OIA Open Innovation Arena
  1. Home
  2. オープンイノベーションアリーナ
  3. Catalog
  4. 光と電気をギュッと集積、サステナビリティを加速する京セラのグリーンテクノロジー

オープンイノベーションアリーナ

光と電気をギュッと集積、サステナビリティを加速する京セラのグリーンテクノロジー

インターネットとデータセンターの社会課題を解決する「光インターコネクション*¹」

 みなさんが毎日何気なく使っているインターネット。SNSで映える写真や楽しい動画がどんどん飛び交っています。インターネットを行き交うデータ・トラフィックは急激な増加を続けており、ネットワークの高速化と共に、データを蓄えるデータセンターは次々増設され、高速な応答と大容量化が求められています。
 しかし、それに比例してデータセンターでは多くの電力が消費され、今後もますます増加することが予想されています。日頃なかなか感じにくいですが、カーボンニュートラルが叫ばれる現在、実はネットワークとデータセンターの低消費電力化は大きな社会課題になってきています。

 また、AIやIoT、5Gから6Gへ新たな通信規格の普及、そして無人店や自動運転などの次の社会システムに対応するために、これまでクラウドで行っていた処理から、ユーザー端末の近くに分散配置したサーバーで処理をするエッジ・コンピューティング*²への展開が進んでいます。エッジ・コンピューティングによって、超低遅延によるリアルタイム性の向上、セキュリティの向上、ネットワーク負荷の低減が可能になります。
 ETSI(欧州電気通信標準化機構)では、エッジ・コンピューティングの中でも、モバイルネットワークを中心にした仕様を、マルチアクセス・エッジ・コンピューティング(MEC)として標準化する動きが進んでいます。MECで使われるサーバーはデータの発生場所の近くに配置するため、より小型で低消費電力なものが求められます。

*¹…光インターコネクション …光配線と電気配線の相互接続
*²…エッジ・コンピューティング …利用者や端末と物理的に近い場所(エッジ:端)に処理装置(コンピューター)を分散配置して、ネットワークの端点でデータ処理を行う技術の総称。反対にデータセンターなどの離れた処理装置(スーパーコンピューター等)ですべての端末のデータを一括処理する技術をクラウド・コンピューティングという。

グリーン化の主役は「オンボード光電気集積モジュール」

 京セラではサーバー機器の低省電力化や小型化に向けて、機器内に光回路や光配線を搭載する光インターコネクション技術に着目し、長らく電気技術で構成されてきた半導体デバイス用のパッケージ基板や、プリント配線板に光技術を混載実装する光電気集積実装技術の開発を行ってきました。
 具体的には電気配線に代わる光配線を半導体パッケージ基板に形成する光導波路配線技術、半導体パッケージ基板に光デバイスを高精度に実装する技術、それから光導波路と光ファイバを低損失で接続する光コネクタ技術などです。

 そして、このたび512Gbps (ギガビット毎秒)という大容量の伝送速度を実現するオンボード光電気集積モジュールを開発しました。ボードと呼ばれるプリント配線板を、信号を処理するプロセッサの近くに配置することが可能です。

 なお、ボードに光モジュールを搭載する構成を、オンボード・オプティクス(On-Board Optics, OBO)やニア・パッケージ・オプティクス(Near Package Optics, NPO)と業界では呼んでいます。
 このモジュールは、高温動作が可能な光電デバイス、駆動と制御回路、電源回路を小型の基板に実装し、電気インターフェースは高速のコネクタ、光インターフェースはマルチモード光ファイバを備えます。
 具体的な仕様は以下の通りです。

セラミック技術で実現する「光インターコネクション」

 このモジュールには京セラが培ってきた次の技術を最適化して用いながら、加えて光接合技術を新たに開発しました。

 1)高速の電気信号を低損失に伝送できる配線技術
 光電デバイスや回路群を実装する基板に、京セラの低温焼成型セラミック基板(LTCC)を用いています。京セラのLTCCであるHITCE®は、低損失な伝送線路の形成に対応し、周波数の依存性が低い物性値(誘電率や誘電正接)を持ち、低インピーダンスばらつき、良好な2次実装信頼性という特長を有します。

 2)デバイスから発生する熱を効率よく伝熱させて逃がす熱設計技術
 京セラの半導体パッケージ基板や、通信機器と情報機器等で用いられている技術です。伝熱を数値化してコンピューターシミュレーションで解くことで、放熱用のヒートシンクへと効率よく伝熱させる設計をしています。

 3)光電デバイスと光ファイバアレイを低損失でつなぐ光接続技術
 光電デバイスの光I/O部とマルチモード光ファイバアレイの接合部を画像で検出し、高精度にアライメントして接合する技術を新たに開発しました。

※「HITCE」は京セラ株式会社の登録商標です。

更なる高速化、小型化と高集積へ

 京セラは、今後、この光電集積モジュールを用いた実証実験を各社と進め、早期の社会実装を目指します。そして、高密度光配線技術、光電融合配線・実装技術、高精度デバイス実装技術の開発を積極的に進めます。
 これらの技術を、国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)の「グリーンイノベーション基金事業/次世代デジタルインフラの構築」における 「次世代グリーンデータセンター技術開発」に展開し、データセンター機器をシームレスに光接続する光スマートNIC*³を連携して開発し、社会実装を目指してまいります。

*³…光スマートNICとは、通信に係る処理を分担するプロセッサを搭載したスマートNICを光化したサーバの要素デバイス

この記事の感想をお聞かせください