京セラ製スマホを用いた自治体DX事例
神奈川県横須賀市「ふれあいサポート券」のデジタル化実証実験に京セラ製スマホを採用。
神奈川県横須賀市様
京セラ製スマホを用いた自治体DX事例
神奈川県横須賀市様
横須賀市は、神奈川県の南東部に位置する、人口36万2,837人(2026年7月1日現在)の中核市です。東京都心から約1時間というアクセスの良さに加え、市の東側には利便性の高い都市エリア、西側には農業や漁業が盛んな自然エリアが広がり、暮らしやすい住環境が整っています。
また、明治期以降に日本を代表する軍港都市として発展した背景から、異国文化と融合した「よこすか海軍カレー」や「ヨコスカネイビーバーガー」、「ドブ板通り商店街」や「スカジャン」といった独自のグルメやカルチャーも誕生しました。エキゾチックな雰囲気が漂う観光地としても賑わいを見せています。
同市では、65歳以上の高齢者を対象とした「ふれあいサポート券」事業の業務効率化を図るため、従来の紙券からICカードを活用したデジタル券への移行を検討し始めました。そこで、2026年4月から2か月間にわたって行われた実証実験にて、各施設に設置する読み取り端末に京セラ製スマホを採用しました。
今回の実証実験の背景や京セラ製スマホを導入した感想などについて、横須賀市・教育政策課の板井健一郎様、経営企画部デジタル・ガバメント推進室の村田遼馬様、菊川諒様にお話をうかがいました。
横須賀市が展開する「ふれあいサポート券」とは、もともと市内に住む65歳以上のひとり暮らし高齢者を対象に、市内の公衆浴場での無料入浴を支援する「入浴利用券」として長く親しまれていました。
その後、時代の変化に伴い、高齢者の社会参加や孤独感の解消、健康維持をより幅広くサポートする必要性が高まったことを受け、「ふれあいサポート券」へとリニューアルされました。現在は、市内の公衆浴場に加え、健康増進センター「すこやかん」、生涯学習センター「まなびかん」、市営温水プールなどで利用が可能で、約2,700人の利用者に年間最大48枚/人の紙券を交付しています。
「横須賀市には、ふれあいサポート券のような、金券に相当する紙券を交付するサービスが複数あります。庁内で精査したところ、紙券を使用するサービスは、職員・事業者双方に膨大な事務処理を要している実態が明らかになりました。また、紙券はリアルタイムな利用状況の把握が難しく、属性情報の紐づけや集計に多大な時間がかかります。これらのサービスを1枚のICカードに集約できたら、職員や事業者の業務削減、さらにはこれまで以上に市民のニーズに合ったサービスも提供できるのではないかと考えました」(板井様)
そこで、端末設置などのコストを最小限に抑えつつ、本格導入に向けての可否判断や、精度の高いデータ収集を行える対象事業を検討した結果、「ふれあいサポート券」のデジタル化が最適であるという結論に至りました。併せて、高齢者のデジタル・ディバイド(※)も検証できると見込み、同事業におけるICカードを活用した実証実験の実施を決定しました。
紙券を交付するサービスは、膨大な事務処理を要する──。具体的にどのような作業が発生するのでしょうか。以下は、「ふれあいサポート券」を紙券で運用する際、交付から請求処理に至るまでの工程です。
まず、どの紙券が誰に交付されたかを管理するため、「ふれあいサポート券」に印字されている4桁の整理番号をパソコンに入力しなければなりません。また、紙券を交付する前には、交付先と整理番号とに間違いがないか、再度チェックする必要もありました。
紙券を受け取った利用者は、月平均4枚の紙券を使ってサービスを受けます。前述したとおり、利用者は約2,700人なので、1か月で1万枚以上の紙券が使用されます。
使用された紙券は、2か月に1回、各事業者(銭湯や施設など)がまとめ、請求書とともに横須賀市へ送付します。それを受け取った市は、大量の紙券を1枚1枚目視で確認したのち、各事業者への支払処理を行います。
