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【連載:第2弾】"君は何のために生きるか?" 令和時代の若者は生きにくいのか

社会にインパクトを与え続けている各界の登壇者たちが「君は何のために生きるか?」をテーマに議論を深めていくイベント「異種格闘技戦'24」。冒頭から「この議題で話す意味がないと思う」といった斜め上からの意見が飛び交うなど、先行き不明な展開が会場を沸かせました。

第2弾は、最近の若者の生き方や、近年頻繁に耳にする多様性を重視した生き方についての話題にフォーカスしていきます。
昭和世代ばかりで構成された登壇者たちは、はたして令和のライフスタイルとどのように向き合っていくのでしょうか。

【連載:第1弾】"君は何のために生きるか?"いきなり飛び交う議論は不要説

 

パネラー:

・石黒浩 大阪大学大学院 基礎工学研究科教授 ATR石黒浩特別研究所客員所長 

・小林味愛 株式会社陽と人 代表取締役社長 

・宋美玄 医学博士 産婦人科医 

・蝶野正洋 プロレスラー アリストトリスト(有)代表取締役 (一社)NWHスポーツ救命協会理事長 

・藤田一照 禅僧 曹洞宗国際センター前所長 

・四本裕子 東京大学教授 認知神経科学者・心理学者 


レフェリー:

・三遊亭鬼丸 落語家 ラジオパーソナリティ 


目次

    「令和」時代の若者はどう生きている?

    三遊亭 鬼丸氏

    「何のために生きるか?より、どう生きるかでは?」という意見が出ているなかで、いまの若者と自分たちの違いについての話題が盛り上がりを見せました。そのきっかけとなったのが、三遊亭鬼丸氏から蝶野正洋氏へ投げられた質問です。

    鬼丸氏「プロレスラーとしてある程度の地位を確立した蝶野さんは、その立場を活用した社会貢献をしていく考えに至るまで、どんなプロセスがありましたか?」

    現役引退後は「防災」や「救命」などについての情報発信をおこなっている蝶野氏。当時のことを思い出しながらも、迷いなく答えていきます。

    蝶野氏「長州力さんなど、プロレス界を代表する先輩たちと一緒にトークショーに出たことがありました。そのときに、誰もが自分の話したいことを喋っているばかりで、全く会話が噛み合っていなかったんですよ。私を含めた昭和の人間って、本当に拾いづらい会話をしますよね。それに比べていまの若者は、丁寧な口調でわかりやすいトークができている印象があります。プロレスラーなんて滑舌も悪いから、すれ違いが起きてリング上でいつも争っていますよ。」

    三遊亭氏「……何の話?」

    蝶野 正洋氏

    これには登壇者たちもつい吹き出し、参加者のなかには手を叩いて笑っている方も。そのような中でも、蝶野氏は続けます。
    蝶野氏「つまり、最近の若者よりも圧倒的に聞く耳を持たない我々が、自分なりの『生きること』について考えていけるのではないかと思っているんです。年を重ねたいまだからこそ、周りの目を恐れずに自らと向き合えるようになったはず。社会に出たばかりのころを思い返すと、人の反応ばかり気にしていましたからね。」

    石黒 浩氏

    この話に対して、石黒浩氏が賛同の声を上げました。

    石黒氏「以前『ロボットは井戸端会議に入れるのか』をテーマに研究していたときがありました。そのなかで、人間の井戸端会議をまずは掘り下げるわけですが、ある人が喋ると『そうそうそうよね、ところでね……』と頷きながらも、自分の意見を出すときには全く違う発言をする様子が見られたんです。それでも、当の本人たちはすごく楽しそうにしているところが印象的でした。研究者だって同じです。トンチンカンなことを言う人がいるからこそ発想が広がって議論が進むことがある。それはプロレスラーも同じなのかもしれません。」

    藤田 一照氏

    それぞれ思い当たる節があるのか、納得の様子を見せる登壇者たち。数々の事業展開や、社会にあらたな気付きを与えてきたメンバーが集まる議論ならではの、高次元な同調だと感じました。

    しかし、その様子を見た藤田一照氏が、和やかな空気だけでは終わらせまいと舵取りを始めます。藤田氏「ちょっと、学術研究懇談会みたいな空気になっていない?異種格闘技なんだから、もっとバトルしないと。」

    すると、すかざず蝶野氏が笑顔で発言。

    蝶野氏「これです。藤田さんを含めた我々はやはり考え方が昭和で、すぐに競いたがるんですよ。70 代のレスラーの先輩たちなんか『乾杯する=飲み比べ』。そこから下の我々は半々くらいにその気質があって、さらに若い年代になると、もう争いをする考えなんてどこかに消えてしまっているように感じます。」

