THE NEW VALUE FRONTIER
  1. Home
  2. ダイバーシティ&インクルージョン
  3. トップ×社員対談 D&Iが導く、京セラの未来 - 京セラに息づくD&Iの原点たる姿勢が、会社のたゆまぬ成長を支えていく。

トップ×社員対談
D&Iが導く、京セラの未来
京セラに息づくD&Iの原点たる姿勢が、
会社のたゆまぬ成長を支えていく。

笑顔で並ぶ谷本社長と現場社員野上さんの写真
  • 谷本 秀夫
    代表取締役社長
  • 総務人事本部
    野上 祐貴

京セラでは2019年のダイバーシティ推進室設置をきっかけに、ダイバーシティ&インクルージョン(以下D&I)の実現に向けて積極的な取り組みを進めています。今回は京セラのD&Iについて、社長と現場社員という、立場の異なる二人で対談を実施。京セラがD&I推進に取り組む意義や、京セラらしいD&Iのかたちとは何か、具体的な取り組みの方針、D&Iの実現によって目指すべきビジョンについて、率直に語り合っていただきました。

01 京セラがD&Iに取り組む意義 複雑化するニーズに応えるため、ものづくりにも多様な視点を。

野上:
本日は、D&Iをテーマに谷本社長と直接お話しできるということで、とても楽しみにしてきました。どうぞよろしくお願いいたします。近年、京セラ全体でD&Iの推進が活発化しており、その変化を現場の我々も感じています。こういった取り組みを推進する理由を教えていただけますか?
谷本:
D&Iを推進する理由は大きく2点あります。まず1点目として、それぞれの社員の働きやすさや働きがいを高めるため。2点目は、変化する社会のニーズに柔軟に対応したものづくりを行い、会社として成長し続けるためです。
野上:
D&Iは働きやすい環境づくり、という視点から語られることが多いので、会社の成長のためという観点は意外でした。具体的にはどういうことなのでしょうか?
谷本:
2000年頃まで、日本の経済はまだまだ「大量生産・大量消費」という考え方に基づいて動いていました。しかし、安価で良質なモノが当たり前にあふれる中で、人と同じモノは欲しくないと考える人が増えてきました。個人の考え方や価値観が多様化したことで、モノ自体の価値だけでなく、そこに付与されたストーリーや、自分に合ったモノという特別感が、購買につながる時代になってきているのです。
野上:
社会が必要とするモノの性質が変わってきた、ということでしょうか?
谷本:
そうですね。求められるモノが変われば、生み出す人も変化しなくてはいけません。お客様が製品にストーリーや特別感を求める現代においては、個別のニーズに応える顧客目線のアイディアが必要となります。人材が多様であればあるほど、より多くの顧客目線を持つことができますから、D&Iを推進することは、多様化したニーズに対応する製品を生み出すことにつながっている、と私は考えています。
野上:
D&Iによって社員の働きやすさや働きがいが高まるだけでなく、作り手側の多様性を活かしたものづくりが可能になることで、会社も成長することができる、ということなのですね。国籍に限らず、性別や年齢、考え方もさまざまな人材が多く集まっているのが京セラの強み。社長がおっしゃっているように、その多様な社員一人ひとりが個性を活かして働くことで、あっと驚くような新製品や新技術を、社会に提供できるのではないかと思います。