また、利用状況を分析する場合は、使用済みの紙券から整理番号を特定し、利用施設と利用者を紐づけるところから始めなければなりません。
これらの作業を、市も、事業者も、すべて手作業で行っていました。
「紙券を交付するサービスに要する工数の多さに驚愕しました。しかし、紙券をデジタル化することで、これらの作業のほとんどを自動化できます。なおかつ、削減された人件費でサービスの質を上げることもできます。市職員だけでなく、事業者や市民も巻き込んだ“三方良し”のDXを実現するには、無駄な作業は減らすべきだと思いました」(板井様)
実証実験には、横須賀市が委託管理している「すこやかん」「まなびかん」などのほか、複数の公衆浴場も集まり、全11事業者が参加しました。
利用者に関しては、すでに「ふれあいサポート券」を使用している約2,700人に参加を呼びかけたところ、募集定員100人を大幅に上回る756人からの応募がありました。
「応募者が集まらないのではと懸念していましたが、想像以上の反響でした。実証実験後のアンケートでも、応募理由は『新しい取り組みに興味があったから』と回答された方が約6割(※)もいらっしゃったことから、市民の皆さんも行政サービスのデジタル化に関心があったのだと感じました」(村田様)
そして、紙券の代替となるICカードとシステムの管理はTOPPAN様が担当し、各施設に設置する読み取り端末には京セラ製高耐久スマホ「DuraForce EX」が採用されました。
「DuraForce EX」は、決済用端末に推奨される厳しい通信性能基準「FeliCa®性能検定Mクラス」を取得しているため、外付けリーダー不要でNFCカード(ICカードなど)をスムーズに読み取ることが可能です。
また、米国国防総省調達基準のMIL規格と京セラ独自の耐久試験の計31項目をクリアした堅牢設計に加え、電池交換にも対応。落下・衝撃や温度変化、湿度に強く、電池劣化後も電池交換で本体を長く使えるため、自治体・施設での長期運用に適しています。
「実証実験の2か月間、レンタルしたスマホを各事業者に運用していただくことになったのですが、当初は『高価な端末を壊してしまわないか』と心配される方が少なくありませんでした。しかし、京セラ製スマホは見た目からも伝わる高い耐久性を備えているため、現場の皆さんは安心感を持って受け入れてくださいました。操作性も優れており、私たちの個別訪問によるレクチャーもあって、大きな混乱やトラブルもなくスタートを切ることができました」(菊川様)
そのような評価の一方で、「タブレット」への可能性も感じたと言います。
京セラ製タブレットは、スマホ同様NFC読み取り機能を搭載し、さらに読み取り面がディスプレイの前面に配置されています。しかも、読み取り位置をガイド表示するため、セルフ対応でも画面のどこにカードをかざせば良いかがひと目でわかります。さらに、ICカードをタッチした際に、ふれあいサポート券の残り枚数を表示できるようにすれば、利用者自身が残りの利用回数をその場で把握できるようにもなり、サービスへの満足度や安心感にもつながります。
「なかには、開店時、受付でいかにスピーディーに対応するかに重きを置いている施設もあります。開店と同時に複数人のお客さんが一斉に押し寄せるためです。そのようなニーズを考えたとき、タブレットであればまるで駅の改札のように、スムーズな受付が可能になると思いました」(菊川様)
これまで紙券を1枚1枚手作業で処理していた「ふれあいサポート券」でしたが、ICカードを活用したデジタル券にすることで、まず解放されたのは「煩雑な請求処理」でした。
「利用者が各施設の端末にICカードをタッチすると、すぐさま利用履歴がシステムに送信されます。市の職員が蓄積されたデータを元に請求書のベースを作成して、各事業者へメールで送ります。これを事業者は確認・承認するだけで請求処理が完了します。事業者側で請求書を作成する負担がなくなり、市側も大量の紙券を確認する手間がなくなるため、2か月に1回だった支払いが、毎月でも無理なく行えるようになりました」(菊川様)
