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誰もが平等なコミュニケーションを!わかりやすい字幕表示システム開発者の想いは?

突撃取材!!テッちゃんが行く!第2弾

誰もが平等なコミュニケーションを!

 皆さん、コロナ禍でマスク生活を強いられている中、アクリル板や飛沫防止シートの設置により相手の声が聞きづらい!聞こえない!と感じたことはありませんか?
 コロナ禍におけるこのような課題を解決すべく京セラ研究開発では「聴覚障がい者用字幕表示システム」の開発を進めています。京セラの中でもちょっと毛色の違うこのテーマ、テッちゃんがこのテーマを進めている山本さんに突撃!インタビューを敢行しました。(聞き手・大崎 哲広)

京セラ株式会社
研究開発本部
システム研究開発統括部
コミュニケーションシステム研究開発部
第3開発部 第3開発課

山本 康司

キッカケは多様な方々との何気ない会話から…

--まず率直に聞きますが、山本さんは何をきっかけにこのソリューションを開発しようと、考えたのですか?
 山本:一番最初のきっかけは社内の同じ部署の方と一緒に参加した視覚障がい者とのワークショップでした。その後僕がワークショップ運営団体のメンバーとしてジョインし、ある日聴覚障がい者の方との何気ない会話のなかで「マスクする人が増えてきた時期で、実は困っているんです」という話があって、字幕が出ればいいね!と初めにアイデアが生まれました。

--そのワークショップに参加しようと思ったのは、やはり山本さんの周りに聴覚障がい者の方がいらっしゃったからでしょうか?
 山本:そうではありません。最初見学のつもりで参加してみましたが、その後実際に当事者の方と色々な話をして、その課題を解決するモノを作っていくことに楽しさを感じて、気が付いたらそのまま継続してそのワークショップに参加することになっていました。その後実際に当事者の方と色々な話をして、冒頭の字幕の話になったのです。

--最初は聴覚でなくて視覚障がいの方との出会いなんですね。実際に会社の中でこのテーマでやっていこう!と決めるまでに色々プロセスが大変だったのではないでしょうか?
 山本:そうですね。最初はプロトタイプを作って聴覚障がい者の方に体験してもらって反響が良かったので、社会実装に向けてやった方が良いと思いました。ただなかなか会社の仕組みの中でどうテーマとして持っていくのか難しくて…。色々考えた時に自分たちの組織名が「コミュニケーションシステム研究開発」だと改めて認識し、社会課題を解決するコミュニケーションシステムの研究として承認頂きました。

--なるほど!自分たちの本来の部署の名前の意味は「通信」という意味のコミュニケーションだけど、人間同士の意思疎通もコミュニケーションだと。まあ確かに通信のコミュニケーションもあるけど、人と人とのコミュニケーションはもっと基本的な話ですよね(笑)。

より分かりやすい表現方法を目指して。

--先ほど仰ったようにまずは今回の研究をテーマに載せられましたが、喋っている言葉を字幕に出すこと自体は、まあまあ古くから様々な方法がありますね。それと比較した時に、今回どういうところに特徴を出そうと思われたのですか?
 山本:一言でいうと、分かりやすい表示にするというところでしょうか。音声認識自体は既存の物も色々あるので、そこに何か+αで分かりやすく伝えられるような工夫をしています。普通の映画の字幕だったら、映画がメインなのでその映像を邪魔しないように字幕を一番下に表示させますが、今回はコミュニケーションのところに主眼を置いたので、いかに重要なことを目立たせるかに着目しました。例えば色やフォントを変えるとかで目に留まりやすくしたり…。そのシチュエーションで使われる図解を最初から表示することにしました。例えば市役所など行政なら申請の書類とか、そのワークフローとか結構分かりづらいですよね。それを図解のような要約されたものを会話の中でバッと表示し、映し続けることで大変分かりやすく、お客さんに伝えられるのではないかというところです。

--そうすると、その実施現場というか、会話をする場所によって、ある程度の定型のフォーマットみたいなものは準備しておいて、それを出せるようにしておくという感じですか?
 山本:そうですね。普通にキーワードと図解をセットで出すことができます。その言葉に関連された図も、最初から記憶させておいて臨機応変に表示するシステムです。それは使う場所が違うとその出すものが変わってくるわけじゃないですか。例えば、役所の手続き書類だったり、いくつかのパターンを事前に用意しておくって感じです。

--例えば今の市役所での実証実験だと、どれぐらいのパターンが用意されていますか?
 山本:今は市役所の高齢・障害支援課の窓口でやっているので9個ですね。実証実験の段階なので、今はまだそんなに多くはないです。

使う側も見る側も双方向のコミュニケーション!