    ここから、昭和世代が令和の若者たちについての意見を出し始めました。

    鬼丸氏「ある世代から、アイドルグループが好きな理由を『仲が良いから』と答える人が増えた気がしています。昭和から平成にかけては、メンバー間でバチバチする様子をお茶の間で楽しんでいた気がする。そのような観点から見ても、時代が変わったと感じますね。」

    藤田氏「言われたことはちゃんとやるけど、それ以上はやらない若者が増えたことは実感しています。『坐禅は 1 日何分やればいいんですか?』と聞かれたことがあり……そのような考えでいる限りはダメだと答えるしかありませんでした。そもそも、我々がこのような問いが生まれてこないようにしなくてはならないとも思っていて、悩ましいところです。」

    昭和世代と令和世代で起こる生き方のギャップ。しかしその隔たりは、決してマイナスなものだけではないことについても意見が交わされました。

    小林 味愛氏

    小林味愛氏「まだ私たちの世代だと、大企業に就職するのが王道っていう空気がありましたよね。でも最近は、ゼブラ企業とか社会課題の解決を軸にしたビジネスを考える学生が増えていて、もはやお金を儲けることはその手段になっているように感じます。」

    石黒氏「マイホームや車を買うことよりも、友達を大事にするような考えを重視する傾向も見られていて、すごく良い流れができている。これは、明日の食べ物に困らなくなったなど、社会が成熟してきた結果だと思っています。」

    もちろん令和の若者も、新型コロナウイルスに青春を奪われるなど、想像もつかないほど理不尽な経験をしています。ただ、社会をリードしている登壇者たちがその世代の人たちの生き方を評価する声を聞いたとき、未来に少し希望を持てたような気持ちになりました。

    「令和」時代の多様性はつまらない?

    宋 美玄氏

    宋美玄氏「令和になってから『多様性』という言葉のもとに、なんでも意見を尊重する形になっていると感じます。何のために生きるか?とテーマを掲げても、どれでも正解だし、『考えたことない』という発言すら正解になってしまいます。それも多様性だと言われてしまうと、この議論すら終わってしまいますね。」

    若者についての話をしているなかで、宋氏が述べたこの意見。ここから、令和時代のトレンドともいえる「多様性」についての議論が深まっていきました。

    その言葉を受けた鬼丸氏が「多様性の時代になると、進化が止まってしまうのではないか?」と石黒氏に質問。すると、力強い返答が。

    石黒「いえ、実は多様性があってこその進化です。ただそれは、みんながバラバラで良いと言っているわけではありません。多様性のなかから好き嫌いを見極めて、自分自身に取り込んでいくことが重要です。」

    石黒氏による多様性についての意見は、まだまだ止む気配がありません。

    石黒氏「最近世の中で対立が起きないのは、すぐハラスメントと言われるからなんですよ。意見を出さないのが正解のような空気にしたがっているせいで、多様にもなれないことがある。そんな時代になってしまっている現状は、どうにかして変えていきたいと思っています。」

    宋氏「最近はもう、ハラスメントハラスメントが起きてしまっていますよね。」

    ハラスメントハラスメントとは、一般的には正当だと思われる行為すら、ハラスメントと過剰に主張されること。最近は、何かあればすぐに写真や動画を撮られて、SNS で拡散されてしまう事態も多く目にします。大人しく生きているほうが、随分楽だと思う人が増えても仕方がないのかもしれません。

    四本 裕子氏

    しかし私のそのような考えも、四本裕子氏が救ってくれました。

    四本氏「ハラスメントのせいで言いたいことが言えないっていう意見に関しては、また違うと思っています。だって、そのようなことを言う人のなかには、自分の行動でたくさんの人を傷つけてきた人がいるかもしれないんですよ。被害を受けないで済む人が増えるであろうという観点でいくと、いい時代になってきたとも思えます。」

    そして前代未聞・再現不可能のトークバトルは、ついにクライマックスを迎えます。第 3 弾では、ついに「どう死にたいか」という議論が巻き起こる展開に。登壇者それぞれが導き出した“君は何のために生きるか”の答えとは……?

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    議論はまだまだ続く...

    <著者紹介>
    ライターKY
    千葉県在住 エンタメビジネスライター
    エンタメの表舞台に立つ方々だけでなく、裏方として活躍するビジネスパーソンにもフォーカスした取材をおこなっております。


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