アンリツ株式会社(社長 濱田 宏一、以下アンリツ)と京セラ株式会社(代表取締役社長 谷本 秀夫、以下京セラ)は、アンリツのシグナルクオリティアナライザ-R MP1900A(MP1900A)と京セラのオンボード光電気集積モジュールを用いて、PCI Express®[※1] 5.0(PCIe® 5.0)での光信号伝送試験に成功しましたのでお知らせします。PCIe® 5.0の規格(32Gbpsの伝送速度)で電気信号を光信号に変換し、エンドポイント側の拡張カード(Add-in Card)を用いて伝送に成功したのは世界初*1となります。
実機によるデモンストレーション*2を、2023年3月7日(火)~9日(木)、米国サンディエゴにて開催される世界最大の光通信の展示会「Optical Fiber Communication Conference and Exhibition 2023」にて行います。
*1 : PCIe® 5.0の光信号伝送試験において(2022年9月 アンリツ調べ)
*2 : デモ展示は、協業メーカであるAIO Coreのブース(Booth No. 6309)でご覧いただけます。
試験実施の背景
5GやIoT、クラウドなどのサービス普及により、インターネットの通信量は急激に増加し、通信の高速化・大容量化が求められています。一方で、データセンターでは高速大容量化に伴い、多くの電力が消費され、省電力化も社会課題となっています。今回、アンリツと京セラが実施した試験では、小型化に成功した京セラのオンボード光電気集積モジュールをホスト(CPUの出力信号を模擬できるMP1900A)付近に搭載することで、早い段階で電気信号を光信号に変換し、ホスト側から25m離れたエンドポイント側にPCIe® 5.0の規格(32Gbpsの伝送速度)で通信することに成功しました。これにより、電気伝送に伴う信号損失を低減できるため、低消費電力な信号伝送が可能となり、今後データセンターの省電力化に貢献します。また、サーバ間の信号伝送を、消費電力や遅延時間が課題となっているイーサネットに変換せず、PCIe®で直接接続することで、さらなる低消費電力化、低遅延化が可能となり、次世代データセンターへの実装が期待されます。アンリツと京セラは、本試験の成功を足掛かりに、今後さらに進化していくデジタル化社会の課題解決に貢献してまいります。
デモンストレーションの概要
本デモンストレーションでは、サーバのシステム側を模擬したアンリツMP1900A(ホスト側)とエンドポイント側のAdd-in Card[※2]との機器間接続試験を京セラのオンボード光電気集積モジュールを介して行います。
① MP1900Aから出力されたPCIe®0電気信号は、オンボード光電気集積モジュールにより光信号に変換後に伝送されます。その後、25m離れたエンドポイント側のオンボード光電気集積モジュールによって電気信号に再変換された信号が、Add-in Cardに接続されます。
② MP1900AのLink Training機能により、オンボード光電気集積モジュールでの光伝送を行った状態で、エンドポイント側のAdd-in CardとLink疎通を行い、Loopbackモードに切り替えられます。
③ Add-in cardからのLoopbackデータをMP1900Aで受信し、送信したデータに誤りがないか確認できます。
④ オンボード光電気集積モジュールからの光信号を分岐してアンリツのサンプリングオシロスコープMP2110Aを用いてPCIe®0光波形信号が正常に送信できているかモニタリングを行います。
※デモンストレーション概要の番号と図の番号は同じ電気・光信号の流れを示しています。
アンリツのシグナルクオリティアナライザ-R MP1900Aの概要
MP1900Aは、PCIe、USB、Thunderbolt、400GbE/800GbEなど、ハイスピードコンピューティングやデータ通信インタフェースのレシーバテストをサポートする、高性能BERT[※3]です。業界最高レベルの高品質波形PPG、高感度入力ED、高精度のジッタ発生源(SJ、RJ、SSC、BUJ)、CM-I/DM-I[※4]を有し、Link Training機能やLTSSM [※5]解析に対応し、コンプライアンステスト、マージンテスト、トラブルシュートなど多岐に活用いただけます。
アンリツのBERTWave MP2110Aの概要
MP2110Aは4チャネルサンプリングオシロスコープとCRU[※6]を内蔵しており、10G-800G光トランシーバおよびデバイスのNRZ [※7]/PAM4[※8] アイパターン分析に最適なオールインワンソリューションです。サンプリングオシロスコープとCRUを1台で提供することで、手軽な操作性を実現しつつ作業スペース削減に貢献します。
京セラの「オンボード光電気集積モジュール」の概要
京セラの「オンボード光電気集積モジュール」は、小型化を実現することでプロセッサ付近に搭載することが可能な光モジュールです。これにより、プロセッサから出力する電気信号をより早い段階で光信号に変換し、電気信号で送受信する際に発生する配線損失を減らすことが可能となります。さらに京セラは本製品で、512Gbpsの伝送帯域を世界で初めて*3実現し、これによりデータセンターやスーパーコンピュータなどの省電力化・高速大容量化に貢献します。
■「オンボード光電気集積モジュール」紹介動画https://www.kyocera.co.jp/newsroom/movie/2022/001998.html
* 3 : PCIe® 5.0の対応製品において(2022年9月 京セラ調べ)
* 4 : PCI Express®、PCIe®は、PCI-SIGの登録商標です。
[用語解説]
[※1] PCI Express®(PCIe®)
PCI Expressは、コンピュータと周辺機器を接続するためのバス規格の一つ。伝送速度により、Gen1からGen5まで規格化されている。
[※2] Add-in Card
CPUなどが搭載されたホスト側と接続されるエンドポイント側の拡張カード(メモリカードや ネットワークインタフェースカードなど)。
[※3] BERT
Bit Error Rate Testerの略。デジタル信号の誤り率を測定する測定器。
[※4] CM-I, DM-I
CM-I:Common Mode Interferenceの略、DM-I:Differential Mode Interferenceの略。信号の電圧方向に加えるノイズ。
[※5] LTSSM
Link Training Status State Machineの略。PCI Express®やUSBなどのシリアルバス通信のリンクステート管理を行うための状態遷移を表したもの。
[※6] CRU
Clock Recovery Unitの略。入力データ信号からトリガ信号を生成する機能。サンプリングオシロスコープではデータ信号に同期したトリガ信号が必要になるが、CRUがあるとトリガ信号のない伝送装置でも波形観測が可能になる。
[※7] NRZ
Non Return to Zeroの略。デジタル信号を伝送する方式の一つ。
[※8] PAM4
Pulse Amplitude Modulationの略。電圧の振幅(パルスの高さ)を変化させて制御する伝送方式。PAM4では、1タイムスロットの中に4レベルで2ビットの情報を伝達できる。