--今回のシステムは字幕を透明な板の向こう側に出しますよね。そうすると話している人は自分の文字が左右反転して見えますが、自分の話していることがちゃんと正しく伝わっているか不安じゃないですか?
 山本:そこで、窓口側にも同じ内容を話している側が正しく見えるように表示させ、お客さんにはそれが見えないような工夫をしています。字幕表示領域は上下2つに分かれており、上はお客さんの見える領域、下は対応者が見る領域です。赤の波長を透過しない素材を使って下の領域は赤い文字でお客さん側に見えないようにしています。伝える側には見えるけど、相手側にはそれが見えないようにしています。お客さんに不要な情報は表示しないようにしています。

--ほかにも窓口ではいろいろなケースが考えられますよね。例えば窓口の人はずっと同じ人だったら良いですが、人によって音量が変わったりします。ボクみたいに元々声の大きい人や、逆に小さい人がいたりしますが、うまく拾えますか?
 山本:指向性の高い置き型のマイクを使っているので、比較的に小さい声でも会話レベルのボリュームであれば問題なく拾えます。それよりむしろ、聴覚障がい者の声の大きい方がいて、そちらの声を拾ってしまうのがちょっと今の課題です。

--たしかに!ご年配の方や聴覚障がいの方は自分が聞こえない分、声が大きくなりがちです。やってみて初めて分かる課題ですね。

あらゆる人たちのコミュニケーションを円滑にしたい。

 山本さんには今後の展開もお聞きしました。さらに様々な方々とのコミュニケーションを図るためには他の言語なども対応していくことも考えているようです。翻訳までしてくれると言語の壁も越えられてより便利ですよね。横浜で行った実証実験では横浜の土地柄、中国の方が多く、そういう要望も強くあったようです。ただし、まだ翻訳の機能までは実装できていないとのこと。他にも高齢者が多い病院やコンビニなど、様々な業界からの問い合わせが来ているとのことです。そりゃそうですよね。コミュニケーションは人間の基本だからね。ぜひ、頑張って開発を進めてさらにさまざまな人たちとのコミュニケーションを円滑にして欲しいと切に願うテッちゃんでした。

編集部後記

 我々が感じているように市役所の側でも、コロナ禍によってマスクで口が隠れたり、シートが間にあることで相手の会話が聞き取りづらいなどの問題が起きており、対策を迫られているようです。
 市役所で実証実験を行った中では「難聴や聞こえづらい人への対応について、おおむね時間短縮につながった。」「文字にしたときにわかりやすい話し方をするよう心がけることや、資料をご覧いただきながら字幕を読んでもらうため、説明のスピードなど工夫するようになった。」などの好意的な意見をいただきました。一方で「結果として使い方を理解していただけるとスムーズなコミュニケーションにつながったが、最初戸惑う人もいるため、字幕システムについて丁寧な説明が必要。」「文字を読むことに抵抗のある人もいると思うので、字幕システムが聞こえづらい人すべてに有効なのではなく、手話なども含め、相手に合わせた柔軟なコミュニケーション方法を選択することが必要だと思う。」とのご指摘もあり、ただ導入するだけでなく、お互いに歩み寄ってコミュニケーションを円滑に進める必要があるという事も分かりました。
 聴覚障がい者の方だけでなく、耳が遠くなったご年配の方にも効果があったとの意見もあり、思っていたよりも好意的に受け入れてもらえたようです。あとは変換精度の向上や動作安定性を高め、社会実装に向かってほしいとの答えもありました。どんなに便利になっても相手を思う思いやりをもって初めてコミュニケーションは成立するのだ。納得!!

◆「字幕表示システムCotopat」発売のお知らせ

「事業化にむけて実証実験を重ねてきた「わかりやすい字幕表示システム」を、このたび「Cotopat(コトパット)」※と名付け、2023年8月17日(木)から販売を開始することと致しました。ご興味のある方は下記ボタンからお問い合わせください。

※ 「Cotopat」は京セラドキュメントソリューションズジャパン株式会社が登録商標申請中です。