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D&I TALKダイバーシティ推進室長×社員対談

次世代の「当たり前」をつくるため、
今、京セラに必要なこと

本社前で笑顔で並ぶ、吉川英里さんと山下満好さんの写真
  • ダイバーシティ推進室長
    兼 広報室長
    吉川 英里
  • 研究開発本部
    山下 満好

京セラのダイバーシティ&インクルージョンを推進し、全員がいきいきと輝くことのできる会社をめざして設置されたダイバーシティ推進室。室長の想いと現場で働く社員の視点を交差させ、京セラのD&Iの現状や課題、推進活動のめざすべき方向性を見出すべく、室長・吉川英里さんと、育休取得経験のある男性社員・山下満好さんの対談を行いました。

TALK-01

男性の育休取得推進などの各種取り組みは、
社員全員が活躍できる職場をつくるための通過点。

吉川:
こんにちは。今日は山下さんの現場目線の想いやご意見を直接うかがって、推進室の活動の参考にさせていただきたいと思っています。よろしくお願いします。
山下:
私も吉川さんのお話から、色々と勉強できればと思っていますので、どうぞよろしくお願いします。京セラではダイバーシティ推進室が最近発足したばかりですよね。
吉川:
はい。2019年に発足した組織で、さまざまな部署から集まった人材で構成されています。少数ですが、バックボーンが異なるメンバーが所属していることを活かし、幅広い視点で活動を行っていきたいと考えています。
山下:
多様な人材が集まった、まさに「D&I」な組織なんですね。ところで吉川さんは推進室設立前からD&Iの浸透に向けて動かれていたんですか?
吉川:
実は任命は私にとっても突然のことだったんです(笑)。最初は驚いたんですが、よく考えると過去に大学で学んだ国際分野の知識や、海外で暮らしていた自分の経験をフルに活かせる組織だなと。これは運命かもしれない!と思って、全力で取り組もうと決めました。山下さんは、京セラがD&I推進に取り組むことを、どう感じていらっしゃいますか?
山下:
最近は、現場でも少しずつD&Iという言葉を耳にするようにはなってきましたね。同じ部署にもダイバーシティ推進委員を務めている同僚がいます。ただ、まだそこまで大きな変化は感じていないというのが正直な印象です。
吉川:
そうですね。社員の皆さんに変化を実感していただけるような活動はまだまだこれから、というところです。そういった意味では、男性社員として育児休職を取得された山下さんの方が、大きなムーブメントを職場にもたらしているかもしれませんね。
山下:
私の育休取得も、職場のD&Iにつながっているんですか。元々育休を取ることは決めていたので、そんな特別な意識はなかったです。
吉川:
ごく自然にその選択をされているのが、素晴らしいと感じます。どういった経緯で取得を決められたんでしょうか?
山下:
妻もフルタイムで働いていますので、子どもが産まれたら交代で育休を取ろう、ということは前から相談して決めていました。また、妻の妊娠前から上司にも育児休職制度を利用したい旨はそれとなく伝えていて、実際に妊娠が分かってから、具体的に取得方法を相談したという感じです。幸い周囲の理解もあって、休みを取ることに障壁は感じませんでした。
吉川:
お子さんが産まれて半年間は奥様が育休を取得し、その後1ヶ月間山下さんが育休を取得されたとうかがっています。取得後の職場復帰もスムーズにできましたか?
山下:
結果としてはうまくいったんですが、保育園に年度の途中入園ができるかどうかが間際まで分からず、少し悩みました。育休の延長は認められているものの 「延長して、それでも保育園に入れなかったらどうすればいいんだろう?」と不安に感じましたね。もう少し柔軟に休職期間を延長できたり、複数回に分けての取得ができる制度であれば、もっと利用しやすくなると感じます。
吉川:
貴重なご意見ありがとうございます。男性であっても女性であっても、職場復帰は不安なものですから、余計なストレスがかからない制度設計をしていく必要がありますね。会社ではベビーシッター利用補助制度なども用意していますが、そういった制度の活用は検討されましたか?
山下:
当時はそんな制度があることを知らなくて……。知っていたら使っていたと思います。
吉川:
制度があっても知っていただかないと活用が進まないと思うので、我々ももっと発信しないといけませんね。初めての育児を行ってみた感想はどうですか?
山下:
やはり子育ては大変だ、という一言に尽きます。泣き止まない子どもを目の前にして「仕事の方がよっぽど楽だ」と思ったことも(笑)。でも子どもの成長を間近で見守ることができましたし、父親の立場で自分ごととして育児を経験し、男性の育児参加の必要性を強く感じました。
吉川:
おっしゃる通り、男性の育休取得は“みんなが育児を自分ごと化していく”、という点でD&Iの推進に大きく関わってくると考えています。男性の育休取得率を上げること自体がゴールではないと思うんです。今まで女性活躍推進というと一部の女性社員のみに関わる事柄と捉えられることが多かったけれど、男性が家事や育児に積極的に関わることで、家庭と仕事との両立が、女性だけでなくみんなの課題になっていきますよね。男性の育児参加・育休取得の推進は、そこに到達するための通過点になりえる取り組みだと考えています。
山下:
私も吉川さんの意見に賛成です。重要なのは家族みんなで子育てやキャリアを含めたライフパスを考えて、全員が納得した道を進むこと。会社にそれを応援してくれる制度があれば、安心して前に進めますよね。
吉川:
山下さんのような考えをもっている社員も増えていると思うので、そういった方々が当たり前に制度を活用できる風土を整えて、それによって会社や社会全体の生産性が上がるようにしていかないといけませんね。
TALK-02