02 京セラらしいD&Iのかたち D&Iの実現は、京セラの原点に立ち返ることにもつながる。

野上:
多くの企業がD&Iの推進に取り組んでいますが、そのなかでも当社だからできる、京セラらしいD&Iとはどういったものだと思われますか?
谷本:
京セラでは、創業以来、人の心をベースとして経営するという考え方を大切にしてきました。その中で、社員同士がお互いを家族のように思いやり、全員参加で経営する風土が育まれてきたのです。それぞれの持つ価値観や個性を尊重し、柔軟に取り入れ、活かしあっていくD&Iの精神が、経営の原点として、すでに社員の中に深く根付いているということが、京セラにとってのアドバンテージであると感じています。
野上:
私自身も、京セラ社員の絆の強さは素晴らしいと思っています。なんでも相談しやすい雰囲気と、仕事を超えたつながりを社員同士が大切にしていることは、D&Iを推進していく上でのいい追い風になりますね。ただ、組織が大きくなることで「大家族主義」「全員参加経営」といった感覚が薄まってきている部分もあると思います。その点に関して、谷本社長はどのようにお考えですか?
谷本:
社員同士の絆が強いという自負はありますが、野上さんの言う通り、組織が大きくなって「大家族主義」「全員参加経営」といった意識が希薄になってきているのも事実です。先ほど京セラフィロソフィの考え方が、D&I推進のベースになるというお話をしましたが、D&Iを推進することが、逆に「大家族主義」「全員参加経営」といった京セラの原点となっている考え方に立ち返ることにもつながっていくと考えています。
野上:
京セラフィロソフィがD&Iのベースとなり、D&Iを推進することが「大家族主義」「全員参加経営」といった意識の強化につながるということでしょうか?
谷本:
その通りです。組織が大きく、画一的になると、社員同士のつながりや経営への参加意識が薄くなりがちです。業務も淡々として、働きがいもなくなっていくかもしれません。だからこそ私は、おもしろいアイディアや斬新な取り組みにチャレンジするチームや社員を応援したいと考えています。そのために、社員が自ら考えた新事業のアイディアを自由に提案できる「スタートアッププログラム」をつくりましたし、若手と私が直接会って意見交換をする交流会の機会も持つようにしています。若い人と話していると、私たちの世代との価値観の違いに驚かされますね。そして同時に若い世代だから思いつく新しいアイディア・発想のおもしろさにワクワクもさせられます。こうやって多様性を認め、育んでいくことで、家族のようなつながりをもったチームや、経営を自分ごととして捉える社員が増えていくことを期待しています。
野上:
D&I推進が、京セラの原点に立ち返ることにもつながっているんですね。最近、30年前の社内報に掲載された稲盛氏(京セラ創業者)の巻頭言を読む機会があったのですが、まだ企業としてそれほど規模も大きくなかった当時、社員一人ひとりが主役となって活躍することで、京セラを製造業界のリーディングカンパニーに成長させた様子がうかがえました。D&Iの推進を通じて体制や考え方は進化させつつも、当時のようなチャレンジングで勢いのある京セラを目指していきたいですね!

03 具体的な取り組み方針 制度改革とテクノロジーの導入で、挑戦しやすい環境づくりを行う。

谷本:
京セラに根付いたD&Iのかたちがある一方で、まだまだ強化していかないといけない部分もあると考えています。若手、そして女性としての視点から、野上さんはどのような点を改善すべきだと感じていらっしゃいますか?
野上:
昨年結婚をしたのですが、夫は関東勤務、私は関西勤務だったので、別居状態で結婚生活がスタートしました。その後夫が関西に転勤してくれたので同居できるようになったのですが、当時は勤務地について悩んだ時期もありました。今後は、より家族形態も多様になっていくと思いますが、女性の場合、出産というライフイベントもあるので、キャリアの継続について不安を感じている方も多いと思います。
谷本:
確かにそういった側面は、まだまだありますね。女性が結婚・出産後も仕事を続けることは昔に比べると当たり前になりましたが、育児や家事に関する女性の負担は大きいままです。実際に当社も女性の育児休職取得率は100%なのに対し、男性社員の取得率は数%と、依然低い状況にありますね。これからはもっと男性が育児休職を取得しやすくなるような風土づくりを行っていきたいと考えています。
野上:
子育てや介護など、社員が抱えている事情はさまざまですので、育児休職制度に限らず、働き方を柔軟に選べる制度が広がっていくといいなと思います。近年一気に導入が進んだテレワークや、フレックスタイム制度を当たり前に活用する流れができると、働く環境がガラッと変わりそうですね。現在、谷本社長のご指示のもと、我々人事部で取り組みを実施している人事制度改革や、2021年度からの大規模な組織再編も、働く上での風土づくりやルールの整備という観点で進められていますよね?
谷本:
人事制度改革で管理職の長時間労働を改善し、もっと女性や若手社員が管理職を目指しやすい土壌をつくろうと思っています。また組織再編では、16あった事業体を3つの大きなセグメントに集約します。これにより従来の縦割り組織では難しかった人材の行き来を柔軟にして、複数の部門から多様な人材が集まるプロジェクトを増加させ、今までできなかったような新たな技術やノウハウの開発に取り組みたいと考えています。
野上:
女性や若手がチャレンジしやすくなる人事制度は、私にとっても心強いです。また、多様な人材が技術やノウハウを共有することによって、相互に作用しやすいかたちに組織が変化していくことも、さらなるD&Iの浸透に向けた大きな一歩となりそうですね。
谷本:
社員の皆さんにも、ぜひ期待感をもって受け止めていただければと思っています。また、会社のDX推進もD&Iに欠かせない原動力のひとつです。スマートファクトリーのように、製造ラインの自動化が進めば、力仕事や長時間労働が削減され、性別や障がいの有無に関係なく、皆さんが活躍できる場所が増えていくはずです。

