■開発の背景
現在、海洋ゴミなどの海洋汚染や海水温上昇などの気象変動が社会問題となっており、海の状況を知ること、すなわち「海の見える化」が、持続可能な社会の実現に向けた大きな課題となっています。しかし、海上で継続したデータ収集を行うには、安定した電源供給が障壁となっていました。
このような背景のもと、長崎大学と京セラは、長崎大学の保有する潮流発電技術と京セラのIoT関連技術を融合し、海洋データ収集に必要な電力を、ブイに搭載した潮流発電システムで賄う「エナジーハーベスト型スマートブイ」の開発に取り組み、試作機による実海域試験に成功しました。
両者は今後も「エナジーハーベスト型スマートブイ」の研究を通じて、漁業、養殖業、海洋調査など、さまざまなシーンでの「海の見える化」に貢献してまいります。
■試作機の概要
●潮流発電システムを搭載したブイで、内蔵の京セラ製「GPSマルチユニット」および接続されたセンサー※1に電源を供給します。
「GPSマルチユニット」とは、GPS、GLONASS、みちびき※2による位置情報に対応し、各種センサーとアンテナをコンパクトなサイズのユニットに搭載した京セラのIoT端末です。
GPSマルチユニット
※1 汎用的なシリアルインターフェイス(RS-485)を装備し、用途に応じたセンサーが接続可能です。
※2 GLONASSは、ロシアの人工衛星を利用した衛星測位システム。みちびきは、準天頂軌道の衛星が主体となって構成されている日本の衛星測位システムです。
●潮流発電システムは以下の2種類を試作しました。
SLTT (Small Lens type Tidal Turbines):
ブイと発電部が分離したタイプで、タービンの周りにディフューザーを付けています。タービン保護の役割とともに潮流の増速効果もあります。
VTT (Vertical axis Tidal Turbines):
ブイに発電部が直結しているタイプで、潮流によってブイが傾くことを考慮し、AIを活用して設計しました。
■各者の役割
組織名
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役割
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長崎大学
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潮流発電用に最適化されたタービン設計 |
京セラ
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各種センサー制御、および電源制御の開発、ブイの設計、クラウドアプリケーション、モバイルアプリケーションの開発 |
■実海域試験の結果
潮汐周期における大潮から小潮までの9日間、内蔵の加速度センサー、温湿度センサー、地磁気センサーに加え外部接続した電磁流速計から水温、流速、流向、およびバッテリー電流、電圧など計21チャンネルのデータをセンシングし、クラウドに送信を行いました。
実験中の発電量、およびセンシングや通信で消費した電力量の平均値は以下の通りです。
平均発電量
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16.3 Wh
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平均消費電力
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15.2 Wh
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センシング間隔
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5 分
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データ送信間隔
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5 分
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今後は、海の見える化を促進するために、水温塩分センサー(水温、塩分、電気伝導電導度)、クロロフィル濁度センサー(クロロフィル、濁度、水温)、DOセンサー(溶存酸素、水温)や水中カメラのサポートを計画しています。また、長期間安定稼働を実現するための性能改善に加えて、商用利用を念頭に置いた機能追加や小型・軽量化に取り組んでまいります。
長崎大学と京セラでは今後、本スマートブイの更なる性能改善や機能追加を検討すると同時に、長崎県を中心とした実証フィールドを活用し、実用化を目指します。また、京セラでは収集データを蓄積するIoT基盤の構築も進めてまいります。
■「エナジーハーベスト型スマートブイ」の概要(動画)
https://youtu.be/HLVBCgltL8U
※LTEは、ETSIの商標です。