自身の視点も大切にしながら、相手の考えを受け入れる。
この姿勢が、D&I推進につながっていく。

吉川:
山下さんの職場では、人材の多様性を活かす取り組みは行われていますか?
山下:
研究開発本部には「dual post制度」というものがあります。dual postのメンバーになることで、希望すれば他部署のディスカッションに参加できる、という取り組みです。私もこの取り組みに参加しています。
吉川:
実際にどんな部署のディスカッションに参加されましたか?
山下:
みなとみらいリサーチセンター内の、フューチャーデザインラボの会議に参加しました。また、私が勤務しているメディカル開発センターの会議にも、他部署のメンバーが多数訪れてくれています。異なる領域の知識を持った人と議論すると、部署内からは得られなかったアイディアや鋭い意見をもらえるので、いつも刺激を受けています。
吉川:
それぞれの人材が得意分野を活かして影響を与え合うことで、新たなイノベーションが起きる予感がしますね。
山下:
そうですね。進行中の研究テーマの課題解決や、新しいテーマの創出につながっていく、画期的な制度だと思います。もちろん他部署の方と話すので、理解の深度が食い違い、議論が長引くこともあります。しかしそこから学べることも多く、相手がなぜこういう考え方をしているのかを掘り下げ、思考の根本を探る姿勢が身に付いたと感じています。ダイバーシティ推進室が、他の組織と共同で行われているプロジェクトはあるのですか?
吉川:
プロジェクトというほどではありませんが、最近、研究開発部門からフェムテック(女性の健康課題にまつわるテクノロジー)関連の開発に協力して欲しい、という依頼をいただきました。D&I推進の専任組織として風土醸成や啓発施策を打ち出していくことはもちろんですが、こういった事例のように、将来的には、ものづくりの現場に多様な意見を反映するための仕掛けなどもできるといいですね。
山下:
少しずつ変化が起きていますね。こういった「組織・制度によるD&I推進」以外に、吉川さん個人として、D&Iの姿勢を広めるために心がけていらっしゃることはありますか?
吉川:
私は京セラに入社するまでに、5年ほど海外で働いていたので、入社した当時は朝礼や制服といった、日本企業らしい画一的な文化に、逆カルチャーショックを受けたものです(笑)。もちろん勤めていく内に、そういった社風の良いところも見えてきますし、馴染んできます。ただ、自分も会社に多様性を与える人材の一人として、これまでの経験を活かした“外からの視点”を忘れないようにしています。
山下:
その“外からの視点”を具体的にはどういった業務で発揮されているのですか?
吉川:
入社以来、海外広報業務が長かったので、例えば、海外メディアにプレスリリースを発表する場合は日本国内で作ったものをそのまま翻訳するだけでは伝わらないことも多く、現地の社員の意見を聞いてローカライズすることを大切にしていました。また、日本人にとっては問題のない表現でも、他国の方にとっては人権侵害につながるかもしれないリスクもあります。あとは「女性一人で海外出張に行くのは危ない」「この仕事は男性にしかできない」といった、ステレオタイプな制限も取り払っていきたいと考えて働いてきました。幸い私の考えを後押しし、尊重していただける環境に恵まれていたので、こういった“外からの視点”を持ち続けることができていると感じます。
山下:
社員一人ひとりが「当たり前」を疑って、多様な視点を持つことが、D&I実現のための大きな要素となりそうですね。吉川さんはダイバーシティ推進室長、広報室長、そして執行役員という顔をお持ちですが、リーダーとしての立場から、周囲の社員とはどのように向き合っておられますか?
吉川:
執行役員になった直後は、自分の振る舞いだったり、周囲との接し方を変えるべきかと少し悩みました。でも、肩書きが変わることで自分という人間が大きく変わるわけではありません。だから、今まで通り周囲の社員一人ひとりに真摯に向き合い、立場に関係なくお互いが意見を言いやすい環境づくりを心がけています。
山下:
リーダーである吉川さんが聴く姿勢を持ってくださると、周りの社員も自分の多様性を自由に広げて、いきいきと働いていけそうです。
吉川:
D&Iに携わるようになってからは、他部署や他拠点の社員と話す機会がますます増え、同じ会社でもこんなに考え方が違うのか、と驚かされることもしばしばあります。自分の物差しで判断せず、相手を知り、認め合うことがD&Iを広めるために大切なのだと、改めて実感させられていますね。山下さんが「相手の思考の根本を探る」という姿勢をdual post制度を通じて身に付けられたことと同様に、私もD&I推進活動での出会いと発見を通じて、日々大切な考えを学ばせてもらっています。
TALK-03