04 私たちが目指すD&Iのビジョン 多様性の相互作用によって、イノベーションを起こし続ける。

野上:
D&I推進に向けた取り組みを通じ、社員にとって、また社会にとって、京セラはどのような存在になっていくべきでしょうか?D&Iの実現によって京セラが目指すビジョンを教えてください。
谷本:
これについては私の経験に基づいてお話をしたいと思います。30代の頃、私は新しい生産ラインの立ち上げプロジェクトに関わっていました。さまざまな部門から仲間が集まり、アイディアを出し合って、四六時中同じことについて考え、ひとつの目標に向かってベクトルを合わせ突き進む。大きなやりがいと達成感を感じたこの経験は、今でも私の記憶の中に強く残っており、まさに「京セラのD&I」に通じる瞬間であったと思います。このプロジェクトで私が経験したように、多様な人材が対話と交流を通じて、新しい製品を開発したり、社会に役立つイノベーションを起こしていくこと。これが、D&Iを実現した先にあるビジョンだと考えています。
野上:
社員の多様性を尊重するだけではなく、対話・交流することで、業務のクオリティを高めたり、社会に貢献できるような製品開発やイノベーションを起こしていく、というわけですね?
谷本:
その通りです。野上さん自身も、業務を通じて多くの社員と関わられていると思うのですが、対話や交流を通じて、新しい気づきを得られたことはありますか?
野上:
以前、人事部門ではグローバル人材の育成を目指して、海外インターン生の受け入れを行っていました。その時、心掛けていたのは、彼らを受け入れるだけでなく、たくさんの交流を持つこと。勤務時間はもちろん、休みの日に一緒に過ごすなど、部署全体が積極的にインターン生と関わり彼らの意見を知ろうとしたことで、彼らの視点から多くを学び、自分たちの業務のあり方を見つめ直すことができました。常に同じメンバーで業務を行ったほうが、意思決定はスムーズです。しかしそれだと、自浄作用が失われ、組織全体が悪い方向に進んでしまう場合もあると思います。新しい風を取り入れて組織の多様性を高めることは、業務内容の向上や、会社の進路にいい影響を与えるのではないかと考えています。
谷本:
野上さんがインターン生との交流を通じて得られた経験のように、社員一人ひとりが自身の持つ多様性を相互に作用させ、新しいアイディアや知見を得ていく、という考え方が大切ですね。この考え方が社員全員に浸透することで、多様なお客様の声に応えられる、より良い製品を市場に送り出すことができますし、京セラという会社が、お客様や社会全体から信用していただける存在になっていくと思います。
野上:
ありがとうございます。谷本社長とお話をして、京セラにとってのD&Iとは、会社の成長や社員の幸福、社会貢献などを実現していくための重要な要素であることを実感しました。私も多様性を支える人材の一人であることに誇りを持ち、これからも会社と社会に貢献できるような働き方を目指していきたいです。