また、システムに利用履歴が蓄積されることで、利用者の行動傾向の分析も可能になります。
「そのデータを、ヘルスケアデータと連携することができれば、ふれあいサポート券を使って活動すると要介護度の進行を予防できるなど、利用状況と要介護度の相関分析も期待できます。サービスの質を高める判断材料を、リソースをかけずに得られるというのは、横須賀市にとって大きな価値になると考えています」(村田様)
さらに、分厚い紙券の束がカード1枚に集約したことで、利用者から「かさばらなくていい」という好評の声も届きました。また、これまでの「ふれあいサポート券」は金券扱いであったため、いかなる事情であれ再発行はできませんでしたが、デジタル券はシステム上で利用回数を管理しているので、カードを破損したり紛失したりしても再発行ができ、管理の不安も大幅に減ります。
「今回の実証実験における大きな収穫は、懸念されていた高齢者のデジタル・ディバイドに対し、実際には利用者のデジタル受容性が想像以上に高いとわかったことでした。アンケートでも、利用者の約8割が『スムーズに利用できた』、約7割が『ICカードのほうが使いやすい』と答えています(※)」(菊川様)
「その背景には、新たな端末やアプリを使わず、利用者はただ“カードをかざすだけ”というシンプルな仕組みが大きかったかもしれません。自治体DXは、年齢・性別・国籍・障害の有無などにかかわらず誰もが使える、ユニバーサルデザイン的な発想が重要だと、再確認しました」(板井様)
横須賀市は、2020年4月に経営企画部内にて「デジタル・ガバメント推進室」を設置し、2023年4月には日本で初めて生成AIを全庁に導入し、広報文の作成や議事録の要約に活用するなど、先進的な取り組みで自治体DXを牽引しています。
しかし、その道は険しいものでした。変わることへの不安、新しいものへの抵抗。そのような人々に対し、諦めることなく、粘り強く、向き合ってきたからこそ、今があります。
「横須賀市には、自治体DXに対して意識が高い職員が多く在籍していました。そのような職員によって、新しい提案に対して前向きになれる風土も育まれたのだと思います。彼らから学んだことは『止めない』ということ。相手と向き合うことを恐れず、議論しながら前進した人たちがいたから、今回の実証実験がスムーズに進んだと感じています。今後もその精神を忘れず、さまざまな施策を横須賀市から発信していきたいと思っています」(板井様)
横須賀市役所では行政サービスにおける「市役所」「利用者」「事業者」3者の利用手続きの「めんどくさい」を破壊するプロジェクト、略称「めんはかP」に取り組んでおられ、今回の実証実験はその一環でもあります。
TOPPANも様々な形でこれからも横須賀市の「めんはか」のお手伝いをさせていただくべくソリューションの開発・提供を続けてまいります。
また京セラ株式会社様の決済端末なしに今回の実証実験の成功はありませんでした。この場を借りてお礼申し上げます。
新しいデジタル技術を行政サービスに取り入れ、市民サービスの向上と職員の働き方改革を推進される横須賀市様「デジタル・ガバメント推進室」の取り組みに深く共感いたしました。特に、「まずは一歩進むことが大事」というポリシーが印象に残っています。
今後、自治体の行政サービスにおいて、スマートフォンやタブレットなどのモバイル端末を活用する場面は今後ますます広がっていくものと考えています。京セラは、現場の皆様がより使いやすく、安心して活用できる製品・サービスの提供を通じて、自治体における業務DXの推進に貢献してまいります。
所在地:神奈川県横須賀市小川町11番地
瀬戸内町総務企画課DX推進室様/TOPPANエッジ株式会社様(現TOPPAN株式会社様)