社員全員が持ち味を活かしつつ一丸となって、
D&Iが当たり前になる未来へと、進んでいく。

山下:
今後、ダイバーシティ推進室の活動が活発化していくことで、社内のD&Iに対する理解は徐々に深まっていくと思いますが、最終的なゴールは、どこにあるのでしょうか?
吉川:
極端な話、D&Iが当たり前の概念となって、ダイバーシティ推進室がなくなることがゴールだと思っています。道のりは長いですが、不可能ではないと考えているんです。例えば、私が室長を務めている広報室ですが、以前は海外広報と国内広報で、チームが分かれていたんです。でも、私はチーム全員がグローバルな視点を持って広報活動を行うべきだと考えていました。20年かかりましたが、現在は国内・海外の分け隔てなく一枚岩の広報室として動き始めています。この広報室の例のように、ダイバーシティ推進室も少しずつ今の会社の「当たり前」を変えて、発展的解散をできたらなと思っています。山下さんは、D&I推進によって、職場がどんな風に変わっていけばいいなと思われますか?
山下:
京セラは、社員の進む方向に向けて、みんなでベクトルを合わせることで成長してきた企業であると思っています。だからこそ、「多様性」という言葉を拡大解釈してしまい、社員が四方八方に向かって進んでいくようなスタイルは、少し違うのかなと感じています。D&Iをしっかりと理解したリーダーが舵を取り、適切なルールの下、みんなが息苦しさを感じずに推進に取り組めると良いなと思いますね。
吉川:
確かに、進む方向が定まった時の京セラ社員の推進力は、目を見張るものがありますからね。それぞれの社員が持ち味を活かしつつ、ベクトルを合わせられたらベストですね。
山下:
そう思います。あとは、これから入社してくる若い人たちの感覚を大事にしていきたいです。下の世代の社員と話していると、彼らにはD&Iの精神が当たり前に根付いているのを感じるんですよね。若い人たちの感覚を大事にできるリーダーが先頭に立って、ベクトルを向けるべき方向性を示すことで、自然発生的にD&Iの姿勢が広がっていくと思います。
吉川:
社内にはローテーションや公募制度、スタートアップ、留学研修など、入社後も多様な経験を積める制度が色々とあります。そういった制度を若い世代の方々に積極的に利用してもらって、視野を拡げ、鋭い意見をもらえるようになれば、とても心強いと思います。本日は、本当にありがとうございました。山下さんとお話しできて、さまざまな気づきがありました。今後もダイバーシティ推進室を、応援よろしくお願いします!
山下:
今日うかがった推進室の考え方や取り組みを現場に発信しつつ、応援していきたいと思います。ありがとうございました。