えながら指導します。
  • 分かりやすいマニュアル整備:視覚的に分かりやすい操作マニュアルを作成し、従業員がいつでも参考できるようにします。動画マニュアルなども活用することで、理解度を高めることができます。

保守・サポート体制の構築

導入後も安定して運用していくためには、適切な保守・サポート体制が不可欠です。

  • トラブル時の対応窓口の設置:システムや端末に関する問い合わせやトラブルが発生した場合に、迅速に対応できる窓口を設置します。外部ベンダーとの連携を強化し、緊急時の対応フローを明確にしておきます。
  • 定期的なアップデートと改善:導入後も、現場からのフィードバックを元に、アプリやシステムの定期的なアップデートや改善を行います。これにより、常に最新の機能を提供し、業務効率の向上を継続的に図ります。

まとめと今後の課題

端末リプレイス・スマホ一本化が物流DXの第一歩

物流業界が抱える人手不足、コスト高騰といった課題を乗り越えるためには、デジタル技術を活用したDX推進が不可欠です。その第一歩として、老朽化した業務用端末のスマホ一本化は、業務効率化、コスト削減、セキュリティ強化に大きく貢献します。スマートフォンは、バーコードリーダー、トランシーバー、勤怠管理、配送管理、アルコールチェックといった複数の機能を一台に集約し、物流現場の多様なニーズに応えることが可能です。

現場と経営層双方が納得する導入ステップ

スマホ一本化の成功には、現場の声を吸い上げ、使いやすさを追求する姿勢と、経営層が投資対効果を明確に理解し、リーダーシップを発揮することが重要です。デモ機の活用、段階的な導入、丁寧な現場教育、そして充実した保守サポート体制を構築することで、現場と経営層双方を納得させながらプロジェクトを進めることができます。

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